戦争ができる国づくりのため他国への武器援助さえ実施する「安保3文書」に反対します
12月16日、「安保3文書」(「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」)が閣議決定されました。
今後5年間で「敵基地攻撃能力」の保持をはじめ防衛力を抜本的に強化し、防衛予算をGDP比率2%に倍増させるという内容は、憲法9条のもと平和国家として歩んできた日本のあり方を根本からくつがえすものです。
「国家安全保障戦略」では、中国、北朝鮮、ロシアの動きを「戦略的な挑戦」「差し迫った脅威」「強い懸念」と位置づけ、軍備増強こそが抑止力になると説いています。
しかし、私たちNGOが紛争地での経験から学んできたのは、武力によって平和はつくれないということです。イラク戦争、アフガニスタン戦争、あるいはシリア戦争でも、特定の政治・軍事勢力を「脅威」とみなして軍事力で対抗するやり方は、暴力のエスカレートを招き、憎しみを助長し、長期にわたって社会を不安定にさせてきました。「脅威」をあおるのではなく、外交的な努力によって相互理解を進め、戦争を食い止めなくてはなりません。
今回の安保3文書は日本の国際協力のあり方をも全く変えてしまうものです。
第2次大戦後、日本は他国に軍事的な援助をすることは決してありませんでした。ODA(政府開発援助)の指針となる「開発協力大綱」では「軍事利用及び国際紛争助長の回避」(いわゆる「非軍事原則」)が謳われ、その内容は緩和されてきたものの、明らかな武器や軍事インフラの供与には歯止めがかかってきました。
しかし、今回「国家安全保障戦略」には「開発途上国の経済社会開発等を目的としたODAとは別に、同志国の安全保障上の能力・抑止力の向上を目的として、同志国に対して、装備品・物資の提供やインフラの整備等を行う、軍等が裨益者となる新たな協力の枠組みを設ける」ことが明記されました。ODAとは別の支援枠組みによって「非軍事原則」に縛られることなく、武器の援助が解禁されようとしています。すでに、2023年度政府予算案において外務省は20億円を他国軍への資機材供与に計上しています。
いま日本は、「同志国」への武器援助を通じて、中国、北朝鮮、ロシアという「権威主義国家」に対抗する軍事ブロックの形成に踏み出そうとしています。これは「抑止」になるどころか、さらなる軍拡競争を招くことは間違いありません。ひとたび武力衝突が起これば、日本に住む私たちが危険にさらされるだけでなく、日本から援助された武器によって他国の人びとが誰かを殺し、また殺されることになります。
「非軍事」での国際協力を行う日本に対して多くの国から寄せられた信頼は、日本のNGOにとって、現地での活動における支えになってきました。しかし「安保3文書」による軍事大国化と国際協力のあり方の転換は、そうした日本への信頼をも大きく損ねることになります。
「安保3文書」の実施の中止と撤回を求めて、私たちは反対の声をあげ続けます。また、同様に声をあげてくださる仲間をつのり、協働できることを願っています。
特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター(JVC)
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