「戦後」のガザ:電力・下水処理に関するレポートをお届けします
こんにちは、JVCパレスチナ事業担当の並木です。
2014年のガザ戦争が8月26日に終結してから、1年以上が経ちました。ガザのニュースはメディアからめっきり減ってしまい、人々がどのような「戦後」を暮らしているのかも、日本からは見えにくくなってしまったように感じます。
イスラエルの封鎖政策の悪影響を強く受けるガザの復興には、15年以上かかるといわれています。それが具体的にはどういうことで、今この瞬間にもどれほど人々の心身を痛めつけているのか......。たくさんの事例やデータがありますが、今回の現地だよりでは、「電力・下水処理」の面からガザ全体を俯瞰してお伝えしたいと思います。
戦争中や直後には、ガザ唯一の発電所も攻撃を受けて操業を停止していました。現在もこの発電所が供給できる電力は、ガザ全体の電力量の約30%にすぎません。再建するための資材や、操業するための燃料が、封鎖の影響でガザ内に入らないためです。
残りのニーズのうち、約60%はイスラエルから、約10%はエジプトから、人々は電力を買っています。ガザは発電所を破壊した張本人であるイスラエルから過半数の電力を買い、それでも電力は足りず、人々は1日12〜16時間の停電の中で暮らしています。
電気が止まればポンプなども停止し、人々は上下水道施設も満足に使うことができません。農地に水をくみ上げることも、飲み水を浄化することもままならなくなります。なお、ガザの水源の96%は、そのままでは飲み水に適さないといわれています。JVCの現地駐在員も、ガザ滞在中はペットボトルの水や業者から水を買って事務所のタンクに貯めておかねばなりません。
(停電時の団らんの一コマ(金子撮影))
また電力不足により、地中海に流れ出ていく汚水を浄化することもできません。1日9,500万リットルの下水が、十分処理されることのないまま、海に流されています。下水はまた、人々が汲み上げて生活に利用する地下水にも浸透していきます。ガザに何度も足を運んでいる今野によれば、「ガザ市では、海辺に近付くだけで汚水の異臭がしてきます。汚水に含まれた栄養分を食べに魚が集まってくるので、下水の出口付近でパレスチナ人が釣りをしている光景を見かけます。ガザの海側はイスラエル海軍によって包囲され、漁船は5-6キロ以上行けなくて、魚が取れなくなっているためです。」
(冠水したガザ市(AEIスタッフ撮影))
2014年の戦争後、国連は「汚染のため、ガザは今後5年で居住に適さない環境になる」と発表しています。その理由の一つは、このようなインフラの不足です。ガザの封鎖が終結し、資材や燃料を自由にガザへ輸送することができる日が実現しなければ、人々は汚染の中で暮らしていかざるを得ないのです。
なお、この状況について、パレスチナ支援NGOが形成する「EWASH」グループが図解にまとめています。とても分かりやすい図でしたので、JVCパレスチナ事業でもこの図を日本語訳しました。以下の図を是非ご覧ください。
また、電力と燃料については、UNOCHA(国際連合人道問題調整事務所)もレポートを出しています。上記の図解より早い時期に出ているために数値も少し異なり、少々専門的ですが、参考までに以下に要約を掲載いたします。 原文はリンク先をご覧ください。
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