2020年度インターン企画第1弾: コリア絵画交流会
こんにちは、今回の記事では、2020年度JVCインターンとKOREAこどもキャンペーンのインターンが合同企画したイベント第1弾『コリア絵画交流会』について報告いたします。
昨年を振り返ってみると、私たちの生活は新型ウイルスの影響で大きな変化を迫られました。2020年度のJVCインターンとKOREAこどもキャンペーンのインターンは、全員学生です。対面授業がオンライン授業に変わる中、自然とインターン業務も在宅中心の形態へと移行していきました。例年のインターンは、JVC活動地への渡航や大規模イベントへの出店などを通じて、「国際協力」や世界の活動地にかかわるさまざまな発信を行ってきましたが、私たちは同じようにはいきません。全員が一堂に集まることは難しいながらも、「インターンとしてJVC活動地の発信に貢献したい!」という思いから始めたのが、オンライン・少人数イベントを中心にしたインターン交流企画です。
新型ウイルスの流行は国境を封鎖し、足元の暮らしを守るためには「国際協力」の優先順位が下がる中、離れた国はもっと遠い存在になりました。今回のインターン企画では、私たちインターンがJVC活動地にかかわる若者たちと交流することで、普段なかなか知ることのない地域や人々のことを紹介し、皆さんに少しでも身近に感じて頂くことを目指しています。そこで第1弾イベントとして企画したのが、日本に暮らす在日コリアンの若者たちとJVCインターンの「絵画交流会」でした。
その前に、なぜ今回の企画が「絵画交流会」なのか?という点について少し説明いたします。
JVCのコリア事業では、朝鮮民主主義人民共和国(以降、朝鮮)に大きな被害を及ぼした1995年の大雨洪水被害への緊急支援に取り組んで以来、他のNGOとともに「KOREAこどもキャンペーン」を組み、朝鮮の子どもたちへの人道支援を行ってきました。しかし、朝鮮への人道支援は日本社会では理解を得ることが難しい現状がありました。
そこで、支援活動を通して出会った朝鮮の子どもたちの姿を日本社会に伝えようと、子どもたちの絵や写真を持ち帰って展示会を開催しました。そして、東アジアで平和の輪を広げていくためには、相互理解が大切だという思いから、朝鮮だけでなく、韓国、在日コリアンと日本の子どもたちが、まずは絵を通して出会い、お互いを知るための絵画展「南北コリアと日本のともだち展(ともだち展)」を、2001年にスタートしました。「ともだち展」は今年で20周年を迎えます。
執筆者のひとりの佐藤は、この「ともだち展」に子どものころから参加していて、日本での「ともだち展」だけでなく、韓国の子どもたちと交流するプログラムにも参加し、韓国へも何度もいきました。5年生の時には同じようにピョンヤンを訪問し、朝鮮の子どもたちとも交流することができました。その時に一緒に訪朝し、この交流プログラムに参加していたのが朝鮮学校の子どもたちだったのです。今回の交流の参加者は、このプログラムに参加したことがある人たちです。
したがって、今回実施した絵画交流会は、いわば「大学生のともだち展」でもあるのです。この交流会を通じて、今まで見て参加してきた「ともだち展」で感じた想いに加え、新たに考えさせられることもありました。
(当日の様子。さまざまな画材を持ち寄って、個性豊かな絵画制作の始まりです。)
今回の絵画交流の参加者は、先ほど述べたように、朝鮮学校出身の在日コリアンで、こどものころに「ともだち展」に参加した人たちです。
絵画制作メンバーは美大出身のチョン・ファヨンさん、朝鮮大学校に通うパク・チャンソンさん、そしてチャ・セジンさんの3人と、JVCインターンの堀江恵、松田美夜日、KOREAこどもキャンペーンインターンの佐藤たらです。同じくKOREAこどもキャンペーンインターンの玉村優奈も会場には来られませんでしたが、オンラインで一部交流にも参加しました。
チャンソンさんとセジンさんと佐藤は2011年に「ともだち展」で一緒にピョンヤンを訪問したメンバーですが、初めて会うメンバーもおり、ともだちの輪が広がりとても嬉しかったです。
今回のイベントは2020年11月22日と23日の2日間にわたり、JVC東京事務所で開催しました。
1日目は、アイスブレーキングを兼ねた絵画制作のアイディア交換を行いました。2人ずつペアを作り、扇形の紙に、思い思いのテーマを設定します。コロナが終わったらしたいこと、こうだったらいいなと思うこと、お互いの楽しかったことの共有など、いろいろなことを話しながらテーマを決めました。
