スタッフインタビュー「JVCの中の人を知ろう!~今中航さん編~」
こんにちは。JVCインターンの佐野と申します。
このシリーズでは、インターンがJVCスタッフのキャリアに焦点を当てて、NGO職員になるまでの軌跡に迫ります。将来、国際協力を仕事にしたいと思っている人に向けて何かヒントになれば幸いです。
(インタビューでの写真)
はじめに:今中航さんってどんな人?
2018年から現地駐在員として、スーダン事務所で勤務していらっしゃる職員さんです。
大学でアラビア語を専攻し、在学中にイエメンに1年間留学。卒業後、大手重工業メーカーでの勤務を経て、日本語教師の資格を取得し、日本語の教鞭を執りつつ翻訳会社にも勤務。エジプト駐在後にJVCに入職されました。
(イエメンで旧市街の商人たちと食事)
早速、気さくでお話し上手な今中さんへのインタビューを皆さんにお届けします。
自分で言うのもあれですが、「優しい」と思います(笑)
佐野:私もそう思います!(笑)
バレーボールです。高校・大学でバレーに所属していて、スーダンでも週に2回ほどスーダン人や外国人で集まって練習や試合をしています。
(JVCが支援する学校でもバレーボールが人気!)
サッカーには負けますが、スーダンでバレーは人気のあるスポーツです。身体能力の高い人もいてなかなか上手ですよ。
まず、一番は外国のことを学びたいと思いました。せっかくなので人がやってなさそうな言語かつ英語のアルファベットを使用しない言語がいいと思っていました。
それと、大学受験のリスニング試験対策のために、英語のドキュメンタリー番組を見ていたのですが、アラブ世界を扱う番組が多かったことも、きっかけです。
初めは英語の勉強のために見ていただけでしたが、アラビア文字に神秘的な何かを感じ、「なんとなく戦争やテロが多くて怖そう」というイメージに対しても、実際人々はどんな生活をしているのか、何を考えているのか、イスラム教とはどういうものなのかと興味を持ちました。
『人生は一回』
やりたいなと思ったことや少しでも興味があるなら手を伸ばしてみたり、足を運んでみたらいいと思うタイプです。
(中国東チベットでの標高4000mの尼層の街で信仰心に驚く)
例えば気になるイベントがあったとして、もしかしたらそれは楽しくないかもしれないけど、そこで気の合う人に出会うかもしれないし、何が起こるのか分からないのが人生です。
なので「人生は一回」だと思って興味が少しでもあるのなら、やってみるのがいいかなと、昔から思っています。
そもそも重工業のメーカーに就職したのは、イエメン留学がきっかけの一つでした。
留学中「アラブの春」が始まり、国が混沌としている中、電力を始めとした基本的なインフラが崩壊していき、失業する人や生活に困窮する人を間近で見てきました。なのでインフラ支援など国を支えるような大規模なことがしたいと思ったんです。
(イエメン留学中に「アラブの春」が始まった)
その会社では、火力発電などの発電事業のアフターサービスの部門で3年半働きました。世界各地に発電所を建設したり、建設後のサポートをして電力供給を支えることは意義深いことだと感じていましたし、中東からのお客様とは大学で学んだアラビア語を使って話す機会もあり、充実した日々を送っていました。
しかしよく考えると当たり前のことかもしれないですが、商流の関係もあり、電力の恩恵を受けている人々を直接見たことはなく、本当に役立っているのか実感することはほとんどなかったです。もっと近い距離で人々のために何かできるような仕事がしたい、と思う気持ちが強くなっていきました。
また技術が強い会社だったこともあり、自分も何か技術をつけて仕事がしたかったのと、外国語を学ぶ大変さ・楽しさを知っていること、昔から教えることが好きだったこともあり、日本語教師の資格を取ることにしました。東京の日本語学校で外国人の学生に教えたことは今振り返ってもとても貴重な経験です。翻訳会社の仕事でエジプトに住んでいたときも、仕事終わりに日本語を教えていました。
普段は首都のハルツーム事務所で働いています。
活動地は、以下の通りです。
・南コルドファン州の政府地域カドグリ
・南コルドファン州反政府組織支配地域
・南スーダンのイーダ難民キャンプ
南コルドファン州のカドグリでは、紛争の影響や家計の事情で学校に行っていない子どもたちに補習校の運営支援をしています。
授業を6か月実施するだけではなく、コミュニティにいる先生や行政と連携して、修了後も正規の学校に通い続けることができるよう、不就学の要因となる障壁を取り除き、保護者への啓発も行っています。
南コルドファン州反政府組織支配地域では支援がほとんど入らない地域ということもあり、最もニーズの高い給水支援を実施しています。
紛争により井戸が破壊されたり、住民が避難したまま放置されて故障したりして、清潔な水を入手するのにとてつもない時間と労力がかかります。そういった取り残された地域で井戸の修理や維持・管理していくための仕組みづくりをしています。
