「私も勉強したかった」という母親が今、果たす役割
補習校を修了した子どもたちの90%近くが現在も正規学級で継続して勉強していることは以前の報告でもお伝えしましたが、JVCがどのような取り組みをしたのか、また取り組みによって生まれた変化を、一人の母親の事例を紹介します。
(動画でもご紹介しています!)
補習校支援では、授業を実施するだけでなく、コミュニティでの啓発、保護者・行政・教師の連携を強化するサポートをして、子どもたちが就学する上での障壁を最大限に取り除く取組みをしています。
(ティロ地区ではコミュニティ集落の中心にある大きな木の下で連携強化する会合がもたれた。)
(タファリ地区では、ここ1,2年で避難民が大幅に増加したが、複数の出身グループを交えた話し合いが自主的に行われるようになった。)
教育の重要性について分かりやすく啓発するほか、現在抱える課題を出し合い、各々の立場がどのような役割を果たすべきなのか確認しました。参加者から提案された役割の一部は以下のようなものがあります。
また、カドグリ郡教育局のハンマードさんの言葉「この地区は10代後半になると軍に入隊する若者が多いが、軍に入るにしろ、農業するにしろ、市場で物売るにしろ、牛の世話をするにしろ、教育を受けると"より良い方法"が見つけられ、それぞれの道で活かすことができるはずだ」には、出席した保護者が大きく頷く場面もありました。
このような活動により感化されたガルドゥード地区の母親、ウンム・カラームさん。
2020年には娘を補習校に参加させ、給食の調理、掃除、欠席の子のフォロー、他の母親への呼びかけなどをボランティアで献身的に補習校を支えてくれました。
(補習校の生徒のために調理をする傍ら、市場で売るほうきを作るウンム・カラームさん)
「私は小さいときから牛の世話をしていたから、学校に行ったことがなく読み書きができません。とても悔しい!!毎日来て活動を手伝うのは、確かに忙しいですが、スーダンの女は皆忙しいから平気です。神様のためにやっているからいいです。」と笑いながら語ります。
6か月に渡る補習校後に開かれた修了式では、歓喜の涙を流しながら、喜びを爆発させました。「娘は当初何も分からなかったのですが、今では読むのも書くのも何だってできます。私は本当に嬉しいです。でも学校に行っていない子どもたちはこの地区にまだまだ沢山います。その子どもたちのためにも補習校を続けてほしいです。」と懇願する顔はとても真剣でした。
(修了式の運営はコミュニティに任し、生徒による寸劇・ダンス、成績優秀者に対する表彰など行われ、教育の啓発にも役立った)
年が明けた2021年には、息子のフード君(10歳)を補習校に連れてきました。「息子は牛飼いをして学校に行かせたことはなかったけど、治安も悪くなり撃たれるのが怖いから、補習校で勉強させることにしたの」と意気込みます。
(黒板の前に立つフードくん。「好きな教科はイスラーム。クルアーンは神の言葉だから」と話す)
フード君にとっては初めての勉強でしたが、修了試験では46人中4番目の成績で、正規学級の小学校3年生に編入することができました。
モニタリングで正規学級を訪問すると、フード君が恥ずかしそうに話します。
今、勉強は何の問題もないです。将来は大学まで勉強して、卒業したいです。
そして先生になって、数学やアラビア語を教えたいです。
お母さんに感謝しています。なぜなら補習校に見守りにきてくれ助けてくれたから。またJVCにも感謝しています。勉強する機会をくれたから。
このように、教育を継続するにあたり、補習校を開き授業を実施するだけでは十分でなく、コミュニティ・学校・行政の連携強化や保護者への啓発は非常に重要です。2年間で700人近い子どもたちが学校への編入を果たし、フード君やマルガニ君のような個々のストーリーもその数だけあるのです。紛争の影響を受ける子どもたちとその未来のために、引き続き日本からも応援していただけると大変嬉しいです。
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