【イエメンレポート】現地を取材した新聞記者・蜘手美鶴さんの書き下ろしルポをお届けします
こんにちは、イエメン事業担当の今中航です。
今回は、新聞記者の蜘手美鶴さんによるイエメン現地報告をお届けします。アデンの避難民キャンプ取材時のルポになります。
東京(中日)新聞のカイロ支局長を務めていた蜘手記者は、他紙がほとんどイエメンに入れない中、2022年と2023年にイエメンでの現地取材をされ、現地の実情を日本に届けてくださっています。
政治面にとどまらず、社会・文化・経済面まで幅広い記事を書かれているだけでなく、現地を訪問したからこそ伝えられる「市井の人々」に迫ったものも。中には辛い描写もありますが、それが現地のリアルです。
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2023年2月、イエメン南部アデンを取材で訪れた。印象的だったのが、アデン市内の貧困地区にあるザフラ・ハリール国内避難民キャンプ。15年に始まった内戦で故郷を追われた450世帯、約2500人が避難生活を送っていた。
キャンプは国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が建てた学校が占拠されてつくられ、校庭を埋め尽くす粗末なテントの間を子どもたちが駆け回っていた。その多くがキャンプで生まれ、出生登録はされていない子たちだった。
キャンプで会ったサラマ・マンスーラさん(23)は5年前、西部ホデイダから逃げて来たという。子ども4人のうち2人はキャンプで生まれ、出生登録はない。生活は国連機関や非政府組織(NGO)の支援頼みで、子どもは全員学校に通えていない。キャンプで会った他の子どもたちも同じような境遇で、街にでティッシュを売って日銭を稼いでいる子も多かった。
私がマンスーラさんに取材する間中、子どもたちは彼女の膝で甘えていた。テントの中は地面がむきだしで、ひどく汚れていた。雨が降ると水が流れ込んでくるといい、テントとは名ばかりの布で囲われただけの空間だった。
マンスーラさんに、どんな支援が一番必要か聞いてみた。「ほんの少し今よりマシな暮らしができれば、それで十分。故郷に帰りたいけど、家は破壊されてもうない」。わずかな願いも、内戦下では叶わないと痛感した。
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蜘手さん、貴重なルポを寄せてくださり、まことにありがとうございます。
JVCイエメンが行おうとしている「出生登録書」発行支援ですが、その背景にはマンスーラさんのように、なんとか避難した地域のキャンプで出産し、そのまま子育てを行っている人が大勢います。そのような人たちには、出生登録を行う余裕が残されていないのです。
マンスーラさんの「故郷に帰りたい」という願いは当然のことでしょう。既に帰る先がないという辛い現状。せめて、少しでも生活がしやすいように、支援が受けやすくなるように、マンスーラさんのような境遇の方々に、出生登録書・身分証明書取得支援を届けたいと強く思います。
・約6千円で、青少年・少女1人に身分証明書が発行されます。
・約1万円で、子ども10人に出生登録書が発行されます。
皆様のご協力をどうかよろしくお願いいたします。
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蜘手美鶴さんプロフィール
東京(中日)新聞・前カイロ支局長。中東・北アフリカ全般を取材し、23年7月に帰国。現在は名古屋社会部に所属。中東の難民問題や紛争・内戦、水資源問題などを中心に取材中。
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