REPORT

パレスチナ

ジェンダーフリーな社会を目指して@東エルサレム

JVCパレスチナ事業応援サポーターに新田朝子です。今日は、JVCが現地のパートナー団体(AWC)と協力し、東エルサレムで行っている「女性のための研修」についてお伝えします。

なぜこのような研修が必要なのか、事業の背景と以前紹介した研修の内容は、こちらのレポートをご覧ください。

講師は、ソーシャルワーカーのハディンさん。大学院では、組織運営や社会改革などについて勉強していたそうです。

99bd6d85dd011f847a270c72fe15644f-1732851064.png

1. テーマは「ジェンダー」

講義の目的は、
女性としてのアイデンティティーを確立する。
・社会を変える(保守的な女性は家に居るべきといった観点から)ために必要なジェンダーの観点を学ぶ。
・子育ての際に、ジェンダーをどう捉えるべきかを考える。

この日は、30代から50代の女性7名の受講者が参加し、活発なディスカッションや意見交換をしていました。

a312c8a8a7bf0689f407059ef2ad83ff-1732851471.png

2. 研修の内容

最初に、イスラム教の断食月「ラマダン」はどうだった?楽しめた?といった身近な話題から始まりなごやかな雰囲気に。そして、ハディンさんは次のようなことを伝えていました。
●女性と男性は社会での役割が異なる。
●社会のルールはその社会によって作られる。
●社会のルールは変えることができる。一方、社会の伝統がジェンダー形成に影響する。
●私たちは伝統のルールを変えることができるが、変えるには長い時間がかかる。
●女性が声を上げなければ変わることはない。
●女性はレイプやハラスメントなど、危機にさらされることもある。

このnoteを読んでくださっている日本の皆さんは、当たり前のことのように思えるかもしれませんが、過去のnoteに綴ったように、東エルサレムの地理的・歴史的背景や閉鎖的な部族社会という観点から、女性たちは家庭内でのセクシャルハラスメントを含む暴力を公にできず、自らが持つ権利を認識したり、経済活動へ参加したりする機会もなかなかないのが現状です。

このような背景があるからこそ、今回のような研修を通じて自尊心を高めたり、伝統的な考え方を変えたりする必要があるのです。

講義のあとは、3人1組のグループで、それぞれの経験をもとにディスカッション。例えば、「これまで子どもを育てる中で、女性を男性と違うように扱ったことはあるか?」という質問に対して、受講者の中には「男の子には家事を教えなかったけど、女の子には教えた。女の子の方が育てやすかった。おばあちゃんやおじいちゃんが同じ家に住んでいる場合、こういった家のルールを変えるのは難しい」といった意見がありました。

0b5058d6766916f94cdd43a28cf82cf3-1732851489.png

それに対してのハディンさんの見解は、男女の差やそれに対する固定概念を少しずつでも減らしていく「ジェンダーフリーな社会を形成する」ために、女性だから・男性だからと仕事を分けることをやめるべきだといった内容でした。子どもたちが18歳になるまではたくさんのことを吸収できる時期だからこそ、男女問わず子どもたちにさまざまなことを伝えることが必要。家の中だけではなく、学校や友達、TVやソーシャルメディアなども大きな影響力がある、ということです。

このように、それぞれの経験などに基づいてディスカッションを繰り返しながら、受講者の皆さんは、今何をするべきか、男女の固定概念をなくす社会を作っていくにはどうするべきか考えていました。

3. 参加者の感想

初めて研修に参加したイスラムさんは、とても有意義な時間だったと話していました。

●イスラムさんのバックグラウンド:16歳で結婚して、4人の娘がいる。そのため高校や大学に行けていなかったが、2年前に高校を卒業した。今は子どもが大学に通っているが、卒業したら自分も大学に進学したい。これまで働いた経験はないけど、自分の価値を高めるために「教育」の分野を学び、今後の仕事に活かしたいと意気込んでいました。

7b91f726f76ae8c21c26b88613f9629b-1732851368.png

●今日の研修で興味深かった内容:今、まさに社会の役割や認識が変わりつつある「変化」の時だというところ。
●参加した目的と理由:自分の価値を高めるために参加した。また、他の人の意見を聞きたかったから。

他の参加者の中には、子どもたちの育て方を変える前に、私たち(母世代の女性)自身が変わらなければいけないと感じた。この研修で新しいアイディアを得ることができた。と話していました。

研修に参加する女性たちの活躍を願い、私たちJVCは現地のNGOとともにこれからも東エルサレムで女性のエンパワメント事業を行います。

これからも活動の様子を報告させていただけたらと思っていますので、今後も活動レポートをチェックしてくださいね。

一覧に戻る

関連記事

ルファイダ小学校で犠牲になったガイダーアさんの人生...

ルファイダ小学校で亡くなったAEIスタッフ~無残に...

【ガザ】ただ自宅で尊厳のある生活をしたいです~現金...

2024冬募金