「開発協力大綱」改定に対するNGO要請書を提出しました 〜開発協力の理念と原則:非軍事的手段で人間の安全保障の実現を目指すべき 〜
外務省は9月9日、政府開発援助(ODA)の基本的なあり方を定める「開発協力大綱」の改定を行うことを発表しました。
外務省が同時に発表した「改定の方向性」においては、人間の安全保障を中心とする「途上国の開発支援」という従来の開発協力のあり方が、「自由で開かれたインド太平洋」の理念のもと日本の安全保障や経済振興のための戦略的な援助に変質していく方向が見て取れます。
これに対して、NGO・外務省定期協議会のNGO側連携推進委員・ODA政策協議会コーディネーターが中心になってNGO側の意見を集約し、改定の重要なポイントについての要請書を取りまとめました。JVCを含め60団体のNGOが賛同し、10月19日に外務大臣宛てに提出されています。
また、改定のために外務省は「有識者懇談会」を設置しましたが、有識者懇談会の内容(議事録や資料)が十分に公開されていない、審議期間が2か月強と短すぎる、市民社会・NGOからの委員が1名に限られている、などの問題点が指摘されています。これに関しても、NGO・外務省定期協議会のNGO側委員・コーディネーター一同が意見書を提出しました。
●なお、JVC代表理事の今井がODA政策協議会コーディネーターとして、改定についてのNGOの意見集約や外務省への働きかけ、協議にかかわっています。
2022年10月19日
外務大臣 林 芳正 様
NGO・外務省定期協議会
ODA政策協議会NGO側コーディネーター一同
連携推進委員会NGO側連携推進委員一同
「開発協力大綱」改定について、外務省から「開発協力大綱改定の方向性(令和4年9月9日)」が発表され、有識者懇談会での議論が始まっています。私たちは、「戦略性の強化」が掲げられた今回の改定において従来の開発協力大綱に定められていた重要な理念や実施原則が失われることを強く危惧します。その危機感に基づき、改定に対して以下を要請します。
開発協力は、人間の安全保障を中心的な理念として途上国の貧困と格差の解消を最優先の目的とするものであり、日本の外交政策、安全保障政策および経済振興策とは明確に切り離すべきです。
開発協力の非軍事原則は、平和主義を掲げる日本がそれによって国際的な信用を得てきた財産です。それを失うことは日本の中立性を損なうことにつながり、日本のNGOの海外事業地での活動がリスクにさらされる可能性も出てきます。民生用・防災機材等の他国軍支援であっても、結果的には軍事能力の増強につながり、国際紛争の助長、あるいは相手国内での紛争助長や人権弾圧につながりかねません。また、軍関係者へのODAが拡大すれば人間の安全保障などに使われるべき本来的なODA予算が削られることになります。
開発により影響を受ける当事者、とくに社会的に周縁化された人びとの人権が開発プロセスにおいて損なわれないよう、持続可能な環境への権利を含めた人権アプローチが開発協力の中心となるべきです。これまでのODAが環境・人権の面で多くの問題を抱えていたことを踏まえ、モニタリングや評価段階で当事者の意見を反映させる仕組みとそのための資金配分が不可欠です。
添付文章「開発協力を時代に即した形で、一層効果的・効率的に実施するための3つの提言」に示された、①「 『DAC内最下位レベル』であるCSO経由の二国間援助比率を本大綱期間において10%を目安に引き上げ『世界水準』に」、②「『官』中心に実施されている技術協力事業等を抜本的に見直し、NGO主体の実施で効率化が可能なものはNGOへ」、③「全国800を超えるNGOの力を最大限引き出し、日本のODA/国際協力に関する日本及び被援助国国民の支持向上を図る」の3点を促進すべきです。
女性の権利を真に普遍的な原則として開発協力政策に位置付けるためには、すべての事業、プロジェクトサイクルのすべての段階においてジェンダー視点を取り入れることが必要です。
相手国の人権状況が切迫している等の場合は、援助の緊急停止や見直し等が適切、迅速に行えるよう、規定や運用メカニズムの策定が求められます。ただし、人道危機下での国連・NGOを通じた人道原則に則った支援はむしろ積極的に行うべきです。
他、3団体
特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター(JVC)
代表理事 今井
〒110-8605 東京都台東区台東4-22-1 東鈴ビル4F
Tel: 03-3834-2388 Fax: 03-3835-0519
info@ngo-jvc.net
世界はあなたの小さな一歩から大きく変わります。
私たちが世界をより良くする活動は、
皆さまのご寄付・ご支援に支えられています。
日本国際ボランティアセンターでは
マンスリーサポーターや物品寄付をはじめとする様々なご支援を受け付けています。
良い世界の実現のために私たちの活動を応援してください。
JVCのことをまだ知らない、あまり知らない方はまずはこちらをご覧ください。