【スーダン】度重なる退避を越えて私がやるべきこと 後編
スーダン事務所現地職員 モナ・ハッサンによる報告。JVC会報誌Trial & Error358号に掲載された記事を、一部編集してお伝えします。
戦闘が勃発したのは2023年4月。国境を越えて退避を続けたモナが、やっとポートスーダンにたどり着き、JVCの今中と合流しました。前編の続きをお届けします。
私の素晴らしい友人で、元JVCカドグリ事務所の職員だったモナ(私と同じ名前)についてお話ししましょう。
JVC在籍時、彼女は補習校や女性の菜園研修事業に携わっていました。現在もハルツーム州のRSF支配地域に住んでいます。
紛争の最前線で食料が不足し、学校が閉鎖されているなか、彼女は「地域の子どもたちの未来を奪うこと」に抗っています。地元の子どもたちのために小さなクラスを運営し、混乱の中でも学びながら平常心を取り戻す機会を提供しています。
さらに彼女は、地域の母親のための会合を企画し、母親たちが戦争を生き抜く中でのトラウマやストレスに対処し、家族のために強くいられるように励ましています。
元JVC職員のモナ
つい先月、彼女の妹が食料を求め外に出たところ、砲撃に巻き込まれ負傷してしまいました。
病院をたらい回しにされ、何日もかけてやっと別の州の病院にたどり着いた矢先に亡くなってしまいました。幼い子どもたちを残して…。下の子は母親の死を理解できていないのか、「RSFがいなくなったら、お母さんは戻ってくるの?」と聞いてきたそうです。
妹を失うという辛いことを経験した彼女。家に戻るときも、国軍とRSF双方の検問をくぐり抜ける必要があり、夜中に人気のないところを歩いて帰ってきました。
圧倒的な困難に直面しているにもかかわらず、コミュニティを支援するという彼女の決意は、レジリエンスと思いやりの力の真の証です。彼女は教育や精神的サポートを提供し、逆境に直面しても希望と強さを失っていません。
JVCも活動を遂行する上でたくさんの困難を抱えていますが、困難な立場に置かれた人々を支援するという私の決意は揺るぎません。
私が仕事を続ける理由は単純です。困っている人々を助けるという、深い道徳的義務を感じているからです。これは単なる仕事ではなく、私の使命なのです。
私の努力と行動が、最も助けを必要としている人々の生活に大きな変化をもたらすことができるんだ!という考えが、情熱と献身につながっています。
上に書いたような、私の周りの人々のレジリエンスにも大きく支えられています。筆舌に尽くしがたいような困難な状況に置かれても、彼らは決して希望の灯を消しません。
私も家を追われ、財産や、大切な家族や友人との思い出の場所を失ってしまいましたが、この先にどんな障害が待ちうけていようとも、前進し続けていきたいと思います。
ハルツーム出身。大学でイスラム法を学んだ後、弁護士資格を取得。複数の支援団体で勤務する傍ら大学院で博士課程を修了し、2011年からJVCに参加。紛争の影響を受けた人々が自分たちの権利を認識して獲得できるように、さらに行政や関係機関が各自の役割を果たして活性化することに貢献したい。週末は家庭菜園や親戚と協働しているNGOで活動。2016年、2017年にJVCの業務で来日経験あり。好きな日本食は広島で食べた広島焼き。