スタッフインタビュー「JVCの中の人を知ろう!~大村真理子さん編~」
こんにちは、インターンの佐野、中村、沓掛です。
今回はインターン生3人で、JVC広報担当の大村真理子さんに、対面でインタビューをさせていただきました!
大村さんは転勤族のご家庭に生まれ、子ども時代はバングラデシュ、シンガポールで過ごし、特にシンガポールは小学校生活のほとんどを過ごした思い出の場所だそうです。
多様な宗教と文化に触れ帰国され、「地球のどこに行っても自分の腕で生きられるようになりたい」と美容師免許を取得されたのち、小さい頃、自分が様々な国の人に助けてもらったことが忘れられず、「少しは恩返ししたい」と、社会人からJVCインターンに応募し、働きながら1年間、2013年度広報インターンを務められました。
その後、2014年度からはJVCの正職員となり広報担当を務められ、その後2017年から2022年まではカンボジア事業現地代表としてカンボジアに駐在されました。
帰任後は一度退職し、大学に編入して業務委託で様々な仕事をこなしつつ、2024年、大学卒業とともに再びJVCの正職員に復帰されています。
こうして経歴を見ただけでも聞いてみたいことがいっぱいです...。
それでは早速インタビューに入っていきましょう!大村さん、よろしくお願いします!
大村さん:刺し子が大好きで、修行中です。
【写真】刺し子(練習中)
*刺し子:日本に古くからある伝統手芸。衣服の補強や保温のために重ねた布を刺し縫いしたのが始まりです。
もともと手仕事が大好きで、刺し子でいうと、インドのカンタも好きなんです。
【写真】インドの刺し子「カンタ」(自由と愛情の刺し子「カンタ」をご存知ですか?【望月真理 カンタ展】 第1回 - 読みもの | 石見銀山 群言堂 公式サイト │ オンラインストア (gungendo.co.jp))
自分の手でもこういうものを生み出したいなあと思っていて、足を骨折して動けなくなった時に、刺し子なら上半身だけでできる!と気付いて、挑戦したのが自分でもやるようになったきっかけです。
世界の手仕事って本当に素晴らしくて、例えばこれらも!
【写真】大村さんの私物。大小ピンクのケースは、どちらも漁業用の網のリサイクルだそう。黒いお財布のほか、下にあるカラフルな柄のものはパレスチナ・ガザのハンドメイド。どれも可愛くて「どこで買ったんですか?」と会話のきっかけになりそう...!
ーここでクイズが始まりました。
大村さん:この黒いお財布の柄は何で出来ているでしょう?
インターン:うーん、分からない…植物…??ビニール・・・?
大村さん:正解は…ゴミ袋!
インターン:えーーー!こんな素敵なものになるんですか…すごい!
大村さん:でしょでしょ?ゴミ袋を手で編んでいて、カンボジアで買いました。漁業用の網を使ったポーチもカンボジアで。世界中のこういうものを見ているだけで幸せな気持ちになります。
エコなだけでなく可愛くて機能的、「こんな素敵な商品が世の中にあるのか~!」とインターン生一同、興味津々でした!
1つ目の質問から面白いお話を沢山してくださる大村さん。
どんどん質問に移らせていただきます…!
