REPORT

パレスチナ

アラブの強面オヤジたちが真剣な眼差し!男性向け「女性の権利」講義@東エルサレム

こんにちは!名古屋市長に金メダルをかまれた、女子ソフトボール日本代表の後藤希友選手がかわいそうだなあと思っている、JVCパレスチナ事業現地インターン生の齊木です。

東京オリンピックは無事(?)終わったものの、女性選手への差別発言や緊急事態宣言の継続・延長など問題もたくさん発生してしまった大会になりましたね・・・

特にジェンダーの問題というのはデリケートな話で、今もさまざまな場面で議論の的になっています。今回紹介するのはそのようなジェンダーに関するお話。AWCで行われた「男性向けジェンダー研修」について解説していきます。

b122503d292b27be54678beec87b2087-1734057406.png

この講義はあのアルアクサ・モスク(上写真の金色屋根の建物)のイマーム(イスラム教指導者)でもある、ムスタファ・アブ・スワイ博士をお招きして行った、男性向けセッションで、JVCからも木村さん、山村さんアヤットさんが一部聴講しました。以下は講義の一部をまとめたものです。

●イスラム教、ユダヤ教どの宗教にも通じる教えがある。男性にも女性にもプライバシーがある。ジェンダーについての考え方については、その土地の文化や慣習などに起因しており、宗教由来でないものもたくさんある。

●男性は家庭の責任を取る。リアル・マン(本当の男)であり、管理者(指導者や監督者、扶養者、保護者)のようなもの(アラビア語で「カウワーム」と呼ぶ)。ただ、命令したり判断したりするのではなく、守ることが重要。男性は本能的に庇護的である。そして妻から意見をもらうことも大事である。ムハンマドは妻のサラマーのアドバイスを受け、問題を収めた過去がある。女性の意見を拒否することは、社会における意見の半分を無視することになる。

●女性は社会の半分以上を占める。今は女性の負担が大きすぎる。8時間外で働いて、8時間は家のことをやるなど。病気の子どもに対しても、眠れず付き添っているのは母親である。負担は非常に多い。何か起きたとき、プレッシャーは常に母の方が多い。

●父親も家庭において役割を果たすべきである。掃除機をかけたりバルコニーを掃除したり。ごみを外に出したり、シャワー浴びてから外出したり。男性も仕事があっても家庭での役割があり、家での務めがある。男性は朝ごはんを作っただけで満足しがちだが、イスラームにおいては、家庭での仕事には性別による役割はない。ムハンマドも自分で服を洗っていたし、裁縫もしていた。そして彼はそういったことをしながら歴史を変えた。イスラームはムハンマドの規範となる行動によって広まったと言える。公的な場での行動だけではなく、プライベートの場においても素晴らしい男性であった。

●家事は時間がかかる、物理的な仕事である。妻の仕事を低く見積もってはいけない。ムハンマドはいつも父よりも母を大事にするように言っていた。母は妊娠し、出産するからである。この出産の痛みは「労働」である。

●特に若い男の子たちには、女性が向き合う出産時の苦しみなどについて知って欲しい。学校の先生は恥ずかしがってこういうことを教えないが、大切なことである。

●子ども、特に男の子には父親が必要。母親は優しさ、慈悲深さが必要。掃除においても女性に完璧を求めてはいけない。毎日チャレンジがあり、子育てには休みがなくて大変である。

●「育児」と「子どもを世話する」ことは異なる。育児においては、礼儀正しさをいつも教えないといけない。世話はもっと物質的なこと。世話=食べ物や住む場所を提供すること, 育児=価値観やモラルの形成や教育である。

父はロールモデルである。母が息子のために全てやってあげたら、息子は妻に全てやるように期待してしまう。「結婚」という契約では家事については何も言われていない。でも、トイレやお風呂はだれがいつも掃除している?
私たちにとっては父も母も両方必要。子どもと質の良い時間を過ごすことは重要。量だけではなく、質が重要。男性はトイレを掃除しない。子どもがうまく育たないと母のせいになる。でも事実、子どもは父を見て育つ。

a79284063209a82b4cef291217121817-1734057586.png

聴講したスタッフの感想

いつもは強面のガタイの良いおじさんたちが18人集まり、尊敬するイマーム(イスラム教の宗教指導者)の講義を真剣なまなざしで聴いている姿が印象的でした。誰一人として途中で集中力を欠くことなく、イマームの言葉に耳を傾けていました。このイマームは威厳がありながらも柔らかい雰囲気を持っている方で、海外に住んでいたこともあり、視野が広く柔軟な方でした。こちらも話にどんどん引き込まれてしまいました。ムハンマドの話を中心に、男性は本来家庭でどうあるべきかを自身の体験も交えながら話されていて、非常に興味深かったです。(山村)

参加者へのインタビュー

研修に参加したワリードさん(50歳)にお話をお伺いしました。人に会うのが大好きというワリードさん。2年前にもイマームの講義を受けたことがあるそうですが、新たに学んだことも多くさっそく家族にも伝えたいとおっしゃってました。

どんなことを学んだか聞いてみると、次々にいろいろなお話をしてくれました。

*男性と女性は平等である。                         
*家事に対して責任を持たないといけない。
 少なくともきれいにしておかないといけない。女性の義務ではない。                  
*カウワームの定義について、男はハウスキーパーであり、王様ではない。
 メイド(お手伝いさん)のようなもの。              
*パレスチナ人の新しい世代は変わらないといけない。

日本でも似たようなことが議論されていますね!「亭主関白」という概念が過去のものとなっていき、「イクメン」という言葉が生まれるなど、日本でも男性も協力して家事をするということが浸透してきています。今回ご紹介した講義内容は、日本人にもあてはまることがたくさんあると思います。

f91468f253d94a5500ef46ab2f0a7f7b-1734058142.png

(東エルサレム・アットゥーリ地区から見える景色。アルアクサ・モスクを臨む)

一覧に戻る

関連記事

【ガザ】緊急支援 これまでの活動

【ガザ】ガザ停戦の開始と支援状況

【ガザ】子どもと妊産婦の栄養支援を続けています

パレスチナ・ガザ 緊急支援に寄付する