人間の大地(AEI) ガザセンター
「まだ避難先で生活している人もいたりするから、センターを再開後、栄養食を食べに来ている子どもたちは一日20人くらいよ。でもこれからはどんどん増えるに違いないわ」。センターの栄養士の女性は不安そうに言いました。JVCが栄養失調児の支援を行っている現地NGO「人間の大地」の栄養センター(ガザ市)を訪問したこの日、24人の子どもたちが栄養食を食べに来ていました。そのうち12人が、停戦状態になってから新しくセンターに通いはじめた子どもたちです。センターで子どもたちは通常は野菜等の食事、それから果物を使った食事を採るのですが、この日は子どもたちは栄養強化ミルクも飲んでいました。
モハンマド君は、1歳5ヶ月。今日初めてセンターに来ました。「家に食べ物がない。夫は仕事がない上に、家も部分的にダメージを受けた。これから先はどうなるのかしら」とお母さんは言います。モハンマド君は栄養強化ミルクを気に入ったようです。泣きながらも、ごくごくと懸命にミルクを飲んでいました。その後ろのターメル君(8ヶ月)は元気一杯。ミルクが足りないのか、隣にいるモハンマド君の袖を引っ張ろうとしている姿が愛らしく、お母さんも嬉しそうです。「攻撃の間、とにかく子どもが弱っていくのが心配だった。今こうしてまたセンターに来て、他の子どもたちと一緒に栄養食を食べて元気になる姿を見ていて、本当に嬉しいわ」とお母さんは言います。
(モハンマド君(右)とターメル君(左)。ターメル君はもっとミルクがほしいようです)
ハニヤンちゃん(6ヶ月)は、センターに来るのは今日で2回目。停戦状態になってから通いだした子の一人です。もともと2kgで生まれてきたのですが、6ヶ月の今も体重は4kgしかなく、重度の栄養失調と診断されました。お父さんは仕事がなく、やはり家に食べ物はないとお母さんは言います。食料配布で配られた粉ミルクを飲ませたところ、ハニヤンちゃんの弱い体には合わずひどい下痢が続いたため、お母さんはセンターにハニヤンちゃんを連れてきたそうです。
(重度の栄養失調と診断されたハニヤンちゃん。頑張って元気になってね)
もう一人の重度の栄養失調と診断されたアヤちゃん(7ヶ月)は、やはり4kgしかありません。2ヶ月前からセンターに通いはじめましたが、お母さんはやはり、攻撃が続く中、弱っていき泣き続けるハニヤンちゃんのことが心配で仕方がなかったとのことです。今日は、停戦状態になってから初めてセンターに戻ってきました。「おかえりなさい」と栄養士さんに迎えられ、また他のお母さんたちとも久々の再会の挨拶をしていました。アヤちゃんは、アッサムーニアに住んでいます。前日にPMRSの巡回診療で訪れた地域で、特に攻撃による被害が激しく、また現在の衛生環境も悪い地域です。他のお母さんたちも、「家族は大丈夫だったの?」「家は大丈夫?」と心配そうに聞きます。アヤちゃんの親戚にも何人か亡くなった人がいるとのこと。お母さんはまだ元気がないようでした。アヤちゃんに一日でも早く元気になってもらい、お母さんの生きる力にもなってほしいと願います。
(アヤちゃんも重度の栄養失調だ)
「栄養センターに通っていた子の2人は、攻撃の中で亡くなったの。ニュースで、そのうち一人の子とそのお母さんが亡くなっている姿を見たわ。栄養センターに来ていた親子だってすぐにわかったの。悲しくて画面を見ることもできなかった」と栄養士さんは悲しそうに言います。厳しい状況の中でも必死に生きようとしていた子どもたちの小さな命、それを守ろうと頑張ってきたお母さんの命が無残に失われたことを思うと、聞いている私も悔しくやり切れない思いがこみ上げてきます。
「食べ物は全て価格が高くなっているの。買えるのはトマト(1シェケル(約25円)=1kg)ぐらい。卵なんて1個が1シェケルするんだもの」とお母さんたちは、食料品の価格が高騰して買えないことを不安げに言います。ガザではなんとか手に入る新鮮な野菜ですら、ほとんどの種類の価格が高騰しているそうです。お母さんたちにとっても厳しい状況が続きますが、なんとか無事であった子どもたちが、お母さんとともに頑張って栄養食の治療を採りつづけ、そして元気に生きてほしいと願います。
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