【イエメンレポート】本当のイエメンを「取り戻す」作業
10月3日~15日の期間に、ドキュメンタリー写真家の森佑一さんのイエメン写真展『9000』が開催され、JVCのクラウドファンディングも告知の時間をいただくなど、大変お世話になりました。
大盛況だった最終日
『9000』は、日本から9,000キロ離れたイエメンのことを、9,000ミリという身近な距離感に変換しよう!という取り組み。たくさんの来場者がそれぞれの想いでイエメンに近付く、とても貴重な場であったと感じます。
この写真展で重要な位置を占めていたのが「コーヒー」。会場にはイートインのコーヒーコーナーが設けられ、常にコーヒーのいい香りが漂っていました。イエメンは、「モカ港」という港があるほど、コーヒー文化の発祥と深い関係にある国です。
会期中、森さんの友人でもあるMOCHA ORIGINS代表のタレックさんによる、イエメンコーヒーのワークショップがありました。
タレックさんは大学時代にイエメンから日本に留学生として来日し、その後、日本で唯一となるイエメンコーヒーの輸入販売会社を起業しました。
イエメンコーヒーをドリップするタレックさん
MOCHA ORIGINSの本拠地である大阪から東京に来てくれていたタレックさんは、ワークショップの中で、「本当のイエメン」について色々なお話をしてくださいました。
漫画『ONE PIECE』にはイエメンの街をモチーフにした「ゾウ」という街があること。
ムタッファルモスクという美しいモスクの中に、イエメンで一番古い銭湯が入っていること。
「サルタ」という、石鍋の中にナンのようなパンとスープを入れて熱々のまま食べる料理のこと。
あま~いデーツの実が、最高のコーヒーのお供であること。
そのどれもが生き生きとした「本当のイエメン」の姿であり、話を聞いているだけでワクワクするような、素晴らしいお話でした。
森さんの展示にも、魅力的なイエメンの姿が息づいていました
そう遠くない昔、イエメンはその街並みの美しさから、「生きている美術館」と呼ばれ、上級バックパッカーの聖地だったそうです。
今の壊された街並みからは、残念ながら想像するのが難しい程です。
壊れた集合住宅。中にまだ住んでいる人がいる
タレックさんの言葉に、印象的なものがありました。
「私たちは、イエメンコーヒーの歴史を取り戻したい」という言葉。
タレックさんは、8年も続く紛争の影響で輸出が滞り、その間に歴史が途絶える可能性すらあったイエメンコーヒーの歴史を、数百年の歴史を誇るそのコーヒー文化を、「自分たちの手で取り戻す」、そう語っていました。
私はこれを聞きながら、これはコーヒーに限った話ではないな、と感じました。
今、日本で報道されるイエメンは(*そもそも報道自体がされないですが)紛争の切り口がほとんどで、破壊された建物など悲壮な雰囲気をもつことが多いと思います。
もちろん、それは現在のイエメンの姿であり、現実です。
しかしながら、決して忘れてはいけないことは、「元々そこには、何にも代えがたい素晴らしい文化があった」ということではないでしょうか。
もともと破壊された街ではないのです。
そこには圧倒的な存在感を持つモスクや街並みがあり、息をのむような自然美があり、「生きている美術館」と呼ばれる程に訪れる人を魅了する、そんな国が、たしかに存在していたのです。
イエメン事業担当・今中が留学中に撮影したイエメン(2012年)
この状況は、これから私たちが「イエメンを支援する」というよりも、タリックさんの言葉を借りて「イエメンの文化を取り戻す」。
その方がしっくり来ると思いませんか。
前に進むというよりも、元々あったイエメンの文化や人々の力を、一つ一つ取り戻していく作業。
その作業を共同でやっていくのが、これからのJVCイエメンの活動なのではないでしょうか。
イエメンのパートナーNGOスタッフとイエメン担当の伊藤・今中
これは、イエメンに限らずどの地域での「支援活動」にも通ずるものだと思います。
多くの人と、このクラウドファンディングを通じて、「本当のイエメン」を取り戻していきたいな、と思っています。
このレポートは、2023年9月~10月に実施したクラウドファンディング「世界最悪の人道危機下のイエメンで「子ども広場」をつくりたい!」の新着レポートにも掲載しております。
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