【ガザ】エル・ワファ病院のその後:避難と現在の状況
パレスチナ事業の小林です。
ガザ地区での軍事衝突勃発の直後に支援を決めた、エル・ワファ病院。
JVCも過去に協働したことのある、身寄りのないお年寄りや重度障がい者の方が入院する病院です。
非常事態下で、情報の入りづらい状況が続いていましたが、ようやく少しまとまったやりとりができるようになり、現地の状況が詳しくわかりましたので、ご報告します。
エル・ワファ病院は、ガザ市南部のイスラエル軍に包囲されている地域にあります。
今回、隣接するモスクが大規模な攻撃を受けたことにより、患者も含めて避難を余儀なくされました。
病院は4回の攻撃を受け、さらにイスラエル軍から「隣接するモスクを破壊するので退避するように」と電話で言われたそうです。
空爆で瓦礫の山となったまちの中を、お年寄りや重度障がい者の方が入院する病院の患者に、どうやって退避しろというのでしょうか?
事前に連絡をすればいいという話ではないでしょう。
「ほとんどの患者に麻痺があり動かすことは無理だ」と伝えると、「モスクだけでも破壊しなければならない」と言われたそうです。
そしてその30分後、モスクは爆撃によって破壊されたのです。
このとき病院には約80名の患者さんがおられ、医師1名が亡くなりました。
2023年10月7日以前のエル・ワファ病院。8年かけて2022年5月に建て直したばかりでした
エル・ワファ病院の近くで行われた爆撃
この状況を受け、エル・ワファ病院は、既に機能せず使われていなかったジャファ病院(ガザ中部)などに患者さんを移送することを決めました。
しかし、国際組織や他の病院に「戦闘地域なので救急車は出せない」と断られたため、自分たちが所有するたった1台の救急車と乗用車を使い、移送のため、空爆の危険と隣り合わせの中何度も往復しなければなりませんでした。
患者さんの移送時の様子
電気もなく医療機器なども機能しない中での移送、環境の変化や攻撃への恐怖は、高齢や重度の障がいのある患者さんにとっては非常に大きなストレスとなりました。
移送した患者さんのうち、自ら命を絶った1名を含めて11名の方が亡くなりました。
亡くなった方々のご遺体は、複数名の方を一緒に埋葬せざるを得なかったといいます。
10月7日以降、ガザでは3万4千人以上が亡くなったと報告されていますが(2024年4月末時点)、このような形で亡くなった方たちを含めれば、もっと多くの人々の命が奪われていることになります。
現在は、移送してきた患者さんと別の病院で手術などを受けてリハビリや長期治療が必要となった患者さんを、1フロア・15室で受け入れています。移動には危険が伴うため、医師4名、看護師25名、マネジメントスタッフ4名が、1週間交代で泊まり込みで勤務しています。
これまでに爆撃により2名のスタッフが亡くなり、残っている多くのスタッフも、家族の安否すらもわからない中、仕事を続けています。
必要最低限の医薬品はUNICEF等から提供されていますが、医療用の消耗品などの物資が必要です。また、地域の住民の方たちが食べ物や物資を含め支援してくれていますが、JVCも出来る限りの支援を続ける予定です。
エル・ワファ病院に隣接する、爆撃されたモスク
200日以上にわたる攻撃によって、人々は恐怖や未来への不安などにさらされ続けており、病床にいるお年寄りや患者さんはもちろんのこと、人々への心理的影響は深刻さを増しており、医療従事者の疲労も限界を超えています。
また、病院などの医療関係施設、宗教施設を狙った攻撃は、明らかに国際人道法違反であり、JVCは一刻も早い停戦とあわせて国際人道法の遵守等を求めて、パレスチナ・ガザ情勢に関連するアドボカシーを継続します。
*5/8(水)外務省に要請文を提出しました:一刻も早いガザ停戦に向け、さらに強い働きかけを求めます
この数カ月、自らも命の危険がある中で患者のケアを続けてきたエル・ワファ病院。
どうしても連絡がコンスタントにとりにくい状況があり、詳細の報告がオンタイムで出せず、皆さまにご心配をお掛けしたこともあったと思います。
できる限り最新の情報を皆様に報告できればと思っておりますが、このような非常事態下であるということをご理解いただければ大変助かります。
今後も、エル・ワファ病院の状況や活動について、報告を続けてまいります。
いつもJVCガザ緊急支援にご協力いただき、まことにありがとうございます。
活動は皆様のご寄付に支えられています。
引き続き、ガザ緊急支援にご協力をお願いいたします。
特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター(JVC)
〒110-8605 東京都台東区上野5-22-1 東鈴ビル4F
電話:03‐3834-2388 FAX:03-3835-0519
メール:info@ngo-jvc.net (担当:小林)
ご寄付の10%は管理費に充てさせていただきます。
世界はあなたの小さな一歩から大きく変わります。
私たちが世界をより良くする活動は、
皆さまのご寄付・ご支援に支えられています。
日本国際ボランティアセンターでは
マンスリーサポーターや物品寄付をはじめとする様々なご支援を受け付けています。
良い世界の実現のために私たちの活動を応援してください。
JVCのことをまだ知らない、あまり知らない方はまずはこちらをご覧ください。