子どもの栄養失調予防と改善支援(ガザ地区)
東京23区よりも面積が小さい(40km×10km)、パレスチナ・ガザ地区では、2007年以降、イスラエルによる封鎖がさらに厳しくなり、人や物資の移動が厳しく制限されています。 また繰り返されるイスラエルからの軍事攻撃によって、経済は壊滅状態にあり、2020年6月現在、失業率は49.1%、貧困率は64%、人口のうち約7割の人々が食料不足に陥っているといわれています。
JVCはこうした状況を受け、2002年から、国際NGOや現地NGOと協働して、子どもの栄養改善事業を行っています。 初期の頃は、 幼稚園児への鉄分強化牛乳と栄養ビスケットの提供、 子どもたちの栄養不足を補うための養鶏事業などを行っていましたが、 より持続的に子どもたちの栄養改善につながるような活動の必要性が出てきました。
そこで、2011年からは、母子保健に特化した活動を行う現地NGOであるArd El Insan(AEI: アルデルインサーン 日本語訳:人間の大地)とともに、子どもの栄養状態を改善するための教育を中心とした活動を行ってきました。 2019年からは、栄養改善に加えて、子どもの発達と発育を内容に加え、保護者への知識の伝達を実施しています。
AEIの保健師やボランティアと共に、栄養失調予防の知識と活動が地域に根付き、将来を担う子どもたちを地域で守っていく「仕組み」作りの支援を行っています。
この活動は2023年10月7日以降止むことなく続くイスラエル軍からの激しい攻撃のため活動を中断し、2024年4月から緊急支援として活動内容を少し変更し、継続しています。
活動 | 母子保健に特化した活動を行う現地NGOであるArd El Insan(AEI:人間の大地)とともに、子どもの栄養状態を改善するための教育を中心とした活動を行ってきました。 2019年からは、栄養改善に加えて、子どもの発達と発育を内容に加え、保護者への知識の伝達を実施しています。またその過程で、地域の子育てアドバイザーの育成を行っています。 |
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目的 | 子どもたちの栄養失調予防と改善および発達と発育の支援をするととともに、地域で子どもたちの健やかな成長を支える仕組みを作ることを目的としています。 |
期間 |
2016年4月~2023年10月6日(イスラエルからのガザ全土に対する激しい攻撃が開始により中断) 2024年4月~現在:緊急支援として健診内容を簡易的なものに変更し実施中 |
活動地域 |
パレスチナ・ガザ地区中部に位置する3地域 |
活動実績 | 健診した5歳以下の子ども:7,300名 健診で問題が見つかった子どものフォローアップ:1,720名 専門機関で治療を受けた子ども:675名 子育てについての講習参加者:6,940名 栄養セッションの参加者:2,500名 (~2023年度) |
パレスチナとイスラエルの大規模な戦闘勃発により活動を中止せざるを得なくなった2023年10月7日までに、家庭訪問や地域社会に根差した活動を行う非営利の民間団体の施設などで健康診断を実施し、5歳以下の子ども806人が受診しました。
健診で栄養失調やそれに付随する症状があると診断された220人、治療が必要と診断された175人について、経過観察や他の医療機関への紹介を行いました。また、子どもの栄養状態や発達の改善のため、母親など保護者を対象に、調理講習や啓発セッション、おもちゃ作りを実施しました。
ガザ事業では、パートナーの現地NGOアルデルインサーン(Ard El Insan:AEI)と共に活動を行うボランティアの地域保健推進員(CHAs)を育成し、彼女たちが身に着けた子どもの栄養・発達の知識や検診技術を生かした活動を行ってきました。
2023年度は地域を広げながらつながりをもてる、地域の子育てアドバイザーとしてのCHAsのさらなる育成に着手したところでした。新たなCHAsを15人ずつ前期と後期に分けて募集し、前期の研修は座学・実地ともに終了。後半の座学研修が修了したところで中断を余儀なくされました。
現地パートナー団体のスタッフから、「お姉さん」「お母さん」と呼ばれて親しまれているアマルさん。自ら設立したCBO(※)では、ジェンダーに関する啓発などの活動をする一方、健診場所の提供やボランティアの紹介という形でJVCの活動に協力してくれています。
「私の父親は男女の隔てなく、子どもたちの教育にとても熱心でした。父の影響もあり、人との出会い、学びと実践を大切にしています」と話してくれました。
※CBO=Community Based Organization(地域社会に根差した活動を行う民間団体)
(ガザ:子どもの栄養改善で協働しているCBOの代表アマルさん)
これまで、子どもたちの健診や保護者への講習などと並行して、ボランティアへの研修も継続して来ました。ボランティアは、その地域での活動が終了した後も子育て相談に応じたり、栄養状態などに問題がありそうな子どもをAEIにつなぐといった役割を果たしてきました。ボランティアの活動は地域からも評価され、「自分もボランティアに参加したい」と順番待ちの希望者が出るほどでした。
しかし、2023年10月7日以降、ガザ地区はイスラエル軍から未曽有の攻撃を受け、ボランティアの多くも避難を繰り返しテント生活をしています。そんな中でも、避難している先で自主的に子どもの健康や栄養などについて周りのお母さんたちに知識を伝達したり、2024年4月から開始した緊急の栄養支援に進んで参加してくれています。このような事態の中でも、子どもたちのために力を貸してくれる心強い存在となっています。
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