2012年8月 3日 更新
気仙沼はいま 第2回開催報告
※2018年度末をもって、東日本大震災関連の活動はすべて終了しております。多大なご支援をいただきましてありがとうございました。
この開催報告は、シリーズ気仙沼のいまの第二回目となります。
6月5日に「気仙沼はいま」の第2回目を開催しました。今回のテーマは「仮設住宅」です。JVC気仙沼事務所の石原靖士からは次のような話題提供をしました。
報告会の様子
現在、気仙沼市には93箇所、JVCが活動している鹿折地区には8箇所の仮設住宅があります。最近、仮設住宅の住民の間で、健康問題や生活不活発病のリスクが出始めています。これは、仕事を失ったり社会参加する機会が減ることで一日の活動量が減って、身体機能が低下する症状です。多くの支援団体が、住民が集う場を提供するためにサロン活動を行っていますが、積極的に参加する住民とそうでない住民に分かれてきています。
私自身、気仙沼に赴任する前は、「仮設住宅の住民は元気がない人が多いのではないか?」と思っていました。しかし実際には、仮設住宅で元気に暮らしている方にたくさん出会いました。その理由を考えてみましたが、大きな理由の一つに仮設住宅の住民間のコミュニケーションが活発に行われていることがあるのではないかと思いました。
今日は、JVCが活動する浦島小学校の仮設住宅を取り上げます。浦島小学校の仮設住宅には現在約50名が住んでいます。入居者の皆さんは周辺地域の出身で、苗字が同じ人が多いため、お互いに屋号で呼び合っています。
住民の一人、地区の養殖組合長を務める尾形亀雄さんはわかめと昆布の養殖を60年間、続けてきました。震災で再開できるか悩んだそうですが、地区の養殖業を建て直すべく、2011年11月にわかめの種付けを始めました。亀雄さんは毎朝3時半に起き、4時頃から夕方まで作業をし、8時頃に就寝しています。とても81歳には見えません。
小松節子さんは今年72歳ですが、とても若々しい方です。元々は、梶ヶ浦で美容院を経営していて、地域の民生委員をしていました。震災後、避難所にいましたが、血圧の上昇など健康上の問題でアパートに引っ越したそうです。「独りぼっちになって欝になりそうだった」と節子さんは振返ります。その後、仮設住宅に移って仲間との交流が再開し生活が一変。毎日の暮らしが楽しくなったそうです。
お母さん方は仮設住宅の談話室に集まって交流をしています。談話室でのお母さん仲間の小松栄里子さんは、「地域の人たちとの集まりが楽しみ。ご近所付き合いは生活の一部で、なくてはならないもの」と言います。
このように浦小仮設がうまく行っている理由は、元々地域の結びつきが強いこともありますが、仮設に移ってきても地域のために何かしよう、住民同士でコミュニケーションをとっていこうという意識があります。こうしたコミュニケーションが交わされる「場」が非常に大切になっている、と思います。今後もJVCはこうした「場」づくりを積極的に行っていこうと考えています。
石原の報告の後、質疑応答が行われました。
「小さな子どもを抱えた若い世代、ほかにも、仮設住宅ではなく在宅やアパートを賃貸している方たちの生活状況はどうなっているか?」という質問に対し、石原からは「子どものいる世帯の中には、親が単身赴任で県外に働きに出るケース、震災前から務めていた会社で働いているケースもある。在宅やみなし仮設で暮らす住民に関しては、在宅やアパートの情報が得づらく、なかなかアプローチできていないが、支援者の中でアプローチしないといけないという認識はある。今後、どういったアプローチができるか検討していきたい」と回答しました。
また、「東京に住んでいる人間としてどういった関わりができるか?」といったご質問に対しては、「ボランティアとして何か支援するというのもあるが、現地を訪問する中で気仙沼にお金を落とすのも大事なことと思う。東京で暮らしていると震災の記憶が薄れがちにはなると思う。そういうなかで現地を見ていただく、現地の人と話してどういう状況があるのかを見て感じて他の人に伝えていくことも大切だと思う。現地の人たちも忘れ去られたくないという思いはある」と回答しました。
こうした報告会に参加していただくことも、「現地を風化させない」ひとつの試みだと考えています。月1回、定期的にこうした会を開催していきます。ご関心のあるテーマにぜひご参加ください。
下田 寛典
緊急支援担当
大学在学中に1年間、JVCの「タイのNGOで学ぶインターンシップ」プログラムに参加。卒業後、インターン先で再度ボランティアとして活動を続けたが、その年の暮れにスマトラ沖津波がその近くの村を襲った。他人事とは思えず、一時帰国中、「仲間たちのために何かできることはないか」と考えJVCに参加した。その後、タイ事業と、主に緊急支援事業を兼務。
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