要請書

【要請書】日本政府の対ミャンマーODAの停止を求めます

メコン・ウォッチ、アーユス仏教国際協力ネットワーク、国際環境 NGO FoE Japan
、日本国際ボランティアセンター(JVC) 、武器取引反対ネットワーク(NAJAT)
は、昨日、「要請書:日本政府の対ミャンマーODAの停止を求めます」を外務省に提出しました。この要請には、内外59団体の賛同をいただいています。

要請では、ODAの中でミャンマー国軍を利するものがあること、建設される道路等のインフラが国軍の軍事作戦に利用される懸念が強いこと、現在の情勢でのインフラ整備がミャンマーの人々の生活向上に資する可能性は大変低いことなどを指摘し、実施中の有償資金協力を停止するよう求めています。

要請は以下の英語版を正本としています。
【Letter of Request】
Statement Calling for the Japanese Government to Stop ODA to Myanmar
  (December 5, 2022)
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20221205_Eng.pdf

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【要請書】日本政府の対ミャンマーODAの停止を求めます

2022年12月5日
内閣総理大臣 岸田文雄 様
外務大臣 林芳正 様

2021年2月1日にミャンマーで国軍によるクーデターが発生してから、国軍やその指揮下にある治安部隊による殺人、性的暴力、強制失踪、拷問が数多く報告されています。ミャンマー国軍によって殺された人は、2022年11月25日時点で確認されているだけでも2,538人にのぼります<1>。この中には少なくとも191人の子どもが含まれます<2>。またミャンマー国軍の実力行使による権力奪取に対し抗議する人々のうち、恣意的に拘束された、または非合法軍政によって逮捕状が発行された人は延16,432名を超えています<3>。ミャンマー全土では144万人が国内避難民となっているとみられますが(11月1日時点)、このうちクーデター以降に新たに避難民となった人は、およそ111万人です<4>。

日本政府はミャンマーと2020年までに累計3,565.18億円の無償資金協力、1,099.49億円の技術協力を供与し、1兆3,784.72億円の有償資金協力(借款契約ベースの金額)を約束しています<5>。これら政府開発援助(ODA)に係るクーデター後の対応については、2021年5月21日に茂木元外相が記者会見において「このままの事態が続けばODAを見直さざるを得ない、あるいは、民間企業が投資したくても投資できなくなる可能性がある」、「ミャンマーの民主化のために、これまで様々な支援を行ってきた国として、また友人として、こうした点をミャンマー側に明確に伝える必要があると考えておりまして、実際に伝達してきております」と述べ、状況を見ながら適宜適切に対応するとしています。しかしその後、ミャンマーの人権危機がますます深刻化する中、外務省は国会での質疑や市民からの問合せに対し「我が国や国際社会による取組の状況を見ながら、どうした対応が効果的か、総合的に検討する」との回答を1年半以上に亘り繰り返し<6>、具体的な対応をしないまま、現在に至っています。

ミャンマーに提供されるODAには、無償資金協力や技術協力での教育や保健、農業分野等への支援やNGOを通した支援事業も含まれるものの、大きな比率を占めるのは、経済特別区開発や周辺のインフラ整備、道路建設、鉄道改修などを実施するための有償資金協力(円借款)です。ミャンマーでは国軍系の企業が多くのビジネスを行っており、それらの事業からの収益が国軍の資金源となり、残虐行為の実施を支えていることが、国連の独立調査団の調査でも明らかとなっています<7>。そのような結論を受け、市民団体はクーデター以降一貫して、ODA事業がミャンマー国軍の資金源となっていないか調査を行い、その情報を公開するよう外務省と実施機関である国際協力機構(JICA)に求めてきました。これまで、円借款事業のバゴー橋建設で、上記の国連調査団が「関係を持つべきではない」と国際社会に勧告してきた国軍系企業、ミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)の関連会社が橋の資材の提供を行うことが現地関係者の告発により明らかとなっています<8>。しかし、外務省やJICAからはいまだに、ODA事業と国軍系企業との関係に関する公式な説明は行われていません。日本政府が何ら説明もなくODAを継続していることから、これまで在日ミャンマー人の方々と日本の市民社会が何度も行っている外務省前での抗議行動で、ODAの資金の流れが国軍を利する懸念が常に示されています。

たとえODA事業が国軍とビジネス上の繋がりがなくとも、建設される道路等のインフラが国軍の軍事作戦に利用されることもあり得ます。実際に、カレン民族の市民グループからは、紛争地帯となっている東西経済回廊上にある橋の建設を中断するよう声が上がりました<9>。また、ヒューマン・ライツ・ウォッチは入手した文書の情報から、日本政府が2016年9月12日にミャンマーと締結した5億円の無償資金協力「経済社会開発計画」で供与された旅客船3隻のうち2隻が、本年9月14日にラカイン州で軍事利用されたと指摘しています<10>。国軍による市民の弾圧や少数民族地域での武力衝突が続く中では、日本の円借款で実施されるような大型インフラ整備の経済への波及効果は一部企業にしか及ばず、ミャンマーの人々全体の生活向上に資する可能性は大変低いであろう点からも、日本の公的資金を現在のミャンマーでインフラ事業に投じる意味は見出せません。

