避難先でも続く暮らしの営み②
今回の記事では、前回に引き続き、イエメンのラフバ避難民キャンプとラジュヒ避難民キャンプでの住民の暮らしについてお伝えします。内戦により故郷を追われた人々が身を寄せるこれらの地区で、JVCは子ども広場のプロジェクトを行っています。
それぞれの避難民キャンプには、同じ地域の出身者が集まっていることが多いです。その場合、リーダー的役割の人を中心に避難先でも故郷のコミュニティが維持されています。例えばラフバのアブドゥルアリームさんは、「この役割を自分が担わなかったらコミュニティがまとまらない」という強い責任感の下、怪我や病気をした子どもたちの看病やNGOとの連絡役などを務めています。
ラフバ避難民キャンプでリーダー的役割を果たすアブドゥルアリームさん
またラジュヒのムヒーブさんは、住民主体で井戸の水をきれいにしたという話をしてくださいました。井戸の近くが不潔で下痢などが発生していた状況に対して、以前であれば何でもNGOに頼っていたところを、このときは住民の寄付でセメントや備品などを集めてクリーニングキャンペーンを実施したそうです。
ラジュヒ避難民キャンプの代表を自負するムヒーブさん
コミュニティに大きな貢献をしているムヒーブさんですが、「自分は他の避難民のことも代表していると感じるので、個人的に幸せなことがあっても幸せとは思えない」「やはり自分の家でないと安全を感じられない」と話していました。その言葉からは、故郷を追われた人々の苦しい胸の内が窺えます。
子ども広場に通う子どもたちの中にも、そこで遊ぶ前後には家の手伝いといった仕事をする子が多いです。14歳のガイスくんも、学校の長期休み中にタイズのレストランでウェイターとして働いているといいます。
高校生のガイスくんは忙しい日々を前向きに生きている
しかし、子どもたちは十人十色の夢を語ってくれました。ガイスくんは空いた時間でTikTokにコメディ動画を投稿していて、将来はサッカー選手になりたいのだと言います。イルティザークさんの夢は、車を買って友達と一緒に乗ることです。アウサーフさんは、自分が持っているものや知っていることを他の子にも教えてあげたいので、将来は先生になりたいのだそうです。
友達とルールを作って遊ぶのが好きと語るアウサーフさん。遊び場を設置したJVCに感謝の意を伝えてくれました
大人も子どもたちの夢を応援しています。サーリムさんは、医者になって困っている人を助けたいのだという息子ムハンマドくんに、学び続けていい将来を見つけてほしいと思っています。
サーリムさん(右)・ムハンマドくん(左)親子
子ども広場のファシリテーターからは、紛争下で育った自分たちと違い、子どもたちには子どもらしく育ってほしいという願いが聞かれました。
ラフバの子ども広場でファシリテーターを務めるイフティヤールさんは、ここでは子どもたちが戦争のことを忘れられると言います。
子ども広場は厳しい生活を送る子どもたちの、明るい将来への希望を繋いでいるのです。
そんな子ども広場は、どんな人にも開かれた場所でなくてはなりません。ここには障がいを持つ子も通っています。
ラフバのキャンプには、障がいを持つ子が5人います。そのうち耳の聞こえない2人の男の子は、子ども広場でそれぞれ1人で遊んでいるものの、いじめられることもなく楽しく過ごしているといいます。一方、以前は叫んだり暴れたりしていた子が、ファシリテーターと2人で過ごすところから始めて、やがてみんなと遊べるようにまでなったという出来事もありました。
研修を活かして障がいのある子と接したファシリテーター・イフティヤールさん
ラジュヒにも、歩行困難・聴覚障がい・弱視などの障がいを持つ子が何人かいるそうです。ここでもやはり彼らがいじめられることはなく、他の子とも遊べるようにファシリテーターが慣らすという工夫もなされています。
障がいのある子との接し方について話すファシリテーター・ハムダさん
障がい者は、人道危機が起きた際に最も脆弱な立場に置かれる存在の一つです。JVCは、誰1人取り残されないコミュニティの構築を目指して、子ども広場の運営を続けていきます。
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