補習校を修了した生徒の今を追う
JVCは2020年から教育を受ける機会を失った子どもたちを対象に補習校を実施していますが、単に授業を受け学力をつけるだけでなく、朝の正規学級に編入・復学し、教育を受け続けることを目的としています。
2020年にJVCが支援する補習校に当初参加していたのは約500人。その後、新型コロナウイルスによる半年間の休校や、武力衝突から派生した集落への攻撃により避難・流出が相次いだこともあり、修了試験を受験したのが387人。カドグリ外に引っ越したり、反政府地域に帰還したりした生徒を除き355人が正規学級に就学しました。今、生徒たちは、引き続き勉強を続けているのでしょうか。
JVCのチラシや毎日新聞の特集記事でも紹介したマルガニくん。アラビア語で自分の名前も書けなかった彼は、補習校での修了試験では全体の1位の点数を取得し、正規学級の4年生に編入しました。
(マルガニくんの歩み)
定期的に実施している正規学級のモニタリングでは毎回出席しており、教員からも頭がよく勤勉だ、という評価。なんと学年末試験では54人中1位という素晴らしい成績を修めました。
(正規学級の学年末試験、理科の回答用紙を見せるマルガニくん)
さらに、2020年12月にはマルガニくんの弟ファーティフくん、妹のアッシャちゃんが反政府支配地域からカドグリにやってきました。ファーティフくんは今まで一度も、アッシャちゃんは2年生までしか勉強したことがなく、現在JVCが支援している補習校に参加しています。マルガニくんは家で自習しながら、弟妹に勉強を教えていると言います。
この9月からマルガニくんは5年生に進学、ファーティフくんとアッシャちゃんは2年生に編入します。兄から弟妹に勉強のバトンが繋がっていっています。
(学校のすぐ側にあるマルガニくんの家にて。左が妹アッシャちゃん、真ん中が弟ファーティフくん)
(授業を受けるアッシャちゃん)
(図工の時間にファーティフくんが泥で作ったラクダ)
スーダンでは公立小学校でも制服を着用するのが一般的です。したがって制服が用意できないことが、学校へ通う障壁になる場合があります。インフレの進むスーダンでは、制服を購入するのも家計にはとても大きな負担となります。そこでJVCでは「ないからあげる」のではなく、郡教育局や校長と交渉し、「制服を着なくても正規学級に受け入れられる」ことで、窓口が広がるようにしました。
しかし、正規学級のモニタリングで、2020年に補習校を修了したライヤーンちゃんとバヤーンちゃん姉妹が欠席していることが分かりました。自宅を訪問したところ、「私たちだけ制服がないから学校に行きたくないの」と理由を話します。特に女の子は周りとの違いを気にして恥ずかしいと思う子どもが多いようです。JVCのスタッフがお父さんと話し合ったところ、お父さんは「制服を買って学校に行かせる」と子どもたちに約束し、後日のモニタリングで、正規学級にて勉強している姉妹を確認することができました。
(公立小学校は緑色の制服が一般的 撮影:堀潤(Garden Journalism))
正規学級に進学した355人のうち、3月は97%にあたる344人、4月の学年末試験直前は83%にあたる293人が継続して学校に通っていることが確認できました。(減少した理由はシャイール地区付近にて発生した武力衝突のため。こちらの記事参照)
嬉しいことに、多くの子どもたちが学校で勉強を続けています。就学のための壁を完全に取り払うにはまだ時間がかかるかもしれませんが、子どもたちは学校に行く習慣がつき、保護者たちの間には教育への関心が高まり、教育機会の拡大に向けて成果が着実に出ています。次の報告では、どのように保護者の意識が変わっていったかをお知らせします。
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