【ガザ】粉ミルクがガザに届くまで: 数カ月の道のりレポート
いつもJVCを応援していただき、ありがとうございます。
6月4日に、ガザ緊急支援のひとつとして実施した「粉ミルクの配布」についてご報告しましたが、今日はその【舞台裏】についてお話したいと思います。
2023年10月7日以降、何とかしてガザ内に必要な支援を届けたいと思いましたが、ふだんの事業で協働している現地パートナー団体のアルデルインサーン(AEI)は、その時点ではスタッフの安全確保優先で活動ができず、私たちはガザで活動をしている別の現地NGOとの連携を模索していました(*現在はアルデルインサーンと母子保健 や現金給付支援を実施中です)
そのような状況のなか、以前、東エルサレム事業で20年近く協働していたパレスチナ医療救援協会(PMRS)がいち早く緊急支援を開始していることを知り、早速コンタクトをとってみることに。
(2009年、ガザで巡回診療を実施中のPMRS)
ヨルダン川西岸地区の中心都市・ラマッラに本部があるPMRSはガザにも支部があり、通常から移動診療(モバイルクリニック)などの医療支援活動を行っていました。
私たちが協働を打診すると、二つ返事で「是非に」と快諾してくれ、連携することになりました。2023年11月初めのことでした。
その時は、現場のニーズの高い医薬品や衛生用品、救急箱の配布などを支援するという計画をしました。
(PMRSのイスカフィ医師とのミーティング/2023年11月)
その後、激しい空爆が続くガザとの調整やコミュニケーションに時間を要し、思うように支援を進めることができないまま時間が過ぎて行きました。
そうこうするうちにエルサレムでは静かなクリスマスを迎え、年が改まった2024年1月10日にPMRSから連絡が入りました。
PMRSからは、他の国際NGOなどとの調整の結果、JVCには医薬品ではなく「1歳児以下の子ども用の粉ミルク」の購入および配布に関わる支援をお願いしたいという要望が出され、JVCは現地のニーズや状況も確認したうえで、粉ミルクへの変更に賛同しました。
粉ミルクということで、現地での水の調達について懸念する声もあがりましたが、PMRSガザ支部スタッフの話では、配布対象地として考えていたガザ南部(ラファ)では、飲料水自体は国連や他の国際NGOが支援していること、また、粉ミルクはお湯で溶かす(煮沸した水を使う)ため衛生的にも問題はないということでした。
当初、粉ミルクはガザ内の業者がエジプトから購入して配布する予定でしたが、エジプトとイスラエルの国境にあるラファ検問所での厳しい検査によりガザに入れることができる物資の量が極端に制限されていたり、エジプトの業者による多額の手数料の要求、エジプトの業者とのトラブルなどもあいまって、その方法は断念せざるを得ませんでした。
(PMRSのイスカフィ医師とのミーティング)
エジプトをベースにした計画を断念した後、次の計画として相談があったのが、隣国ヨルダンでの粉ミルクの購入と輸送でした。
そして、ヨルダン政府とイスラエル政府の合意のもと、支援物資がイスラエル経由でヨルダンからガザへ搬入されるルートが確保されたのち、さまざまな書類手続きを経て、2月末に粉ミルクを「運搬リスト」に載せることができそうだということでした。
が、運搬リスト上もっとも優先度が高いのは「食料」ということで、粉ミルクはしばらく待機状態となってしまいました。
手配を担当してくれているPMRSスタッフに、「粉ミルク輸送の状況はどうか」と確認をするたび、「来週には入ることを願いたい」という返事がきますが、なかなか前には進みませんでした。
もちろん粉ミルクも食料同様、赤ちゃんが生きるために必要なものとして、優先順位の高いもののひとつではあったのですが・・・。
そんな状況が数カ月も続いた5月上旬、「高い確度で、粉ミルクが来週にはガザに入る」という情報がPMRSからもたらされました。
とうとう・・・!と思った矢先に、粉ミルクを入れるために通過する肝心のラファ検問所が、イスラエル軍により制圧されました。
この頃、イスラエル南部にあるケレムシャローム検問所も、ガザ支援に反対するイスラエル右派の人たちによるデモにより時折閉鎖されていました。
ようやく粉ミルクがガザに!と期待が高まっていただけに、それまで以上に失望もしましたが、支援の実現に向けて頑張っているPMRSやJVCのガザ現地スタッフ、何よりも支援を必要としている人々のことを思うと、失望してはいられません。
そして5月末、ようやく「粉ミルクがガザに入った!」という朗報が入りました。やっと、やっと待ちわびていた連絡です。
しかも、粉ミルクが入ったのは、当初想定していたガザ南部ではなく、さらに飢餓状態が進み深刻な栄養不良の問題を抱えているガザ北部でした。
ニュースを聞いた私たちはみな、一様に「やった!」と声をあげて喜びました。
PMRSの本部でもそのニュースが届いたときに歓声があがったそうです。誰よりも喜んでいたのは受け取ったPMRSの医療チームでした。
JVCの現地スタッフがPMRSの現地責任者に電話したところ、「チームのみんなが支援が届いた、見放されていなかった!」と涙ぐんだ声で話していたそうです。
こうして、さまざまな人の心と共に、ガザで粉ミルクが配布されているのです。
JVCだけではなく、どの団体も、支援にあたっては多くの困難を抱えています。
現地で活動するスタッフの安全の確保が大変に難しいこと、輸送に時間や労力、多額の費用などがかかること、支援場所を決めても治安状況によっては急な変更をせざるを得ないこと、増え続けるニーズに支援の数が追いつかないこと、支援物資を保管する場所すらも爆撃されること、トラックを動かす燃料がないこと、人々の間でも治安が悪化しているなどが挙げられます。
しかしながら、どんな困難があったとしても、生きるために最低限のものすら奪われている人々に必要な支援を確実に届ける必要があります。JVCは現地のNGOと連携しながらこれからもガザで支援活動を継続していきます。
今回のようなご支援も、皆様からのご寄付のおかげで実施することができています。
引き続きのご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。
(ガザのPMRSに届いた粉ミルク)
JVCは今後も現地の団体と連携しながら、緊急支援を実施していきます。
今後もガザ緊急支援にどうかご協力ください。
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