戦争を生き抜くスーダンの女性たち―戦争勃発から1年 #1ー
こんにちは、スーダン事業駐在員の今中です。
スーダンは戦闘勃発から4月15日で丸一年を迎えようとしています。ラマダーンが始まっても戦闘は継続しており、国連等の報告によると、2月現在、戦闘による死者だけで13,900人、海外に逃れ難民となったのは166万人、国内避難民の数にいたっては632万人と世界最大を記録しています。人口の約半分にあたる2,480万人が支援を必要としています。
メディアで取り上げられることは極端に少なく、2024年に必要とされている支援額の4%しか集まっていません。援助機関が出す報告書を読んでいても、現地の人々の声を聞いていても、危機的な状況であり、何百万もの人々の生命が危機に瀕しています。JVCでは特集を組み、スーダンの現状をお届けします。
戦争下において、女性はあらゆる危険にさらされています。
誘拐、強制結婚、児童婚、性暴力の増加が各地で続発しています。ジェンダーに基づく暴力(GBV)の被害を受けた者は心的外傷後ストレス障害(PTSD)や鬱病の症例が多数報告されています。(具体的な被害の報告については、下記の参考記事をご覧ください。)
生理用品も不足しており、清潔な水のアクセスも制限されています。女性の尊厳を脅かすだけでなく、感染症のリスクを高めています。物資不足と急激なインフレのため、十分な食料を手に入れられず、妊娠中・授乳中の100万人以上の女性が急性栄養失調に苦しんでいます。紛争地帯の医療機関は70%が機能しておらず、医療へのアクセスが制限されており、適切な母子保健サービスが受けることが困難です。それでも15万人の妊婦がいて、今月から3か月間で約5万人の出産が予想されています。
戦争前後での生活の変化を、JVCが支援する補習校に参加した児童の母親、サミーラさんに聞きました。
サミーラさん(右)の子ども1人(8歳)が補習校に参加した。
「戦争後、食料が高騰しています。(主食である)ソルガムも高く、玉ねぎなんて7倍になりました。以前は乾季に木を拾い集め木炭にして売っていましたが、治安が悪化し遠くまで拾いに行けなくなりました。掃除や洗濯など収入を得ようとしていますが、なかなかうまくいきません。子どもたちも市場で靴磨きなどして支えてくれています。補習校では子どもたちに軽食を提供してくれるので、食べ物を確保することが難しい今、とても有難いです。」
サミーラさん自身は過去に学校で勉強したことはなく、補習校に参加した息子に交じって、一緒に読み書きの勉強をしました。「息子は以前読み書きができなかったですが、今は出来ます。これからも勉強を続けたいと意欲を持っているようですし、成功するために教育は必要ですから、私も応援したいです。」
補習校に参加しているアワーティフさん(14歳)を含め、子どもたちは砲撃や銃撃に大変怖い思いをしています。どこに砲撃が落ちてくるか分からないという恐怖に慄くだけでなく、経済的な苦境から生活が圧迫していることが明らかです。
補習校に参加したアワーティフさん(左)。今まで学校で勉強をしたことはなかった。
「カドグリで発生した戦闘によって、私たちは避難せざるを得ませんでした。戦争前は叔父が送金して私たちをサポートしてくれていたのですが、今はそれもできなくなっています。補習校に参加する前は、家で紅茶を作って、掃除して、ご飯を用意して、水を汲みに行くということしかしていませんでした。前は全く分からなかったアラビア語の読み書きができるようになりました。補習校ではクルアーンを詠むのとバレーボールをするのが好きです。先生になりたいので、大学まで勉強を続けたいです。」
本報告を執筆しようと思ったのは、JVCスーダン副代表モナからのメッセージがきっかけでした。先日3月8日は国際女性デーということで、当日モナから「JVCのホームページで伝えたいことがあるんだけど」とメッセージが届きました。モナ自身も戦争前はハルツームに住んでいましたが、4回の避難を経て、現在はコスティという地方都市にて生活しています。連絡が途絶えた時期も幾度かあり、昨年末には即応支援部隊(RSF)の猛攻により、次はどこに避難しなければいけないのかと検討していたほどでした。それでも現在も遠隔にて事業運営を担い、会計・総務業務をこなしています。
北コルドファン州オベイドへの退避時、カドグリから避難してきたJVC職員アフマド(右)と再会を果たしたモナ。現在モナはコスティに、アフマドはカドグリに戻り業務にあたっている。
「戦争で厳しい環境に強いられ、苦しい思いをしているスーダンの女性たちに、国際女性デーおめでとう、と伝えたいです。砲撃、銃撃の音を聞きながら生きる女性、避難民キャンプや近隣国に散り散りになった女性、レイプや性暴力、性的虐待、経済的に苦しみ、精神的にもやられた女性が無数にいます。こんな過酷で悲惨な状況においても、何とか生き抜いている彼女たちに敬意を表したいです。戦争の影響を受ける人々に神のご加護がありますように。」
JVCの研修を受けた若者により企画・運営されたバレーボール大会で優勝し喜ぶ少女たち
もちろん苦しい状況におかれているのは女性だけではありません。男性の中には、家族を養うために武器を手に命の危険を冒す者がいます。新兵としてリクルートされる者がいます。仕事を求めて密入国というリスクある手段で近隣諸国に向かう者がいます。食べ物を朝早くから探し回る者がいます。家を守るために妻子だけ退避させ、紛争地帯に残る者がいます。信念を貫き、民兵の命令を受け入れず殺される者がいます。苦悩を打ち明ける相手がおらず涙を流す者がいます。それは、あなたの横にいたかもしれない、一般の市民の方々です。
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スーダン事業 ハルツーム事務所現地代表/イエメン事業担当
京都府出身。大学でアラビア語を専攻し、在学中にイエメンに留学。語学以外に現地の宗教、文化、慣習等を学ぶ一方で、革命や紛争の影響等でライフラインが崩壊した生活、教育を受けられない子どもたちや仕事を失う大人たちを目の当たりにする。
卒業後は途上国・新興国のインフラ支援に携わりたいとの思いで、メーカーにて発電プラント事業を担当。もっと現地の人々に寄り添いながら、可能性が広がることに尽力したいという思いが大きくなり、2018年JVCに入職。好きな食べ物は(料理しないけど)かぼちゃを使った料理。
・UN OCHA Situation report
https://reports.unocha.org/en/country/sudan/
・UNFPA Situation report Update No.11
・ACAPS “Sudan Impact of the war on women and girls”
・Arab news ”状況が悪化するダルフールで女性が拉致されている”
https://www.arabnews.jp/article/middle-east/article_103971/
・Arab news “紛争地スーダンで行方不明の女性や少女への深刻な懸念が広がる”
https://www.arabnews.jp/article/middle-east/article_96460/
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