アフガニスタンならではのピースブックレットご紹介!
アフガニスタン事業では2017年4月より平和と非暴力の学び合い活動が始まりました。アフガニスタンでは、1979年の旧ソ連軍侵攻以来、40年近くにわたって紛争が絶えません。タリバンと政府軍による争い、そして最近では「IS」を名乗る勢力による自爆攻撃や襲撃事件も増えています。こうした社会情勢の中では武器や暴力が広がり、住民同士による殺傷事件も起こっています。アフガニスタンを平和な国に戻すためには、まず身近なところから争いをなくしていかなければなりません。JVCでは、この活動の一環として「平和な暮らしへの道(Road to peaceful life)」と題する配布物(ブックレット)を作成しました。ブックレットは、平和と非暴力のワークショップで資料として活用するとともに、地域住民に配って平和に関する意識を高めてもらうことをねらっています。このたびパシュトー語の原文を現地スタッフに英訳してもらい、それを和訳しました。どんな内容なのか、少しご紹介したいと思います。
『「争い」は、人間がいる限りどこにでも起こります。たとえば夫婦、親子、家族、親戚の間で、友だちの間で、学校で、地域で、そして広くは国の中や国際社会で起こります。』・・・と始まり、まず争いを解決する手段が分類されています。武力によるもの、公的機関や権力者など第三者による調停、そして当事者同士による議論と対話です。武力による解決は一時的なものです。力で押さえ込まれた側は、決して問題が解決されたとは思っていないので、将来力を得た時に再び争いを起こすでしょう。同じように、第三者による調停も、解決策が双方にとって本当に納得できるものでなければ、将来再び争いが起きる可能性があります。対話を通して争いの当事者双方が合意できる形で結論に達することができれば、それがベストな解決方法です。
こうしてブックレットは、交渉・和解・仲裁の手順や方法と注意事項について話が進んでいきます。アフガニスタンには、古くから地域の年長者(いわゆる長老)による集まりがあります。地域の問題は、行政の仕事であると同時に、伝統的にこうした長老の集まりで議論、決定されることも多いのです。長老が仲裁して地域の争いごとを納める風景がごく普通に見られます。上手な仲裁のやり方を学ぶことはとても大事なのですね。
また、アフガニスタンでは、自分の家族や両親、兄弟の家族など多くの親族が共同で暮らすことが普通で、一つの敷地に数十人が暮らすいわゆる大家族です。日本では核家族化が進み、また老若を問わず一人暮らしをする人も多くなりましたが、昔は親戚が近くに住むケースがよくありました。多くのメンバーが一緒に暮らすアフガンの大家族では、当然ながら争いがよく起こります。子どもやいとこ、嫁と姑、伯父の間など、多くの争いを納めるのが家長の役割で、ブックレットでは家族内の争いを解決する方法が説明されています。そのためには家長はふだんから構成メンバー一人一人の考えを聞き、行動に気を配ることが必要だと説かれています。特に、親戚が他の家庭のことに干渉することがないよう注意すべきだとも書かれています。家長は大変ですね。でもその責任を果たすからこそ、大家族を治める統治者として尊敬を受けるわけです。アフガニスタンの大家族は小さな国家のようです。社会の争いをなくすためにはまず家庭内の争いをなくすことから、という考えは、アフガニスタンでは現実的な意味を持っているように思えます。
もうひとつ、ブックレットで強調されているのが、他民族との共生です。アフガニスタンには少なくとも10以上の民族が暮らしており、言葉や文化、風習も異なります。争いをなくすためには、他民族への偏見をなくすことが必要です。すべての人は平等であると説くイスラムでは、偏見は罪とされています。民族と個人を同一視しない、善人と悪人はどの社会にもいる、という記述には納得させられます。
最後に、平和に関するアフガニスタンの小話を一つ。
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あるところに争いをやめたいと願う人々がいました。そこで人々は魔術師のところへ行き「魔術を使って争いや人殺しを止めてくれないか」とお願いしました。魔術師は「わかった」と言い、すべての武器を隠してしまいました。人々は喜び、少しの間、争いはなくなりました。でもしばらくすると人々は木で武器を作り争いを始めました。そこで人々は「木を隠してくれ」と魔術師に頼みました。魔術師はその通りにしましたが、人々は石や金属で次々に武器を作っては争いを続けました。そのたびに人々は魔術師に武器を隠してもらったので、ついに村には何も物がなくなってしまいました。人々はどうやったら何もなしで生活できるか話し合いましたが、魔術師は「テロリストは消せない」と言っていなくなりました。
皆が困っていると一人の男がある考えを話しました。それは、人々に平和と愛、協調と思いやりを教えることでした。他人にしたことは自分に返ってきます。もし人をしあわせにすれば、自分もしあわせになれます。もし人を傷つければ自分も傷つきます。人々は彼に同調し、他人を助け始めました。魔術師は隠していたものをすべて元に戻しましたが、人々は二度と他人を傷つけず、互いを助け合ってしあわせになりました。
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この小話には、互いに人を助け合うイスラムの精神が生きているように思います。このように、ブックレットには、随所にイスラムの教えが引用されており、生活の規範であるイスラムに基づいたアフガニスタンならではの「ピースブックレット」と言えるのではないでしょうか。
(平和なアフガニスタンを取り戻す!子どもたちへの教育環境も大切ですよね)
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