スーダン緊急種子支援 (3) ―待望の収穫―
もうすぐ戦闘勃発から2年が経過しようとしていますが、JVCの活動地でもある南コルドファン州都カドグリでは大きな動きがありました。
2023年8月、反政府組織(SPLM-N)が、7年以上維持されてきた事実上の停戦を破棄し、国軍が抑えていた領土を侵攻して以来、度々衝突が起こっていましたが、ここ最近は小康状態が続いていました。
しかし、2025年2月3日、国軍がカドグリの山の上の領土を奪還したところ、反政府組織はランダムに砲撃を撃ち放ち、市場や住宅街に大きな被害がでました。市民47名(男性16名、女性20名、子ども11名)が亡くなり、25名(男性3名、女性5名、子ども17名)が負傷しました。
砲撃が落ちた場所はJVC事務所からも程近く、以前JVC事務所を掃除してくれた方の親戚の子ども、以前の活動で関わった方の子どもも、複数亡くなりました。カドグリ近郊だけでなく、国軍による領土奪還は各地で続いています。
カドグリでは約2年停電したまま。JVC事務所にも太陽光パネルを設置しました
カドグリから南コルドファン州第二の都市・ダレンジまで続く唯一の幹線道路も、反政府組織によって1年半に渡り封鎖されていましたが、やっと封鎖が解除されました。
まだ市民や物資の移動は許可されていませんが、近いうちに開通すると見られています。
家族との再会、避難民の帰還、物資搬入による物価の下落、基本的サービス(電気、水、通信など)の復活が待望されています。
住民が収穫した農産物
サラフ地区のファーティマさんは、収穫したものを見せて以下のように語ります。
※ソルガム:主食となるイネ科穀物、アシーダ:湯で練ったもので主食、ムラーフ:シチューのようなもの、ダグワ:ピーナッツバター
ソルガムは鶏が土を掘るなどして生産性はあまり高くなかったですが、ソルガムからアシーダ、オクラを使ってムラ―フを作り、一緒に食べています。花生からはダグワを作ってサラダと食べています。来年用の種子も保存しています。
乾燥させたオクラ
また、収穫を終えたハーリドさんは言います。
種子配布の前は、色んな種類の草を茹でて何とか空腹を凌いでいました。かぼちゃの草などです。しかし、今は神様のおかげで1日2食、食べられています。次の雨季までもつようにしています。次の雨季には8ハバル分は作付けできると思います。
※1ハバル = 20m x 20m
木や屋根にソルガムを吊るして保存しています
農業は自然を相手とします。フォローアップやインタビューを通して、住民たちが数々の課題に直面したことが分かりました。アリ、虫、鶏、雨量...さらに残念なことに、収穫した農産物が盗難の被害にあったというケースもありました。
それでも、一つ一つの小さな種子が成長し、栽培・収穫を経て、250世帯以上の住民の命を守ることができました。3月から断食月ラマダーンが始まりましたが、イフタール(断食明けのご飯)にも収穫した農産物が使用されていることでしょう。
住民たちは、種子配布を支えてくれた日本の皆さまに感謝するとともに、来年どうしたら収穫量を増やすことができるかについて、すでにアイデアを出し合っています。
約1カ月のラマダーンが終わると、雨季はすぐにやってきます。保管された種子の出番です。
家の中に吊らされ保管されているソルガムの種子
京都府出身。大学でアラビア語を専攻し、在学中にイエメンに留学。留学中に「アラブの春」と総称される民主化運動が始まり、ライフラインが脆弱化し、国が混乱に陥っていく様を目の当たりにする。卒業後は途上国・新興国の根幹を支えられるようなインフラ支援に携わりたいとの思いで、メーカーにて発電プラント事業を担当。退職後、現地の人々により近い距離で可能性が広がることに尽力したいという思いが大きくなり、2018年JVCに入職し、以降スーダンに駐在。イエメン事業立上げに参画し、2022年よりイエメン事業担当も務める。