【イエメンレポート】「園長先生の熱意と支援のその後」
こんにちは。JVC事務局長の伊藤解子です。
私たちJVCは、イエメンでの新たなプロジェクトの成功を目指しています。長年紛争下で暮らしてきた子どもたちに、安心して「子どもらしくいられる場所」を提供し、そして混乱の中で失われた身分証明書の取得支援を通して、人々の生活基盤の構築をサポートするというものです。
今回の記事では、昨年、事業地から届いた現地の方の声をお届けします。
昨年JVCはイエメンで、小規模ながらも子どもに関わるプロジェクトを実施し、子どもたちが教育を受ける機会を広げることができました。
2022年にイエメン調査に入った私と今中は、まず、現地のパートナーNGO「NMO」と組んで話し合いを重ね、厳しい教育環境と支援の必要性を確認し、教育支援の実施を決定しました。
第一弾としてJVCが行った支援の一つは、イエメン南部のアデン市タワヒ地区にある公立幼稚園の教室の建設支援でした。
各学年が新しくスタートする季節。多くの子どもが、新たな出会いや学びに期待と不安を抱く季節です。誰にでも、教育を受ける権利がありますよね。
けれどイエメンの子どもたちや保護者たちにとっては、2015年から激化した紛争の代償に直面する季節でもありました。学校や幼稚園や先生が不足し、予算も不足し、学びに通いたくても通えない状況にあるからです。
JVCが建設支援した園舎
何とかしたいと支援を決定したものの、JVCが紛争下のイエメンで実施する支援は初めてです。
例えば、他団体から「難しい」と言われていた、日本からイエメンへの送金の問題。これは、NMOのこれまでの経験から成功している方法を確認し、複数の銀行を通じて、約1ヶ月かけてなんとかイエメンに着金させることができました。
着金確認できた時には、「これでやっと(支援が)スタートできる!」と、関係者全員大喜びでした。
一方で、現地の検問所で「資機材運搬の許可にケチがついた」という連絡が入ったこともありました。ここには書ききれないですが、この問題もどうにかクリア!12月には教室が完成し、園舎不足によって行き場をなくしていた50人の園児が追加登録をすることができました。
そして、2023年2月、調査に入って支援を決めてから約1年が経過した頃。私と今中は再びイエメンの地に足を踏み入れることができました。
念願の、支援した幼稚園への直接訪問。園長先生や園児、保護者の声を直接聞くことができました。
JVCが支援した園舎内での授業の様子
支援したディア幼稚園を訪問した私たちを、エイティダル・アブドゥル・ハメード・サラム園長(50歳)と先生方、園児たちが大歓迎してくださいました。
もともとディア幼稚園と縁を繋いでくれたのは私たちのパートナーNGO・NMOのスタッフで、
「園長先生が本当に親身になって子どもたちに向き合っている幼稚園がある。教育局からも相談されるし、園長先生も様々なアイディアで必要な支援のアピールをしているけれど、国連は基本的に幼稚園の支援は実施しないので、なかなか支援してくれる団体が見つからない。是非、JVCに支援をお願いしたい」
と紹介されたのがこのディア幼稚園でした。
幼稚園には行政からの運営資金の分配はありません。その代わり、エイティダル園長は、幼稚園の多くの教材を、工夫して身近にある資材で作り出していました・・・。
「私には子どもがいないの。代わりに、この幼稚園の園児やろうあ者のために人生を捧げていると言えます」と、エイティダル園長の言葉。
エイティダル園長。手に入る資材で工夫して教材をつくる
エイティダル園長は、他にも様々なコミュニティ活動を通じて、孤児や障がい者をサポートする活動も行っていることで知られています。また、多くの人たちからの支援を募る一方、常に貧しい人々や孤児のための援助活動に取り組んでいます。
ディア幼稚園最大の問題の一つは園舎不足でした。
園舎が足りないため、入園を希望するすべての子どもたちを受け入れることができなかったのです。
というのも、アデンには国内避難民が押し寄せており、地区で唯一の公立幼稚園であるディア幼稚園に入園希望者が殺到する事態が起きていたのです。
登録日は早朝5時からスタートし、保護者が詰めかけて混乱状態となり、その日のうちに登録が締め切られます。幼稚園のスタッフは、「なんとか子どもたちを登録したい」と望んでいた保護者からのプレッシャーにも直面し、非常に頭の痛い問題だったそうです。
でも、園舎がなければ生徒を受け入れることは物理的に不可能です。
エイティダル園長は言います。
「教育委員会を通じて、NMOが私の訴えを聞いてくれました。そしてJVCを経由した日本の皆さんの支援により、園舎を一つ新設することができたのです。入園を待ち望んでいた子どもたちに、学びの場を提供することができたのです。ご支援をいただけたということが、私たち教員の心理的にも多くのプラスの影響がありました。本当にありがとうございました!」
続けて、ディア幼稚園に通うモナちゃんとお母さんから聞き取ったお話をシェアしたいと思います。
園児とお母さんへのインタビュー:モナちゃん(中央右)
モナちゃんは4歳3カ月で、ディア幼稚園の年少組に通っています。親戚を含めて7人で暮らしていて、お父さんは乗合バンの運転手。お兄ちゃんには知的障がいがあり、他の地区にある養護学校に通っています。
モナちゃんは毎日家に戻ると、幼稚園で先生が言ったこと、やったこと、友達から聞いたことをお母さんに報告してくれるそうです。母親のワラさんは、通園前にはとても恥ずかしがり屋だったモナちゃんが、今は友達ともコミュニケーションを取れるようになったと喜んでいます。手を洗う習慣など衛生面についても学んだり、文字を書くためにペンを持つこともできるようになりました。
モナちゃんの将来の夢は「ディア幼稚園の先生になること」です。それだけ楽しく先生と幼稚園での時間を過ごしているのでしょう。
お母さんは「園舎が増設されてから、以前はとても混んでいた教室に余裕ができました。また人数超過で待機を強いられていた子どもが幼稚園に通えるようになりました。ご支援をとてもありがたく思っています。」とのメッセージを寄せてくれました。
こうして直接、先生や保護者、園児の喜びの声を聞くことができ、小さくても無事にプロジェクトを実施できたことは、JVCにとってもかけがえのない経験となりました。現地の皆さんが日本からの支援を本当に歓迎してくれていることも実感することができました。
初めてのイエメンでの事業を無事に終えることができるか、心配な点も、様々なハードルもありましたが、現地の大切なパートナーNGOであるNMOと無事に、協働することができました。
そして、日本からも、イエメンの子どもたちの将来を一緒に考えていることを伝える支援にもなったと思います。
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