大村さん:小学校の頃シンガポールに住んでいた時に、色々な国の人にずっと助けられてきた経験があって、今思えばその時から、いずれ自分も恩返しをしたいと思っていました。
この想いは結果として、国際協力の世界に関心を持つきっかけの一つとなったかな。
シンガポールは多民族国家で色々な文化・宗教の人と接する機会がありました。世界には色々な人がいるんだな、面白いから、将来も色々な人がいる環境で生きていきたいなと思うようになりました。
大村さん:生活の全てが面白くて、嫌なことは一つも無かったです。
一つ、母に言われた言葉で印象的なものがあって、私が当時「シンガポールって外国の人が多いよね」と母に言ったら、「ここではあなたが外国人。日本や日本人だけを中心に考えることはやめなさい。」と言われたんです。
その時はどういうことか分からなかったのですが、少し経ってその意味が分かり、自分の中でその言葉が腑に落ちた感覚もあって、こういう捉え方の変化を面白いと感じました。
【写真】インタビュー中の大村さん
大村さん:あまり聞かないよねえ(笑)
「キャリア」という観点ではあまり考えた事が無いんです。その時その時動いていたら、いつの間にかおさまる所におさまっていた、という感覚です。
美容師を選んだ理由は、「世界のどこに行っても、自分の腕だけで生き、その土地の人とコミュニケーションがとれるようになりたい」と思ったからです。世界中の人と働ける技術が欲しかった。
専門学校卒業後は国家試験を経て、表参道で楽しく働いていました。
【写真】友人の結婚式のヘアメイク(右が大村さん)
ただ家庭の事情で勤めていた美容室を退職することとなり、その後はやっぱり興味もあって海外に行こうかな?と思っていたのですが、色々縁があって、誘われて一般企業の営業職に転職したんです。
企業で働くことも新鮮で楽しくて、気付いたら10年弱が経っていました。でもある時、自分の中で「一旦やり切ったな」と思えるタイミングがあって、その日の夜に「海外 ボランティア」か何かで検索して、たまたま見つけたJVCのインターンに応募しました。
「NGO」も「JVC」も全然何も知りませんでした。
本当にたまたま。
小学校の時にラッキーナンバーが17だと勝手に決めてたんですけど、当時、NGOが上から順に羅列されているサイトがあって、全部見るのが大変なので、手始めに17番目を開いて、それがJVCでした(笑)
ただただ、縁があったのだなと思っています。ゼロから厳しく愛情を持って育ててもらったので、偶然でもJVCを選んだ自分の嗅覚を褒めたいです!
【写真】2013年インターン時に訪れたカンボジア事業地。まさかその後自分が働くことになるとは!
インターン面接に受かって、企業で働きながら有給を使って1年間インターンをしていましたが、その期間が終わる頃、職員を募集しているというお話があって、正職員になりました。
大村さん:常に「本当にそうだろうか?」と問う姿勢に驚きました。
会社員時代には考えていないことの連続で、インターン時代は、「そこまで考えなければいけないのか」という驚きと楽しさの連続でした。
例えば前の事務所が入っていたビルでは、定期的にビル全体に殺虫剤を撒くことがありました。当時、インターンとして参加していた事務所の全体会議で、「殺虫剤の成分について議論しないで、事務所に散布することを決めていいのか」というようなことが話されていたんです。
JVCが掲げるビジョンの一つに「自然と共存」というものがありますが、そこまでこだわっているのか・・・と、かなり衝撃を受けたことを覚えています。とんでもない所に来たと思いました(笑)
JVCで様々な情報に触れて視野が広がったと思います。情報をただ鵜呑みにするのではなく、自分の頭で一つ一つ「どう思うか」を考えるようになりました。
インターン:確かにそうですね。根本について考える姿勢の強さとその大切さについて、私もいつもJVCの方々や事業内容から学んでいます。
大村さん:約5年広報グループに勤務し、支援者の方へのご報告や新たな関係づくりなど、JVCの活動を外に伝えて広げる業務を担当してきました。
その後、約5年駐在したカンボジア事業では、カンボジア人スタッフとともに、農業をベースにした活動を実施してきました。
【写真】カンボジア駐在時のひとコマ。実際の工程を自分でも確認したく、ハーブを加工する研修に参加
カンボジア事業は、JVCが発足した1980年代から続く事業でした(2021年度に終了)。20年以上勤めるカンボジア人スタッフや過去の事業地に暮らす人、私が駐在した村の方々の暮らしの変化や課題を直に見聞きし、実際に様々な変化を自分の目で見ることができたことはとても大きなことでした。
