スーダン緊急種子支援 (2) ― 栽培中の農園から ―
こんにちは、スーダン事業現地代表の今中です。
2025年が幕開け、戦闘勃発から1年9か月が経とうとしていますが、各地で戦闘は継続しており、必要なところへ支援がスムーズに届けられず、人道危機は悪化しています。
食料不安を計測する世界的標準「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」において、最新の報告では、飢饉危機が拡大し、国民の半数にあたる2,460万人が緊急の食糧支援が必要になる可能性に言及しています。
しかし、スーダン政府は「スーダンの主権と尊厳を損なう」「現地のデータが不足しており、推測に過ぎない」と批判し、IPCとの協力を停止すると発表しました。
しかし、現実には深刻な食糧不安や急性栄養失調が一部地域で確認されていることは事実であり、前回の記事:緊急種子支援 (1) ― 南コルドファン州の現状と種子配布―で、南コルドファン州カドグリの状況や緊急種子配布について説明した通り、人々は危機的な状況に置かれています。
IPCが発表した最新地図では最悪のフェーズ5「壊滅的飢饉」と指摘される地域もある。左が2024年10-11月実績、右が2025年5月までの予測。カドグリはフェーズ4「人道的危機」(出典:IPC,2024年12月)
南コルドファン州カドグリでは、紛争による物価高騰と食料不足への対応として、2024年6月、豆やソルガム、オクラの種子を250世帯に配布。住民が植えた種が実を結び、収穫を迎えることができました!
クルバ地区のザフラさんは、すでに収穫を始めていました。
雨が降ると草が沢山生えるので、毎日のように草刈りをしています。虫も大量に発生しますが、日が昇ると死ぬので、殺虫剤を使用する必要はありません。配布された全ての種子を植えました。
種子(配布したのは在来種)は強い抵抗力を持っていて、雨があまり降らなくても、逆に降りすぎても、よく育ちます。オクラは成長が早く、毎日のように収穫しました。1束500SDG(当時レートで約45円)で売れます。得たお金で砂糖、茶、コーヒー、子どものためのビスケットを買いました。
家計が苦しく種子を持ってなかったので、本当に助かっています。種子を配布してもらえなかった人にも少しわけたので、彼らも栽培していますよ。
種子が実った様子を、ぜひ動画でもご覧ください。
ソルガム、落花生、ササゲは収穫までにまだ時間がかかりますが、オクラは種子を植えてから2カ月程で収穫できたようで、すでに食していることが確認できました。
住民は確かに紛争の影響を受けていますが、彼らには耕せる土地、農業の経験、雨という天からの恵みがあります。
そうした「あるもの」を活かした支援は、長期化する危機的状況において住民の尊厳を守り、レジリエンスを強化します。それだけでなく、元々農耕を生業にしていた人々の生活様式を守ることができます。
農地を誇らしげに見せてくれる住民たち
次回の記事では収穫後の様子について報告しますので、JVCのメールマガジン購読やSNSをフォローしてお待ちいただけると幸いです。
京都府出身。大学でアラビア語を専攻し、在学中にイエメンに留学。留学中に「アラブの春」と総称される民主化運動が始まり、ライフラインが脆弱化し、国が混乱に陥っていく様を目の当たりにする。卒業後は途上国・新興国の根幹を支えられるようなインフラ支援に携わりたいとの思いで、メーカーにて発電プラント事業を担当。退職後、現地の人々により近い距離で可能性が広がることに尽力したいという思いが大きくなり、2018年JVCに入職し、以降スーダンに駐在。イエメン事業立上げに参画し、2022年よりイエメン事業担当も務める。
内戦続くスーダン、「飢きん危機」が深刻化 国際専門家チームが報告(BBC,2024年12月)
https://www.bbc.com/japanese/articles/cwydnrz1npko
スーダン緊急種子支援 (1) ― 南コルドファン州の現状と種子配布―
https://www.ngo-jvc.net/activity/report/20240902_sudan_report.html
世界はあなたの小さな一歩から大きく変わります。
私たちが世界をより良くする活動は、
皆さまのご寄付・ご支援に支えられています。
日本国際ボランティアセンターでは
マンスリーサポーターや物品寄付をはじめとする様々なご支援を受け付けています。
良い世界の実現のために私たちの活動を応援してください。
JVCのことをまだ知らない、あまり知らない方はまずはこちらをご覧ください。