2021年4月時点で円借款で実施中の案件は34件、借款契約ベースでは7,396億円の金額であると、外務省は国会で答弁し<11>、これに変更がないことがNGOとの会合で明らかとされています。このような巨額で多数の事業をクーデター以降も継続していることを通じ、日本政府がミャンマー国軍の支配体制に暗黙の支持を与えているというミャンマーの市民の懸念を<12>、私たちも共有するものです。

クーデターから1年10ヶ月が経過しましたが、ミャンマー国軍は戦争犯罪と人道に対する罪にも相当する深刻な人権侵害を続けています。私たちは、日本のODAが国軍を利することにより、日本が国軍による人権侵害に加担する可能性について深い懸念を示し、日本政府が実施中の有償資金協力をすべて停止することを強く求めます。また、ミャンマー国民統一政府(NUG)や民族革命組織(ERO)、ミャンマー国内の市民組織の声に耳を傾け、ミャンマー国民の利益のために効果的な支援を行うべきです。

注:
<1>Assistance Association for Political Prisoners, "Daily Briefing in
Relation to the Military Coup" (November 25, 2022):
https://aappb.org/?p=23538
<2>Progressive Voice, "Military Junta: Threat to Myanmar Children's Life
and Future" (Weekly Highlights September 12-18, 2022):
https://progressivevoicemyanmar.org/2022/09/26/military-junta-threat-to-myanmar-childrens-life-and-future/
<3>注1
<4>UNHCR, “MYANMAR EMERGENCY UPDATE as of 1 November 2022”
https://reliefweb.int/report/myanmar/myanmar-emergency-update-1-november-2022
<5>外務省ODA国別データ集(2021). p.20-21.
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/100384974.pdf#page=30
<6> 第204回国会 衆議院外務委員会(2021年4月14日).
自由民主党鈴木貴子議員の質問への原圭一外務省大臣官房参事官の回答。
ミャンマーの民主化を支援する議員連盟・「人権外交」を推進する議員連盟.
「ミャンマーにおける日本のODA・OOF事業、経済活動等に関する勉強会
(2022年2月1日)」での外務省回答。
第208回国会. 参議院外交防衛委員会(2022年3月16日).
日本共産党井上哲士議員の質問への林芳正外務大臣の回答。
第208回国会 衆議院安全保障委員会(2022年4月26日)立憲民主党徳永久志議員の質問への實生泰介、外務省大臣官房参事官の回答。
2022年度NGO・外務省定期協議会.「第1回ODA政策協議会」(2022年7月20日)でのメコン・ウォッチの質問に対する、外務省国際協力局国別開発協力第1課栗本首席事務官の回答。
<7> Fact-finding Mission on Myanmar, Economic interests of the Myanmar
military (September 16, 2019)
https://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/MyanmarFFM/Pages/EconomicInterestsMyanmarMilitary.aspx
<8> Myanmar Now, "Japan must abandon project with military-owned company
to build bridge in Yangon, say engineers" (March 26, 2021):
https://www.myanmar-now.org/en/news/japan-must-abandon-project-with-military-owned-company-to-build-bridge-in-yangon-say-engineers
<9> Karen Peace Support Network, SAC Regime Unleashes War Across the
Southern Dawna Range (July 19, 2022)
https://progressivevoicemyanmar.org/2022/07/19/sac-regime-unleashes-war-across-the-southern-dawna-range/
<10> ヒューマン・ライツ・ウォッチ.
「ミャンマー:日本政府が供与した旅客船を国軍が利用 日本政府は人道支援以外のODAを停止すべき」(2022年10月10日)
https://www.hrw.org/ja/news/2022/10/10/myanmar-military-used-japan-funded-ships
<11> 第204回国会参議院外交防衛委員会(2021年4月15日).
日本共産党井上哲士議員への植野篤志、外務省国際協力局長の回答
<12> Progressive Voice, “Japan and Junta Make Dangerous Bedfellows”(
Weekly Highlights July 11-17, 2022):
https://progressivevoicemyanmar.org/2022/07/26/japan-and-junta-make-dangerous-bedfellows/

呼びかけ団体

アーユス仏教国際協力ネットワーク
国際環境 NGO FoE Japan
日本国際ボランティアセンター(JVC)
武器取引反対ネットワーク(NAJAT)
メコン・ウォッチ

賛同:59団体

本件の連絡先

メコン・ウォッチ
110-0016 東京都台東区台東1-12-11 青木ビル3F
電話: +81-3-3832-5034
E-mail: contact@mekongwatch.org

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