チャレンジ!ピース・アクションin『トラボラ』(前半)
2月のある日、東京事務所にいる私に、現地スタッフのサビルラからのスカイプ連絡が入りました。 「マキさん、いよいよだ!」と、テンションの高い声。
今日は私たちの進めているピース・アクションの活動の中でも特別な日。これまでの活動地、クズ・クナール郡の村人7人が、JVCスタッフとともに別の地域を訪問し、住民間で経験交流するのです!治安が悪く、人の移動自体にも困難が伴う中、"ホーム"を離れた場所での活動に、多くの準備を要したプログラムです。
しかも、訪問先は、ナンガルハル県の南に位置するパチェラガム郡、その中でもパキスタンとの国境沿いの険しい山岳地帯・「トラボラ」です(☆印)。「トラボラ」は、治安の悪さが嘆かれるナンガルハル県の中でも特に、政府軍の制圧が及ばず、これまでアルカーイダの司令官ウサマ・ビンラディン、タリバン、「IS」など様々な勢力が拠点を置くひときわ危険な場所となっていました。
(「トラボラ」地域は、険しい山岳地帯を挟んだすぐ南がパキスタン。ソ連侵攻の時代から武装勢力の拠点となっている。)
武装勢力や政府軍による戦闘・攻撃が頻発し、多くの住民の暮らしが破壊されてきたこの地域ほど、「平和」を求める人々はいないかもしれません。これまでも、クズ・クナールで行っていたJVCのピース・アクションに、パチェラガム出身者が積極的な参加をしてくれていました。
こちらから
ここ数ヶ月でパチェラガムでも政府軍が盛り返し、治安に一定の改善が見られたこと、住民からの強い思いがあったことから、セキュリティ情報を精査し、今ならば訪問することができると判断し、様々な安全対策を講じた上で、決行にこぎつけたのでした。
スカイプをかけてきたサビルラは、車で移動中でした。「今のところ、万事順調。無事にチェックポイントを通過しているよ。」隣にはスタッフ・アジマールと、クズ・クナールからの参加者イムランさんが同乗しています。
「もうすぐ、あの"トラボラ"地域に入る・・・そこには「IS」に参加した元戦闘員だっている。今日をきっかけに、彼らがピース・アクションに参加して、元"ファイター"が今度は"ピース・アンバサダー"になったら、それってすごくない!?今日はその第一歩になるかもしれない、マキさん!!」
サビルラの高揚した声から、新たな場所、しかも"トラボラ"の地に初めて踏み入れるという興奮が伝わってきました。一方のアジマールには少し不安な表情も伺えました。緊張感からか、意味もなく笑いが止まらなくなったりする場面も。(後から告げられたのですが、JVC内でもこの地域への訪問を躊躇するスタッフもいたそうです。留守番を希望したスタッフも。イムランさんもまた、友人らから、トラボラに行くことを止められたそうです。これまでも厳しい環境の中で経験を積んできたJVCスタッフにとってもそれくらい緊張するような訪問だったことがわかります。)東京で会話している私も手に汗握る、臨場感。
(移動中に連絡してきたスタッフとイムランさん(中央)。アジマールは緊張感からか、少し引きつった笑い・・・・。)
道すがら、郡境を取り締まる警察に止められました。治安の悪い地域ほど、多くの検問所が設けられます。JVCの車両をチェックして、持参していた私たちのピース・ブックレット を見つけ、「これは何だ?」とスタッフに問いました。このオフィサーは文字が読めなかったので、上司のところに見せに行きました。文字を読める上司がJVCの活動を理解し、このピース・ブックレットがほしいから、何冊か置いていって、と言ったそう!今日のワークショップで配るものだったので、一冊だけプレゼントすることにしました。思わぬ形で警察にもメッセージが伝わるなら、それも良いかもね、とスタッフと笑い合いました。
・・・車両を進め、ついに、当該地域に到着です。
(運転手がゆっくりと村の中を車両を進めていきます。)
(アジマール:(ついに来てしまった・・・))
「黒い洞窟」を意味するトラボラと呼ばれるこの場所は目と鼻の先がパキスタン。この険しい山岳地帯と洞窟の多い地形が、歴史的に様々な勢力の拠点となってきました。両国を分かつスピン・ガール山脈の頂点はなんと4,761m・・・!車を降りたスタッフたちは、そびえる山々を背景に、交流の場所に向かって歩きます。ピース・ブックレットを小脇に抱えたクズ・クナール代表のイムランさんやPatoo(マント)をまとった長老たちの姿が眩しい。さぁ、平和を語るのには象徴的な場所とも言えるトラボラで、どのような交流が生まれるのでしょうか。住民はもう、集まっているのでしょうか? 後半に続く。
(ワークショップの場所に向かって歩く、クズ・クナールからの住民とJVCスタッフ。(かっこいい))
(後ろに見えるのがスピン・ガール山脈)
(もうすぐ会場に到着です。)
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