コミュニティの生活基盤を守る! ―インフラから分かるカドグリの生活―
子どもたちへの補習学級と並行して、保護者やコミュニティの住民たちとワークショップを開催し、「コミュニティの公共物を守っていくためには?」について話し合いました。
このようなワークショップを開催する背景には、政府や国連、NGOなどの支援団体の援助により設置された施設の多くが、コミュニティによって適切に維持・管理されずに使用されなくなっている事実があります。設置から数年後に使用されずに朽ち果てているハンドポンプ式井戸、しっかりと管理されずソーラーパネルやジェネレータが盗難され機能しなくなった給水施設、ぼろぼろになった学校の机・椅子。
(故障し使用されなくなったハンドポンプ式井戸)
もちろんこれは援助している側の責任でもあり、「また壊れたらNGOが直してくれる、作ってくれる」という意識が浸透しているせいでもあります。しかし、今年の武力衝突でことごとく、こうした施設・設備が破壊・略奪されたため、限られたリソースで生活していかなければなりません。さらに、情勢が安定すれば、避難民たちは自分たちの故郷に戻り、自分たちで生活を再建していくこととなります。予算がない政府に頼れない分、自分たちで守らないといけないのです。
まず、コミュニティの公共物には何があるのかを聞いていきます。皆さんは、自分が住んでいる町の公共物をリストアップするとしたら、何を思い浮かべるでしょうか?
カドグリの5つのコミュニティにて実施しましたが、以下のようなものが挙がりました。
・木々
・山
・製粉機
・学校/幼稚園
・給水施設(ハンドポンプ式井戸、汲み上げ式井戸)
・クリニック
・モスク(コミュニティによっては教会)
日射しが強烈なスーダンでは、カドグリに限らず多くの都市で、木々の下に人々が集まります。そこでお茶を飲んだりおしゃべりをしたり、言わば皆の憩いの場となります。カドグリで住民との会合を行う際も建物の中でなく、木の下に住民が集まることが多いです。
99の山があるといわれるヌバ山地
この辺りはスーダン北部の砂漠地帯とは地形が大きく異なり、ヌバ山地と言われ1,000m級の山々が連なっています。「紛争で逃げるときに、身を隠す場所になる。2011年の紛争のときも、今年の5月の武力衝突でも自分たちを守ってくれたのは、山だ」という声が多数出ました。日本では想像もできない世界です。
製粉されたソルガムはアシーダ(緩い餅のようなもの)やケセラ(クレープ状に焼いたもの)などに調理され主食として重宝される
カドグリにて主要な作物として生産されるソルガム(もろこし)は、調理する際に製粉しなければなりませんが、コミュニティに製粉機がなかったり故障したりしている場合は、マーケットまで行かなければなりません。「お金もかかるし、そもそもマーケットに行くには時間もかかるよね。交通費もバカにならないわ。だから歩いていくときもあるけど、大変だわ。」
衝突で砲撃を受けて屋根が略奪された学校校舎
先日南コルドファン州の知事が、州内の教育事情は「悲劇的だ」と語ったように、小学校(8年制)を卒業する子どもたちは全体の12%しかおらず、何年もの間、スーダンの他州と比べて最も低い数字となっています。そのような状況からJVCは補習学級を実施していますが、母親たちも「教育は子どもを『暗闇』から『光』に導いてくれる。」「将来子どもたちが自立した人になり、家族やコミュニティを助けてくれる。そのためにも教育は必要よ。」「コミュニティで大人たちが会合するときにも校舎は使えるわね。」と、学校だけでなく、「教育」の重要性についても話し合われました。
ワークショップに参加する女性たち。この日も木の下で行われた
補習校の目的は、子どもたちが正規の学級へ進学し、教育を継続することです。そのためには母親だけでなくコミュニティの後押しが欠かせません。引き続き、彼女たちと一体となって子どもたちの教育機会を支えていきます。
補習学級での給食は母親たちがボランティアで調理をすることで、子どもたちの栄養を支え、保護者が学校へ送る動機付けにもなっている
執筆:スーダン現地駐在員 今中 航
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