【イエメンレポート】停戦は「最低限」の選択
2022年3月、イエメンでのプロジェクト実行者である伊藤と今中がやっとのことでイエメンに入国しました。
現地NGOの「NMO」と連携し、支援第一弾として教育支援を決定し、そして2023年2月に再入国。支援のその後を自分たちの目で確認することができました。
今回は、プロジェクト実行者の1人である今中が、新着記事をお届けします。
こんにちは、イエメン事業担当の今中航です。
イエメンでは2022年4月に、暫定政権とアンサール・アッラー(フーシー派)の間で停戦合意が結ばれ、結果的に半年間、停戦が続きました。この間、死傷者は大幅に減少しました。それでも、日々のニュースからなくならないものがあります。
それが地雷・不発弾による被害です。
アデンから紅海沿岸を車で走っていると、ハンプ(減速帯)が所々にあるのですが、そこで車が減速すると、物売りや物乞いの人々が車に寄ってきます。
そこに右足がなく、松葉杖を使っている少年がいました。どうしたんだろうか...と思っていると、同行した現地パートナーのNGO職員が「地雷で足を失ったんだよ」と教えてくれました。
アデン(Aden)から紅海沿岸を通りモカ(Mocha)、モカからハイス(Hays)へと向かった
紛争の前線により近いハイスという街の女子小学校を訪問しましたが、砲撃により穴の空いた屋根や、フーシー派のスローガンがペイントされた壁が残っていました。
数年前まではフーシー派が占領していた街だというのも頷けるぐらい、紛争の跡がたくさん見られます。そして教室には、地雷の被害にあわないための啓発ポスターが貼られていました。
砲撃で穴が空いた教室と教室の扉に貼られたポスター。地雷にも様々なタイプがある
私たちが訪問する直前にも、ハイスでサッカー場に向かっていた少年たちが地雷を踏み、2名が亡くなり3名が負傷したというニュースがあったそうです。
フーシー派は再三求められているにも関わらず、地雷をどこに埋設したかを示す地図を提供していないと批判を浴びています。一説には200万もの地雷が埋まっていると言われています。
そのため、このような悲惨なニュースは後を絶ちません。
国際NGOセーブ・ザ・チルドレンの報告によると、停戦期間であっても、地雷・不発弾による事故は増加し、子どもが犠牲になる原因の3分の2は地雷・不発弾によるものとされています。
さらに2022年には199名の子どもが犠牲になりました。2日に1人の子どもが地雷・不発弾により亡くなっているのです。
地雷・不発弾による死傷者の変遷 出典:Save the Children “Watching Our Every Step:THE DEADLY LEGACY OF EXPLOSIVE ORDNANCE FOR CHILDREN IN YEMEN”
アデンやホーハの避難民キャンプでインタビューをしていても、現在の窮状を訴えるのはもちろん、将来の展望を描けない避難民の方がほとんどでした。
ホデイダ出身で4人の子どもの母親であるソメイヤさんも「故郷の村は地雷だらけになってしまい、親族も地雷で犠牲になった」と語ります。
たとえ紛争が終わったとしても、地雷が廃絶されなければ帰れるところがありません。
避難キャンプを転々としているソメイヤさん(左から2人目)と子どもたち
地雷の被害者をさらに苦しめるものは、心ない偏見と差別、金銭的な負担です。
子どもの場合は、今までのように友達と遊べなくなったり、学校までの距離が遠いと通学するのも困難になります。
仲間外れにされることも稀ではありません。
たとえ支援団体が治療し義足を提供してくれたとしても、身体が成長するため、その都度交換する必要があります。大人の場合は、仕事を失ったり、職業の選択が狭まる可能性もあります。
また山岳部が多いイエメンでは、治療が必要になったときも病院へのアクセスが悪く、移動に金銭的負担が生じます。こうした状況は被害者を物理的に追い詰め、精神的にも大きなダメージを与えます。
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以下の動画はイエメンの人権団体Mwatanaが制作した、地雷被害者へのインタビュー動画です。いつかまたサッカーをしたいと望む少年、ただ歩きたいと願う羊飼いの女性のリアルな声を聞いてください。
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