補習校が生んだ奇跡―スーダン戦争勃発から1年 #2―
スーダンは戦闘勃発から4月15日で丸一年を迎えました。人口の約半分にあたる2,480万人が支援を必要としている中、メディアで取り上げられることは極端に少ない状態です。
JVCは南コルドファン州カドグリで不就学の子どもたちに補習校を運営しています。
本来、補習校修了後は朝の正規校に編入するのですが、戦闘勃発から1年経った今も学校が再開していないため、JVCは補習校を継続し、教育のアクセスを失わないよう、子どもが保護される空間を守っています。先日一通りカリキュラムを終えた児童を対象に修了試験を実施し、4地区で修了式を執り行いましたので、その様子を写真、動画とともにお伝えします。
口頭試験を受ける児童
教育省のカリキュラムに則ってアラビア語、算数、英語、宗教の試験を実施し︎、95%以上の子どもたちが無事に合格することができました。修了式では順位発表の前に国歌斉唱、クラブ活動で練習した寸劇、ダンス、スポーツを披露し、日々の取組みを地域の人に見てもらい大いに盛り上がりました。是非動画をご覧ください。
そして順位発表は毎回恒例ですが、涙と笑顔で溢れました。教育のアクセスを守ることを主目的としていますので、基礎学力が身につけば順位は重要視していませんが、悔しさから泣く児童もいれば、嬉しさから泣く保護者も。
ゾハルさんは「子どもたちは初めて学校で勉強する機会を得て、読み書きができるようになっただけでなく、年長者や年下を尊重し、物事の善悪が分かるようになりました。家に帰ってからも歌を唄ったりして文章を読んでいます。特に絵を描くのが大好きです。私たちだけじゃなく、地区の全ての家族が子どもたちを学校に送れるようになってほしいです。」と熱心に語ってくれました。
以前の記事で紹介した、今まで学校で勉強したことはなかったものの歌の才能を発掘された盲目の少年、アブドゥルカリームくん。修了式で1位から順番に読み上げられていく中、なんと6位でアブドゥルカリーム君の名前が呼び上げられました。会場は大きな歓声に包まれ、皆で喜びを共有しました。目が見えないのにどうやって試験を受けたかというと、教員が読み上げて口頭で回答してもらったのです。
表彰されるアブドゥルカリームくんを取り囲む保護者、教員たち
さらに修了式では、伝統楽器をバックに練習した歌を披露しました。とても評判がよく、急遽他の地区の修了式にも駆り出されるほどでした。
修了式で唄を披露するアブドゥルカリームくん
正直、カドグリの状況が大変厳しい中で、住民が修了式にかける気合いに驚きました。飾り付けや標語が書かれたポスターなども各地区で用意されたものです。約1か月続いた通信遮断のあと、何百もの写真や動画がカドグリから共有されたときは本当に嬉しく思いました。
戦闘が頻発する中で、活動を再開し、資金のやり繰りをしながら歓喜に満ちた修了式まで辿り着いたのは奇跡的なことだと思います。それは現地で奮闘する住民の方々、自身が避難を重ねながらも活動を諦めない現地職員、日本から支えてくれる皆さまの力があってこそ成り立つものです。
修了式にてウェルカムボードを掲げる児童たち
勉強が得意な子もいれば、絵、スポーツ、ダンス、歌が好きな子もいます。補習校に来るきっかけは何でも構いませんが、そこで子どもが教育を受ける・保護される、という当たり前の権利を守りたいです。戦争によって、約1,900万もの子どもたちが教育のアクセスを奪われています。是非、これを読んでくれた皆さんも、寄付、記事の拡散など、どんな形でも共に関わっていただければ幸いです。
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スーダン事業 ハルツーム事務所現地代表/イエメン事業担当
京都府出身。大学でアラビア語を専攻し、在学中にイエメンに留学。語学以外に現地の宗教、文化、慣習等を学ぶ一方で、革命や紛争の影響等でライフラインが崩壊した生活、教育を受けられない子どもたちや仕事を失う大人たちを目の当たりにする。
卒業後は途上国・新興国のインフラ支援に携わりたいとの思いで、メーカーにて発電プラント事業を担当。もっと現地の人々に寄り添いながら、可能性が広がることに尽力したいという思いが大きくなり、2018年JVCに入職。好きな食べ物は(料理しないけど)かぼちゃを使った料理。
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