REPORT

スーダン

交互で学校に来る姉妹ー評価報告①補習校支援ー

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JVCスーダン事業では2010年からスーダン、南スーダンの複数の地域において活動を実施してきました。活動の継続を判断するうえで、それらの活動が対象地域に効果的だったか、関わってきた人々にどんな変化をもたらしたのか、活動の実施においてJVC側の体制面は十分だったかなど事業評価を実施しました。

事業の成果を確認し、結果を踏まえて、今後の事業の方向性の議論を進めるとともに、明らかになった課題や教訓を次の事業形成に活かすことが目的です。

JVCは紛争が勃発したスーダン南コルドファン州で2011年から緊急支援を開始しました。紛争勃発直後は避難民が大量に押し寄せたカドグリにて住居建設や非食品(NFIs)の緊急支援を行い、さらに給水支援や菜園研修など、生活基盤を支える支援にシフトしてきました。

今回の報告は、補習校支援において見えてきた成果・課題、碑益者の声を紹介します。

補習校に参加した児童へインタビューを実施する後藤(2022年10月)

  • 補習校支援とは?

学校に行く機会を失った子どもたちが多い地区にて、不就学児童を対象に、一定期間授業や心理的ケアを実施し、補習校修了後の正規校への編入・就学継続を目指す取り組みです。

児童にはノートや鉛筆などの文房具を支給し、適した環境で学べるように黒板や机・椅子を整備するほか、授業に集中できるよう軽食の提供も行っています。

また、教員研修の実施や、保護者・現地行政と連携して地域全体で子どもの教育を後押しする仕組みづくりをしています。

授業を実施するのは地元の教員

  • 成果・課題

これまで南コルドファン州都カドグリや近隣のコミュニティで活動を実施し、約1,400人(2022年度までの数値)の児童が修了し、各地域の不就学率は半減しました。

補習校の修了試験では毎回90%以上が合格しており、正規校に進学した後も、成績優秀者が多いと教員から聞かれるなど、基礎学力が確実に定着しています。さらに保護者グループが水汲みや掃除に参加して補習校を支えるほか、欠席した児童宅を訪問し、教育に関するメッセージを伝達しています。

そうしたこともあり、補習校に参加した子どもの弟妹が翌年の補習校に参加したり、新1年生が補習校を経ずに正規校に入学するなど、教育の重要性が伝わったからこその成果も見られました。

一方で、子どもを労働力と見なし学校に通わせない保護者もいます。

中には教育の重要性を理解していても、経済的な事情から子どもを学校に通わせることが困難な家庭もあります。学費の免除や制服着用を必須としないなど学校や行政との交渉や連携で解決できる問題もあるでしょう。

スポーツを楽しむ児童たち

  • 補習校参加児童・保護者・教員の声

■シェイマさん (補習校修了児童、左から2番目)

両親を幼いときに亡くした後は叔父の家族と暮らしています。補習校修了後、正規校の4年生に進学することができましたが、5年生のときに叔父から家畜の世話をするよう言われ休学しました。今年また5年生として復学しました。叔父に反対されながらも学校に通って勉強しています。勉強を続けているのは、前進して、物事を理解したいからです。将来は先生になりたいです。教育を受けると前進できることは分かっているのに、叔父など家族の理解が足りていません。

■オスマンさん (保護者グループのメンバー)

子ども5人のうち3人が学齢年齢で皆学校に通っています。保護者グループはスケジュールを作成して毎日幼稚園と学校を訪問しています。主に欠席児童のフォローアップや備品の修理、掃除キャンペーンを行っています。前回は、お金をコミュニティから集めて、机・椅子12セットを修理しました。

私が学校に行けず、仕事を探すのに苦労したから、子どもたちには勉強をして、将来いい仕事についてほしいです。学校で勉強してから、子どもの行動や態度、言葉遣いがよくなりました。毎日、学校で何があったのか、何を勉強したかなどを聞いています。いい父親になれたと感じています。


■アブドゥルバーギーさん (補習校教員、コミュニティリーダー)

補習校を終了した児童が正規校でもいい成績を残しています。小学校から高校に進学する試験で、シャイール小学校の女子生徒がカドグリ全体で2位をとりました(266/280点)。また進学試験も90%近くが合格したのです。

こんな児童もいました。補習校を修了した後に正規校に通っている2人の姉妹がいるのですが、家計の問題で途中から交互に学校に来ています。最初姉妹は何も言わず、教師がいつも一緒に来ていた姉妹がある日から1人ずつになったので話を聞いてみると、1人が学校に行っている日はもう1人が市場や家で働いている、と泣きながら話してました。交互に授業を受けているため、学校に来た方が2人分のノートをとり、授業の内容を共有してあげたりと協力して頑張って勉強しているのです。

他にも家畜の世話をしたり、ソルガムの粉砕機に並んだりして学校に通えない児童がいます。補習校の活動はそうした児童宅を訪問して親を説得しているので、教育の重要性を伝えるとてもいい機会となっていると思います。

  • 今後のJVCの活動

スーダンでは2023年4月に武力衝突が勃発し、現在も収束しておらず、南コルドファン州を含むほぼ全土で学校は閉鎖されたままです。さらに相次ぐ避難や戦闘により児童は心に大きな不安、傷をおっています。

JVCは2023年度は基礎学力の定着だけではなく、児童の心理的サポートにより重点を置き、補習校が子どもたちが安心して過ごせる「居場所」になるよう活動を続けています。

教育の機会は、子どもだけではなく保護者やコミュニティの人々にとっても、厳しい状況のなかのひとつの希望になります。紛争下であっても、ひたむきに前を向き前進しようとしている人々のためにも、評価で明確になった課題や教訓を活かしながら、引き続き活動を続けてまいります。

補習校の授業をモニタリングするJVCカドグリのアフマドと橋口

執筆者:

スーダン事業・ラオス事業 東京担当

東京都出身。小学生の頃にマザーテレサの伝記を読み、世界中に飢餓や紛争で苦しんでいる人々がいることを知り衝撃を受ける。「世界の問題と苦しんでいる人々を無視しない人になりたい」と思い、国際協力に関心をもつ。大学卒業後は一般企業と在日イエメン共和国大使館で勤務しながらJVCの英語ボランティアに参加する。パレスチナを訪れた際、現地で実際に起きている現状を目の当たりにし、自分の無力さと問題の複雑さを痛感。問題から目をそらさず長く向き合い、 自分か主体的に支援活動に携わりたいという思いが強くなり、2022年5月、JVCに入職。

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