例えば「子どもに教育の機会を与えられた」、「ずっと買えなかった自転車が買えた」、「おかずを買えるようになった」などの村の人の声が聞けるのは本当に嬉しかったし、活動を支えてくれている日本の支援者の皆さんに早く伝えたい!といつも思っていました。
(大村さんがカンボジア事業終了に伴い有志メンバーで制作した動画はこちら)
日本に戻った現在は広報として、事業の発信をはじめとした幅広い業務を担当しています。直接支援者の方とお話できる時間が好きですね。対面でお会いすることはもちろん、2023年10月のガザ危機の頃からメインで更新を担当しているXも様々なやり取りが生まれて、やりがいがあります。
少しでも共にアクションをとる人を増やしたいという思いでやっているので、「〇〇を見て寄付しました」という報告が届くのは嬉しいです。
以前、古本を通じた寄付キャンペーンを実施した時に、学校全体に呼びかけて古本を集めてくれた生徒さんがいましたが、その後、「将来大村さんのような仕事に就きたい」と書かれた手紙が事務所に届いたことがありました。
【写真】届いた手紙
その後、親御さんとお話する機会があったのですが、学校に呼びかけて古本を集めたその経験が大きな自信になっていて、将来の夢も明確になり、とても前向きに学校生活を送るようになったということを聞いて、見えないところでも、そして、今見える結果だけでなくても、未来に繋がっている「何か」ってあるんだなって感じています。
この仕事は未来への種まきみたいだなと思う部分があります。次世代にバトンを渡したいという気持ちも強いです。いつか知らないどこかで花開くことを想像して、それが自分の中で密かな楽しみになっています。
大村さん:もし自分が村の人だったらと考えた時に、突然知らない人が来て「一緒に生活を良くしましょう」と言われても怖いと思ったり、忙しくて話を聞く時間がないかもということを想像するのを忘れないようにしていました。
また、村の方に「まりこ、ありがとう」と言われた際、私はここにいるだけだ、と毎回伝えるようにしていました。
目の前にいるのは駐在員である私とカンボジア人スタッフですが、見えないところで何千人・・・それ以上の人数の人が寄付など様々な形でサポートしてくれていることを伝えていました。自分が支援を受ける側だったら、大勢の人が応援してくれているというのは、一つの心の支えにもなるのではないかと感じています。
寄付って人の気持ち、思い、関心の集合体だと思うんです。「あなたは1人じゃないです」というメッセージでもあるんじゃないかなって思っています。
インターン:そしてそのメッセージを繋げるのが、NGO職員なのかもしれないですね。
【写真】苦楽をともにしたカンボジア人スタッフたちと
大村さん:結局は人と人のコミュニケーションなので、人間同士の関係づくりが大事なのかなと思います。
「貧困地域で暮らす人々」という字面だけで想像したり考えたりせず、人には様々な側面があるので、私も本当にたくさん、カンボジアでの暮らしをサポートしてもらっていましたし、共に考え、支え合う仲間とつくりあげる場、という感じです。
【写真】カンボジア駐在時、集めたデータを基にスタッフと会議中
また、大切な寄付をどう使えば最大限活かせるのかということ。カンボジアに行く前に5年間広報として働いていたおかげで、寄付金がどれだけ貴重なものか、身をもって実感していました。託していただいている責任を背負っているという自覚を強く持って、日々過ごしていました。
大村さん:自分の「当たり前」を捨てることです。
例えば研修の開始時間を決めても、どうしても時間通りに来ない人がいて、「なんでだろう」と思うじゃないですか。
村の暮らしを見てみると、そもそも家には時計がなくて、携帯電話を持っていない人もいる。時間で暮らしていないんですね。「〇時」というのはこちらの価値観でしかないわけです。自分の当たり前って全然「当たり前」でないので、そういうものは全部捨てて、0から考えるようにしていました。楽しかったです。
文化が違う相手と働く時には、相手を想像し、相手に対して自分の常識や「きっとこうだろう」というフィルターをかけないことが重要だと思います。
【写真】カンボジア駐在時、村のお家で休憩中
あとは、「後回しにしないこと」。
村を周って調査をしていた時に、非常に生活状況が厳しい方がいたんです。その時は時間もなく長く話せなかったのですが気になっていて、「今度ゆっくり時間をつくって行こう」ってメモをしていました。
その後、時間をつくって詳しく話を聞きに行ったら、その人は既に亡くなっていました。
「今度」とか「次」って、当たり前にないんだということを強く感じた経験です。
