【パレスチナ現地レポート#07】無力感の先に
皆様こんにちは!JVC広報担当の佐藤です。2024年9月23日から10日間、現地視察のためイスラエル・パレスチナを訪ねてきました。パレスチナ現地レポートその7をお届けします。前回の記事はこちら
初日に東エルサレムを歩いた感想は「安全」。戦争をしている国とは思えないほど厳かで、平和な雰囲気がありました。
ただ、一見、安全に見えるこの場所にも入植地が増え、「いつか家を失うかもしれない」というプレッシャーを感じながら生活しなければなりません。
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平等な権利もないまま、じわじわと命や尊厳や土地を奪われていくという現実。分離壁を前に感じる、圧倒的な無力感。
私には、もう何もできないのではないだろうか…?
モヤモヤしながら出会ったのは、JVCの現地パートナー団体AWCの研修に参加していた女性たち。このような状況の中でも、自分にできることは何かを見つけて行動し、人生に「希望」を持ち続けている女性たちでした。
JVCが東エルサレムで行っている女性の生計向上とエンパワメント事業。女性たちの社会的・経済的自立を目指し、収入を得るための職業技術訓練と、自立に必要なライフスキルを身につける研修を実施しています。
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ヘアーカットの研修を受けたアーヤさん。
アーヤさんは息子さんの髪を切りに分離壁の西岸側まで行っていたそうですが、2023年10月以降の情勢で移動が難しくなり、連れて行けなくなりました。
自閉症をもつ息子さんはヘアサロンで髪を切るのが大変なので、特別なニーズのあるお子さんや家族に特化した、訪問式のサロンを始めたいと考え、男の子のヘアカットを勉強中とのこと。
講師の先生や他の受講生とのつながりができたことは大きな財産、と笑顔で語ってくれました。
アーヤさん(写真右)
JVCとともに活動を行う現地NGO・AWC(Al-Thouri Silwan Women's Center)は、パレスチナの女性たちによって運営されています。エルサレムには他にもパレスチナ人による団体がありますが、ほとんどが男性によって運営されています。
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AWC事務局長のアビールさんは言います。
彼女たちは常に、いつか家を失うかもしれないということを知っています。そんな中で、家族に希望を与え、少しでも人生を変えられるチャンスを与えることが重要なのです。
もちろん、すべてをコントロールすることはできません。私たちは占領下にあり、普通の国のように対処することはできないからです。
しかし、どんなに小さなことでも、彼女たちの日常生活に影響を与えることはできます。困難な状況でも生活を続けられるように、お互いに協力し合うことが必要なのです。
占領下にあり、普通の国のように過ごすことはできない。
でも、どんなに小さなことでも、変えることはできる。
力強く語ってくれた彼女の言葉を噛み締めながら、私たちは再び検問所を通り、ヨルダン川西岸地区に向かいました。
現地レポートはつづく…
佐藤未奈(広報/FR担当)
福島県出身。大学時代にフィリピンに留学し、人生で初めてストリートチルドレンに出会い、何かしたいと思いつつ無力感を感じる。大学卒業後は客室乗務員として勤務。国内線/国際線に乗務し、中東・ドバイにて10年間生活する。
不規則な生活で体調を崩し、人生を見直すため35歳で退職し帰国。アートが好きだったことから、京都の大学でデザインを学び、グラフィックデザイナー/イラストレーターに。絵本や広報物のデザインなどを手掛ける傍らプロボノとしてNGOに関わるうちに、NGOの広報に興味を持ち、2024年1月、JVCに入職。
イラストの代表作はフィリピンおさるのターシゃん。
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「JVCの中の人を知ろう!~佐藤未奈さん編~」