REPORT

子どもと女性をサポートする東エルサレムのNGO

こんにちは。JVCパレスチナ事業応援サポーターの新田朝子です。今日は、JVCパレスチナ事業の柱の一つ、「女性のエンパワメント」事業@東エルサレムを行う現地のNGO(パートナー団体)を紹介します。

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パートナー団体のスタッフ、JVCスタッフとともに(左が筆者)

1. パートナー団体設立の経緯と背景

東エルサレムで事業を行うAl Thouri Silwan Women’s Center(アットゥーリ・シルワン女性センター:AWC)は、2007年にパレスチナ人女性たち7人によって設立され、年齢に関わらず女性と子どもを主な支援対象としています。

立ち上げ当初は、周囲住民(特に男性)から奇異な目で見られることも多かったといいます。その理由は保守的な社会という地域特有の背景があるからです。権利や人権を盾にすると「西洋の考え方の押しつけ」という印象を持たれるため、最初は生活物資や子ども用のおもちゃなどの物資支援から活動を始めたそうです。その支援活動によって周囲に「AWCはコミュニティに貢献してくれる良い団体」という印象づけを行うことができ、徐々に活動の幅を広げていきました。今はJVCと協働で、ソフトスキル研修*や職業訓練などを通した女性のエンパワメント活動を行っています。

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ジェンダー研修で講師の説明を聞く参加者の様子

*ソフトスキル:コミュニケーション能力やリーダーシップ、ファシリテーション能力など、評価の尺度が明確でないスキルのこと。

今では、ラマダン中の食料配布やイベント時に男性住民がボランティアとして手伝ってくれるようになったそうです。これは地域の中での大きな変化と捉えることができます。

2. 活動エリアと団体の仕組み

活動エリアは、アットゥーリ(別名:アブ=トゥール)とシルワン地区。パレスチナ側でNGO登録されている団体であり、正職員数は代表を含めて4名(全員女性)、その他パートタイマーやボランティアにより支えられています。

現在AWCには、103人の会員がいます。年会費は10シェケル=330円ほどで、会員は主にシルワン・アットゥーリ地区の住民だそうです。
またJVCの他に継続的に支援をしている4団体のドナーがいます。ラマダン中に海外(例えば、インドネシアなど)からサポートしてくれる支援団体もいるとのこと。その資金をもとに、ラマダン中に貧困家庭へパンなどの食糧配布が行われました。

他にも、国連や他の国際NGOの資金で行う活動もあるそうです。

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シルワン地区。アップダウンが大きく歩くのにも一苦労

3. 女性と子どものための活動内容

AWCは、女性に対する一切の差別がない社会を実現するため、以下の活動目標を掲げて取り組んでいます。

・女性の権利と安全性を改善
・女性の決定権リーダーシップの向上
・女性の経済力向上
・女性の社会参画推進

これらを実現するため、女性に対してさまざまな研修や職業訓練を主に実施しています。研修の参加者には初めての人、継続して参加している人がいます。最初は「家事が自分の仕事だから」と言ってなかなか外に出てこないシャイな女性がほとんどだそうですが、研修を通じて学ぶ意欲が芽生え、自分の意見をしっかり言えるようになったりなど、態度が変わっていく女性が多く、その変わる姿を間近で見れるのがこの仕事を行っている醍醐味の1つと感じるとスタッフの一人が語っていました。
研修を受けた女性たちが口コミでAWCの活動の良さを伝えてくれるので、今では研修の参加者を募集するたびに定員以上の応募があり、「次はいつあるの?」とも聞かれることもあるそうで、需要の高さが見てとれます。

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洋裁・ファッションデザイン研修で熱心に学ぶ女性たち

また、女性の権利向上以外に、子どもや青少年支援活動も実施しています。子どもたちが休みの期間にストレスリリースを目的としたワークショップを行ったり、キャンプを実施したりしているそうです。青少年は8・9歳~16・17歳くらいが対象で、女子生徒の参加が目立つそうです。

例えば、ディベートなどを通じて子どもたちがリーダーシップやコミュニケーションのあり方を学んでいますテーマの例は、暴力について、最近ではIT・SNSなどを通じたいじめ(サイバーいじめ)、などさまざま。

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ジェンダー研修でワークショップを行っている女性たちの様子

4. 日本の皆さんへのメッセージ

人が変わるには長い時間と長い関わりが必要です。また、シルワン・アットゥーリ地区では特に、人権などのソフトスキル研修と職業訓練が女性たちへのエンパワメントのために重要です。そういった活動をこれからも支えていただければ嬉しいです。

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