JVCとしてのカンボジアでの活動は2021年度で終了していますが、カンボジアで縁ができた村の人たちと今度は何ができるか、と考えている時が楽しいです。
事業は終わっても皆さんの生活は続くので、村の皆さんがやりたいと思ってくれていれば、また一緒に何かがしたいと思っています。元事業地にも定期的に通っていて、活動がその後どうなっているか確認したり、生活の様子を聞いたりしています。
学業がひと段落して自分の時間がまた作れそうなので、少しずつ始動していきたいです。
【写真】日本で売られている、カンボジアの元事業地で生産され続けているドライハーブを使った商品。大村さんは輸入アレンジなどをしているそう!(詳細はこちら)
「無駄を愛す」
座右の銘と言われると難しいですが、コスパ、タイパが叫ばれる時代の中、傍から見たら「無駄」だとされることに、そこでずっと大切に育まれてきた文化や、形のない宝物が存在することがあると感じます。
効率的に物事を考えることは大事である一方で、カットしようとしている対象が「本当に失くしていいものなのか?」という視点は常に忘れずに物事を考えていきたいと思っています。
大村さん:「あきらめないこと!」
「自分にはできない」と自分の限界を決め過ぎずに、諦める前にまず、挑戦してみることが何より大事だと思います。考えすぎて動けなくなるよりも、まず行動してみる。
笑われても、恥ずかしい思いをしても、それも一度きりの自分の人生だって思ってます。
素晴らしいキャリアを持つ方はたくさんいるので、キャリアについてはそちらを参考にしていただいて、私は、「こんな人もいるんだ」という安心材料になれたらいいなと思います(笑)
(大村さんを囲んで。左:中村、中央:沓掛、右:佐野)
今回は、自分の思いに正直にキャリアを築いてきた大村さんの、明るい笑顔と、その裏で続いてきた葛藤に迫ることができたインタビューだったのではないかと思います!
「現地の方々の本当に必要なものは何か」
「相手は何を感じて、どういう文化の中で生きているのか」
妥協せずに考え抜き、相手の立場に立ち続けてきたその姿勢が印象的でした。
支援の本質や、どうすれば支援の輪を広げられるか、今でも試行錯誤を繰り返しながら仕事をしているということがとても伝わってきました。
大村さんをはじめ、JVCスタッフの方々はインターンが多くのことを吸収できるように、考える機会をくれたり、失敗をしてしまったらそこから学ばせようとしてくれます。
今回のインタビューでも、大村さんご自身がそのようにして学んできた経験を元に、意見を聞いてくれたり考えさせてくれたり、忘れられない時間となりました。
大村さんとこうやって時間をとってお話しさせていただくことは初めてだったのですが、「色々なことに気づき、視野を広げ、考えていくことが好きな方」という印象を受けました。
つい引き込まれるような明るい笑顔と人のために考え抜く力で、障害を乗り越えていく様子がお話を聞いていて伝わってきました。
面白いご経歴やこれからの展望、「次世代にバトンを渡したい」という想いを強く持つ大村さんだからこそのお話もしていると、インターン生3人からの質問が止まらず1時間もインタビューを延長していただきました…!
ここで伺った大村さんの想いや経験から得た価値観をどう自分に活かし、そして次世代に繋いでいくのか、今度は自分自身の視点に切り替えて考えていきたいです。
大村さんとは、以前から一緒にお仕事させていただいてきましたが、長い時間集中してお話しするのは初めてでした。
他業種からJVCに入職し、カンボジア駐在も5年務められた大村さん。そのキャリアから学べることはないかと興味津々でお話を聞き始めたところ、返ってきた「キャリアについて考えたことはない」とのお答えに驚きました。
その後じっくりとお話を伺っていくと、タイミングを的確に掴んでやりたいことに挑戦し、目の前の人や縁を大切にすることで、切り開かれる人生もあるのだと分かりました。人生は自分のこれまで選んできたことではなく、これからの自分の振る舞いで決めることができるのだと思うと希望が湧いてきました。
また、お話の中から「文化の違う相手と働くこと」や「相手の立場に立つこと」の意味が見えてきて、私の思っていた範囲はいかに狭かったのかに気付かされました。
ここには反映しきれませんでしたが、インタビュー中に大村さんのほうからも私たちに考えさせる質問をくださり、「考える」ことの楽しさと大切さを改めて感じました。
インタビューを通して学んだ姿勢や考え方を、今後の私の人生にも取り入れていきたいです。
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