2日目は、いよいよ絵画制作の開始です。1日目に話し合ったテーマに沿って、色鉛筆や絵具、クレヨン、折り紙に和紙と、さまざまな画材を使って絵を描いていきます。わき目もふらず黙々と作業......とはいかず、終始話に花を咲かせていたため、4時間の制作時間はあっという間に過ぎてしまいました。お互いのアルバイトや学業、仕事の話から、一緒にピョンヤンを訪れた日のことを思い返し、当時の話をみんなと共有したりしました。最後には、各ペアの絵を繋ぎあわせて、大きな1つの作品を作りあげました。
(セジン・松田ペア:セジン・松田ペア:JVCの国際協力カレンダーにも掲載されている、ピョンヤンの中心を流れている大同江(テドンガン)が、どの国にもつながっていく川だったらいいなという想いから、これを描きました。ちょうど桜並木の日本を通過しているところです。ちぎり絵で描きました。)
(堀江・ファヨンペア:行った場所と行きたい場所を黄色の道で結びました。下から道順に、インド、ロシア、京都、ピョンヤンとあります。たどり着いた先には2人が行きたい宇宙を描きました。宇宙という国境もないところで、みんなで楽しく過ごしたいという想いが込められています。画材は絵の具を使いました。)
(チャンソン・佐藤ペア:コロナが終わったら以前のようにみんなで旅行したいねという話から、空飛ぶクルーズ船に乗って東北アジアを旅するイメージが湧き、色々な人種の人々を民族衣装や多様な肌の色で描きました。みんなで現地の料理を美味しく食べながら、同じ場所で談笑したいね、と話し東北アジアで私たちの好きな料理の絵も描きました。画材は色鉛筆とペンを使いました。)
完成した作品は現在JVCの事務所に飾っていますが、この絵を見ながら当日のことを振り返るとき、毎回感じることがあります。イベントの最中、一緒に絵画を制作したり日常についての会話をしたりする中で、私たちインターンと彼らの日常生活は同じように見えました。アルバイトではコロナ禍でシフトが減らされ、収入が少なくて困っている、大学のサークルでの楽しかったこと、就職難で心配であることなど、共感できる話題があまりにも多かったのです。しかし、現在コロナ禍で経済的打撃を受けた学生に対しての政府からの「学生支援緊急給付金」制度では「在日朝鮮人として日本で暮らす学生」が通う、朝鮮大学校などの各種学校は対象外だということを聞きました。選ぶことができない、自身のアイデンティティを大切にするために朝鮮大学校に通っていることが、このように国の制度によって差別されているのです。そして、これだけでなく戦時中からも制度による日本政府からの差別や、日本社会からも差別を受けてきているということも聞きました。
しかし私たちは、このような差別を学ぶ機会が義務教育の中ではなかったのです。自分の国が何をされてきたのか、何をしてきたのかを学んでも、今それに関係した人たちはどのような状況にあるのかは教えてもらえないのです。こう言った意味では私たち学生も日本政府の正当化された「差別」の渦に巻き込まれているのではないでしょうか。今回の交流での感想や考えたことからも、自発的に自国のことや身の回りのことについて学ぶということが、どれほど大切なのかを改めて痛感しました。
楽しく、有意義であった絵画交流イベント。今回のイベントを経て、私たちが見えなくされているものに目を向け考えることは、今の日本社会では難しいことかもしれないと感じました。それでも少しずつ今回のような交流会などでお互いを知り、自分を見つめ直すことから、問題が見えてくることがあります。それを継続していくことで、少しずつ今の社会を変えようとすることができるのです。
(完成した絵を繋ぎ、大きな1つの作品になりました。「コロナ後にしたいこと」「いつか旅行したい場所」など、ペア同士の共通点が描かれています。作品の周りには各自の名前と一言を書きました。その一言を見るだけで、あの楽しかった絵画交流を鮮明に思い出すことができます。)
最後になりますが、コロナ禍で大変な状況のなか、今回のイベントにご参加いただきました皆さまに心から感謝申し上げます。自分たちの考えや今後の活動を見直すたいへん貴重な機会となりました。外に出るのがはばかれる現在、新たな人と出会うことは難しいかもしれません。だからこそインターンとして、視野を広げて新たな活動の方法を探し続けていきたいと思います。
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