【 村人物語 】診療所で少年に会う
JVCアフガニスタン現地スタッフのサビルラから、以下のようなエピソードが届きました。診療所で出会った一人の少年のお話です。
人には物語があり、誰もが苦労を背負っています。子どもは学校で無邪気に友だちと遊び、子どもらしく生きるものですが、世の中にはそうできない子どももいます。彼らは家族を支えるために大人と同じような考え方をしなければなりません。
私(=サビルラ:訳注)がゴレーク村の診療所に行った時のことです。一人の少年から診療の順番を聞かれました。自分は診療を受けに来たのではないと答えると、彼は少し恥ずかしそうにしていました。私は、彼をなごませようと思っていろいろ話しかけてみたのですが、なかなか打ち解けてくれません。それは彼が小さい時から重ねて来た苦労のためです。
彼はシャー・モハマド君といいます。父の名前はザレーン。クナール県の出身で今はJVCの活動地ナンガルハル県カチャラ村に住んでいるそうです。シャー・モハマド君は、自分の正確な誕生日も年齢も知りません。たぶん11〜12才くらいでしょうか。彼は家族といっしょに7年前にカチャラ村に引っ越してきました。彼は3番目の子どもで、小さいころから父親や家族の手伝いをしてきました。家では、羊や山羊、牛を飼っており、カチャラ村に来てからもその世話をしています。また川の対岸までボートで人を渡す仕事もしていて、一日30パキスタンルピーを稼いでいます。
シャー・モハマド君は家のために働かねばならないので、学校に行ったことはありません。家畜の世話をしたり、父親の農作業を手伝ったりしています。今日は具合が悪い弟を病院まで連れてきました。父親はいつも畑仕事で忙しいので、彼が小さい子どものめんどうを見ています。
彼は、本当は学校に行って勉強がしたかったそうです。でもどうして自分が学校に行けなかったかわからないと言います。その話しぶりはまるで20歳の大人のようで、とてもこの年齢の子どもとは思えません。「食べ物を買うお金は持っているの」と聞いてみたら、「持っていない」と言うので、私は売店で何か買って弟といっしょに食べるようにと、お金をあげました。そして「勉強は大事だよ、一生懸命勉強すれば医者にだってなれるし、地位もお金も得られるんだから。家に帰ったらお父さんや家族に勉強がしたいと言ってごらん」と彼に伝えました。「うん、そうする」と彼は約束しました。
最近、私は同じカチャラ村出身のJVCスタッフ、ファザル・ハクに、その子のお父さんとなぜ彼を学校に行かせないのか話してみたいと頼みました。そして今日、そのお父さんと電話で話したところ、シャー・モハマド君は別の村の宗教学校で勉強を始めたということでした。
サビルラ・メムラワル 執筆(竹村謙一/翻訳)
竹村 謙一 (アフガニスタン事業担当)
宮城県出身。長年、高圧実験物理学に従事し、元素の高圧力下の結晶構造変化を研究する。5年前に定年退職、その後も国際的な関わりを持ちたいと2015年度JVCインターンに応募。(自分にとって)未知の世界を知りたいという好奇心(研究にも通じる)からアフガニスタン事業を選ぶ。翌年にはJVC英語ボランティアチームを立ち上げて英語サイトの充実に関わってきた。2017年6月よりアフガニスタン事業担当。週末には貸し農園で野菜栽培にいそしむ。リコーダー演奏が趣味。
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