【品川区への書簡】ミャンマー地震への見舞金について-人びとに届く支援にご配慮ください
2025年4月4日に品川区長が駐日ミャンマー大使館を訪問し、50蔓延の見舞金を渡されたという報道があり、品川区に事実確認を確認したうえでJVCを含む6団体連盟の下記の書簡を4月15日に提出しました。
品川区長
森澤恭子様
ミャンマー地震への見舞金について−人びとに届く支援にご配慮ください
2025年4月15日
アーユス仏教国際協力ネットワーク
アジア太平洋資料センター(PARC)
国際環境NGO FoE Japan
日本国際ボランティアセンター(JVC)
武器取引反対ネットワーク(NAJAT)
メコン・ウォッチ
私たちは、日本政府の援助や日本企業による海外でのビジネスにおいて、環境・社会・人権への適切な配慮がなされるよう政策提言活動を行っている市民団体です。4年前にミャンマーで起きた軍事クーデター以降、ミャンマー軍が続けている市民の弾圧が一刻も早く終わるよう、日本からミャンマー軍を利する資金の流れを止める活動も続けています。
本年3月28日にミャンマーのザガイン管区域を震源として発生した大地震について、品川区がいち早く被災地を支援するための募金活動を始められたことに、ミャンマーの状況の改善を願うものとして、敬意を表します。一方で、お伝えしたいことがあります。
4月4日、区長が駐日ミャンマー大使館を訪問し、50万円の見舞金を渡されたという記事を拝見しています。これは区の災害見舞金の予算から支出されていると、区役所のご担当からも説明を受けました。
そのミャンマーでは、クーデターを批判し不当に拘束されている人が22,000人以上もおり、確認されているだけでも6,400人以上の方がミャンマー軍に殺害されています。殺害された人には、拘束中の拷問で亡くなった方も含まれます。不当なクーデターにより権力を奪取しようとしたミャンマー軍は、多くの市民や少数民族抵抗勢力の反撃にあい、現在、その支配地域は、国土の2割程度とみられています。軍事的な形勢で不利になっているミャンマー軍は、各地で空爆を繰り返しています。空爆では、学校や病院が標的となり、多くの子どもたちが巻き込まれています。今回の地震で大きな被害が伝えられているザガイン管区域は、軍と抵抗勢力の戦闘地帯でした。信じられないことに、ミャンマー軍は地震の発生以降も被災地で爆撃を続けています。更に、軍がザガイン管区域での災害支援を妨害している、ということも確認されています。ミャンマー軍は過去の災害において、援助を恣意的に利用してきたことがミャンマーの市民団体から指摘されています(添付:報道・市民社会報告のリスト参照)。
大変残念ながら、現在のミャンマー大使館はこのようなミャンマー軍の統制下にあります。私たちは大使館に届けられた品川区の税を原資とする資金が、このミャンマー軍の体制によって不当に利用されることを強く懸念しております。
区に集まった寄付については、日本赤十字社を通されるとのことですが、このようなミャンマーの情勢を踏まえ、日本赤十字社が人びとに届く支援に努めるよう品川区からも働きかけていただだければ幸いです。また、国際交流や平和への取り組みを積極的に進められている品川区におかれましては、複雑化する国際情勢や、国家による人権侵害が各地で頻発している現状を踏まえ、今後の外国政府への見舞金支出や支援に関し、事前に各国の人権状況を国連や人権団体の報告書などを参照の上、ご検討いただきたく存じます。
末筆となりますが、ミャンマー支援への取り組みに重ねて敬意を表しますと共に、今後も、国際交流と国際平和への区の取り組みを推進してくださるようお願い申し上げます。
報道・市民社会報告のリスト
・クーデーター後に拘束された人数など
政治囚支援協会データ
https://aappb.org/
・空爆の状況
地震発生後に行われたミャンマー軍による空爆の回数と場所(独立系メディアDVBのデータ
に基づく)。随時更新。
https://public.tableau.com/app/profile/caroline.emmanuel/viz/airstrikeafterEQ/Dashboard1
・ミャンマー軍の災害救援妨害
ミャンマーの人権状況に関する国連特別報告者トーマス・アンドリュース氏のコメント(2025年4月1日)
https://x.com/RapporteurUn/status/1906912059599868311
軍政による攻撃の停止や、援助の妨害の解除などを求めている。
"Exclusive: Myanmar Red Cross, junta officials had notice of Chinese relief team’s
presence in Myanmar before aid convoy attack," Myanmar Now, April 3, 2025
https://myanmar-now.org/en/news/exclusive-myanmar-red-cross-junta-officials-had-notice-of-chinese-relief-teams-presence-in-myanmar-before-aid-convoy-attack/
地震後の4月1日の夜、救援物資を積んでマンダレーに向かっていた中国赤十字社の車列が
シャン州北部を通行中、ミャンマー軍に機関銃で攻撃された事件についての詳細。
「ミャンマー大地震 死者3000人以上 軍は民主派勢力とー時停戦」NHK(2025年4月3日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250403/k10014768291000.html
ミャンマーのチョーモートゥン国連大使(2021年のクーデター前に就任)が「軍による妨害やさまざまな制限のせいで市民は困難な状況に置かれ、人命救助も難しくなっている」と述べ、また軍が支援物資を自らの権力強化に利用する懸念を表明したことなどを紹介。
・過去の災害時の軍の援助利用
"Open Letter from Myanmar CSOs Regarding the Myanmar Red Cross Society’s
Attendance at the Murderous Junta’s Armed Forces Day Celebration Violating Principlesof ICRC and IFRC," April 9, 2021 (公開書簡:ICRCおよびIFRCの原則に違反するミャンマー軍記念日式典へのミャンマー赤十字社の出席に関するミャンマー市民社会からの公開書簡)
https://progressivevoicemyanmar.org/2021/04/09/open-letter-from-myanmar-csos-regarding-the-myanmar-red-cross-societys-attendance-at-the-murderous-juntas-armed-forces-day-celebration-violates-principles-of-icrc-and-ifrc-mrcs-part/
ミャンマー市民社会からの公開書簡:ミャンマー軍記念日式典へのミャンマー赤十字社の出席について ICRCおよびIFRCの原則に違反と指摘。
"Press Statement: Civil Society Calls for Disaster Relief for Earthquake Survivors andAffected Communities in Myanmar," March 30, 2025(「プレスステートメント:市民社会、ミャンマー地震被災者・被災コミュニティへの災害救援を要請」 2025年3月30日)
https://progressivevoicemyanmar.org/2025/03/30/press-statement-civil-society-calls-for-disaster-relief-for-earthquake-survivors-and-affected-communities-in-myanmar/
ミャンマー軍には災害救援を武器として使ってきた歴史がある(2008年のサイクロン・ナルギス、2023年のサイクロン・モカ、2024年の台風「ヤギ」)。今回の地震に対する災害救援を行う際には、国民統一政府(NUG)や民族抵抗組織(ERO)、市民社会団体など、ミャンマーの人びとの命や安全を明らかに重視するステークホルダーと共同で行うことが重要。
“How aid becomes a weapon in Myanmar's war zone,” BBC, April 3, 2025
https://www.bbc.com/news/articles/cp8je14g2eno
ミャンマー軍が過去の災害時に自らの支配下にない地域への援助を妨害してきたことについての記事。BBCによればミャンマー軍の完全な支配下にある領土は国全体の21%にすぎな
い。
本件に関する問合せ先:
特定非営利活動法人メコン・ウォッチ(担当:木口)
〒110-0016
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電話:03-3832-5034
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