【イエメンレポート】イエメンとスーダンの知られざる関係
今回の記事は、イエメンに留学経験のあるスーダン/イエメン事業担当の今中による「イエメンとスーダンの関係」という一風変わった視点のレポートをお届けします。
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こんにちは、今中航です。
イエメン留学中は、授業後の空いている時間に地域のクラブでバレーボールをしていましたが(そこにイエメン代表選手もいたと、帰国してから知りました)、その中に190cmはあると思われるスーダン人が1人いました。シャーフィーという名の彼は、攻撃力と守備力を兼ね備えた、心優しき青年でした。
その後自分はJVCに入職しスーダンで駐在を開始しましたが、ここでも就業後にスーダン人、外国人の混合チームでバレーをするようになりました。
ある日、そのバレーチームにシャーフィーが現れたのです!
約10年の年月を経て、再び一緒にバレーをすることができ感慨深いものがありました。
しかしシャーフィーを通じて、イエメンのクラブチームで一緒にプレーしていた仲間2人が、アンサール・アッラー(フーシー派)の兵士になり戦闘で命を落としたことなど、悲しい現実も知ることになります。
スパイクを打つシャーフィー
シャーフィーがイエメンにいたのは、彼の父親が学校の教員としてスーダンから派遣されていたためですが、実は彼のようなケースは非常に多いです。
JVCスーダンの現地職員の父親もイエメンの小学校で教員をしていましたし、近所のアイスクリーム屋で働いているスーダン人医学生もいました。今、スーダンでそういう人たちと出会った際には、イエメンにいた頃の食事や現地の人々との思い出話で盛り上がります。
スーダンは、イエメンのみならずオマーンなどにも、現地の教員不足を補うために大量の教員を派遣していたのです。
イエメン人がビザなしで入国できる国は指で数えられるほどしかありませんが、そのうちの1つがスーダンです。
言語はアラビア語で共通しているので、出稼ぎのためにスーダンに行くイエメン人もいます。
飛行機の直行便もあります。ここ数年でスーダンの首都ハルツームにはイエメン料理屋が急増しました。イエメン料理は味に定評があり、価格が高騰しても、客は途切れずどこも繁盛していました。
2014年にフーシー派がイエメンの首都サナアを占領し、2015年に南部アデンまで侵攻すると、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)はアラブ連合軍を結成し、徹底的に対抗し、戦争は拡大していきました。
このアラブ連合軍の中にスーダンも含まれます。
空爆はサウジアラビアが行いますが、最も危険を伴う地上戦には、スーダンの兵士を用いるという戦法が取られました。
スーダンの準軍事組織の即応支援部隊(RSF)は、イエメンに兵士を派遣することでサウジアラビアから外貨を稼げるため、両者にとって都合がよかったのです。
フーシー派が公開した複数のビデオには、スナイパーに撃たれたり、捕虜として捉えられたりしたスーダン兵士が写っています。
スーダン国内からは批判の声も挙がりましたが、当局は具体的な死傷者数を公表していません。しかし2019年にフーシー派が発表したところによると、4,000人のスーダン人兵士が死亡したとされており、アラブ連合軍参加国の中で一番多く死亡者を出していることになります。
命のリスクを冒してまでも、イエメンに渡りたいという人がいます。
特にスーダンの中でも貧困地域とされているダルフール地方、JVCの事業地もあるコルドファン地方の若者です。
両地域は中央政府から「周辺地域」として扱われ、開発が進まず若者の職業選択も限られています。
一方イエメンに派兵されて戻ってくると、莫大なお金を手に入れることができると言われています。こうして得たお金で車や家を購入する人も多いです。実際に「スーダンに戻ってきてからトラクターを購入した」という声を、JVCが活動する南コルドファン州カドグリでも聞きました。
ハルツーム郊外の貧困地域で、イエメンへ派兵された兵士の帰還を祝う会に誘われたことがあります。
兵士の一家は招待客に昼食をもてなし、彼の民族であるヌバのダンスチームを呼び、チップを豪快に配っていました。このお金もサウジアラビアから回ってきたお金なのか...と複雑な気持ちになりました。
このように、昔は教員を送り「知」を拡げたスーダンが、現在では兵士を派遣し「血」を流している、そしてこの構造がRSFの資金を潤沢にしている。
スーダンとイエメンの間には、このような「不都合な関係」が存在するのです。
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