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ラオス

ラオス:住民が実現する 自然資源の管理と利用(JVC会報誌 No.353より)

本記事は、2023年4月20日に発行されたJVC会報誌「Trial & Error」No.353に掲載された記事です。会報誌はPDFでも公開されています。こちらより、ぜひご覧ください。

住民が実現する 自然資源の管理と利用

JVCのラオス事業は、活動地の拠点をサワンナケート県から、昨年、南東部のセコン県に移しました。その豊かな自然資源が大規模開発や住民自身の換金作物栽培などで消失の危機に直面する背景から、自然資源を住民自身で管理・利用を目的に活動をしています。2月に東京担当の後藤がセコンへ出張して参りましたので、その活動や現地事務所周辺の町の様子についてご紹介したいと思います。(編集部)

お金の要らないスーパーマーケット

ラオスでは現在も人口の6割以上が農村部で暮らしています。ラオスの森は「お金のいらないスーパーマーケット」と呼ばれており、人々は生活に必要な林産物や魚などを身の回りの川や森から採取し、豊かな自然に依拠した自給的な 暮らしを営んでいます。また、収穫物を売って現金収入を得るなどしていて、自然の恵みは住民の生活の基盤となっています。セコンはラオス国内で2番目に小さい県で、最も貧しい地域の一つでもあります。

豊かな自然が残る一方で、企業による大規模プランテーションなどの開発事業や、農民によるキャッサバなどの換金作物栽培による連作障害などの問題を抱えており、なかには村域の約半分がゴムプランテーションになってしまっている村もありました。行き過ぎた経済開発は自然の恵みに頼った暮らしをしている村人へ深刻な負の影響を及ぼしていますが、セコンは相対的に国内の注目度が低く、支援プロジェクトが少ない県でもあることから活動地に選びました。

村のすぐ近くにもベトナム企業による
プランテーション開発が行われている

森の仕事を担う女性こそが活動に参加する

セコンでのプロジェクトは「共有資源の管理・利用」に活動を絞り、「住民主体」に重きをおき活動しています。現地事務所では2022年8月、新たに現地スタッフのピリラックを迎え、現地代表の山室良平、プロジェクトオフィサーのフンパン、キノの計4名で活動しています。JVCはラマーム郡とタテン郡の10村で活動を進めており、頻繁に足を運び話し合いなどを行っています。村の共有資源を持続的に管理・利用する仕組みの導入では、村人と話し合い、その村に最も適した仕組みを選択しています。2022年度は2村でコミュニティー林と魚保護地区を設置し、近隣の村人や行の政官を交えた式典を実施しました。

ラオスの農村部では、文化、習慣的にこういった話し合いや集まりでは女性があまり見られませんが、森でキノコなどの林産物を収穫する仕事は主に女性が担っているため、JVCは、村人の多くが参加し、主体となって活動することに意義があると伝え、今では女性の参加人数が増え、設置したコミュニティー林のパトロールのメンバーにも女性が入っています。

セコン県ラマーム郡トクサミン村。
法律カレンダーについて説明している様。
右端に写っているのは活動村のうちで唯一の女性村長。

法律カレンダーの活用

23年2月。JVCは、共有資源に関する村人の権利などが記されている法律力レンダー(注1)の配布を実施しました。その説明と配布時に、カレンダーに載っている権利や法律について感想や質問が飛び交うなど村人の強い関心を感じました。なかには「大切な情報が載っている貴重なものだ。破れてしまうのが怖いから、カレンダーだが飾るのがもったいない」などといった声も聞かれました。

JVCは日々の話し合いを中心としたコミュニケーションを通し、村人の主体性を引き出しながら活動を進めていますが、このカレンダーも、開発問題への対処法を村人が身につけるための実践的な研修の道具として活用しています。

街でも見られる「自然に依拠する」 生活

ここからは、出張中に垣間見たラオスの魅力についてご紹介します。ラオスではお酒が好きな人が多く、人が集まる場にはお酒が欠かせません。ある村を訪問した際も、村長自らお米で作った自家製のお酒をふるまい、ランチタイムにはラオスのビール、ビアラオを準備して歓迎してくれました。

事務所周辺では、18時を過ぎるとほとんどの店が閉店しますが、夜遅くまでやってるお店もあります。 ある店ではバンドの生演奏を聴きながらお酒を飲み、 ステージに飛び入り参加して歌を披露する人もいて、夜遅くまでお酒と雰囲気を楽しむ多くの人で賑わっていました。

また、カラオケが好きな人も多く、夜に外を歩いているといろいろなお店から歌声が聞こえてきたのが印象的でした。タイの曲が多いらしく、どことなく日本の昭和の歌謡曲のような雰囲気です。日本でも「飲みニケーション」という言葉をよく耳にしますが、ラオスではこの飲みニケーションが、楽しい時間を一緒に過ごし親睦を深めるツールとしてだけではなく、大切な文化の一つなのだとあらためて認識しました。

また、事務所から数分歩くとタラート(市場)があります。 文字通り「新鮮」な魚や野菜、生肉、カエルやトカゲ(どうやって料理するのだろう)なども並び、夕方の時間は多くの人で賑わっており、「自然に依拠した暮らし」の様子を実際に見ることができました。

上でも述べたように、セコンでは行き過ぎた開発事業による負の影響や、住民自身による換金作物栽培に伴う負債によって共有の森や土地を失うなどの問題を抱えています。JVCの活動や今回の記事を通して、セコンの抱える問題や村の様子を感じていただけたら幸いです。

執筆者:

JVCラオス・スーダン事業担当 後藤 美紀

◎注1...法律カレンダー。村が直面している開発問題などの情報に基づき、村人が問題への対処法を学ぶためのツール。JVCと他団体、行政間との話し合いのもと作成されている。

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