南スーダンのイーダ難民キャンプは、紛争時に国境を超えて避難した人々が住み始めて作ったキャンプです。紛争で父親が亡くなってしまった、家族はいるが離れ離れになっている、母親が病気等の理由で、学校に行けなかったり、マーケットで働いていたりと、最も脆弱な立場にいる子どもに対して、就学支援を行っています。
学費、文房具、衛生用品、給食を提供し、休日はスポーツ、英語のクラス、家庭菜園などの課外クラスを運営し、子どもたちを保護し、子どもらしい時間を過ごす場を提供しています。
(イーダ難民キャンプの幼稚園の保護者に話を聞く)
治安悪化やセキュリティに関して抗うことができないことです。
例えばですが、どれだけ立派な校舎や井戸を建設しても、補習校や職業訓練を運営していても、紛争や武力衝突が発生すると、支援したインフラが破壊されたり、避難民が発生したり、活動すること自体が困難になります。
特にJVCの活動地である南コルドファンではこのようなことを幾度か経験してきています。特に2020年のカドグリでの武力衝突では活動地が略奪に遭い、補習校も場所を移転せざるを得なかったですが、空白期間が出来たせいで来れなくなった生徒たちも多数います。
積み重ねてきたことが一瞬にして崩れ去るのが紛争の怖いところです。
なのでこうしたことが起こらないような取り組みも非常に重要で、活動にもそういった要素を組み込んでいますが、一朝一夕で成果が現れるものでもありません。
補習校支援では、修了したほとんどの子どもが朝の学校で継続して勉強しています。その子たちの弟妹も同様に勉強するようになったのを見ると、成果が出ているなと思います。
また、職業訓練に参加した若者が工房で働き続けていたり、自分の集落で工房を開いて働いていたりするのです。
全部が全部上手くいくわけではもちろんないけど、一人一人の生活が変わったり、自己肯定感が上がっている様子を感じるときはやはり嬉しいです。
当たり前のことかもしれませんが、まず現地の人々の声や行動を尊重することです。つい活動を計画したり、修正する際に「こうしたらいいんじゃないのかな」と思い提案したくなりますが、ぐっと我慢して、まずは住民や現地職員に任せています。
何十年も自分たちがここにいるわけではないので、現場だけで解決するのが持続性を考慮すると最適です。しかし、課題があるから遠いスーダンまで働きにきているわけなので、どういった関与の仕方が現地の人々の役に立つのか日々葛藤しながら活動しています。
スーダンにいると政治的に不安定なので銃撃などもあるのですが、本当に命の危険を感じたのは、ハルツーム事務所で火事が起こったときです。事務所は9階立てビルの最上階の部屋だったのですが、異臭を感じて扉を開けると下から煙がモクモクと入ってきました。
急いで貴重品を持ち、お祈り用のマットを口に当てて、屋上に避難しようとしましたが、屋上への扉に鍵がかかっていたのです。力づくで破壊しましたが、屋上に避難してからも、煙が勢いよく出ていて、火元も分からないし、建物ごと全部焼かれるのではないかと思いました。当時事務所に1人だったので、色々な人に電話をかけて状況を伝えようとしました。でも焦っていて「ファイヤー!!」という言葉しか出てきませんでした(笑)
結局原因はビルの地下にある機器の過電流によるショートで、火はほとんど出ていなかったので大丈夫でしたが、その時は本当に「死ぬかも、、、」と思いましたね。
個人的に、中東は比較的治安がいいイメージがあります。強盗や殺人といった凶悪犯罪が少ないので、危険な目にあったことはありません。安全で歩きやすい地域だと思います。
(イエメンで住んでいたサナア旧市街の夜)
イエメンとスーダンがすごく好きで、活動自体も満足をもってやっています。
その中でもイエメンへのこだわりを強く持っています。本当に色んな人に良くしてもらい、思い出もたくさんあって、自分の人生を豊かにしてくれたところです。
それが今戦争により、基本的な生活を送るのが大変で、イエメンを出たいという人も沢山います。そういったイエメンの人々に、どういう形でも何か役に立つようなことが出来たらと思っています。国際協力という手段ではなかったとしても、そこは自分の中で大事にしていて、ずっと思い続けていることです。
(カドグリ事務所のスタッフは穏やかで真面目)
何でも挑戦するということは、簡単なようですごく勇気がいることです。しかしこの好奇心が、今中さんの原動力の一つになっているのかもしれません。
個人的には中東は治安がそんなに悪くないということに驚きました。お話の中に出てきたように、私も正直中東には「怖そう」という印象を抱いていました。しかしそのイメージがこのインタビューを通して、かなり変わりました。
活動内で難しさを感じる場面もすごくリアルで、現地駐在員ならではの貴重なお話を聞くことができました。でもそのお話を明るく話してくださる様子から、その分日々やりがいも感じられるのだろうな、と思いました。
優しさと明るさの中に、ぶれない軸を持つ強さを感じる今中さん。今回は素敵なお話、ありがとうございました!!
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