特別ミルク到着
「またこうして会えて嬉しいわ、ガザにお帰りなさい」――JVCが一緒に栄養失調児の支援を行っている現地NGO、Ard El Insan(=AEI、人間の大地)の代表イテダル氏に、大きなハグで迎えられました。3ヶ月ぶりに訪れたガザでは、様々な関係者や友人たちとの再会が待っていました。その度、まずはとにかく無事でいてくれてよかった、というホッとする気持ちでいっぱいになります。
今回のガザ出張の目的のひとつに、4種類の特別ミルクの運搬、手渡しという大切な仕事がありました。特別ミルクは国連が調整する支援物資の輸送車両に乗ってガザに入る予定だったのですが、とにかく大量の支援物資が必要な今、輸送もとても混雑しており、また境界線でも一日にガザに入れることができるトラックの数が制限されていていつミルクがガザに入るかわからなかったので、とにかく手で持って入れるものは入ろうと、30缶を手持ちしたのです。
(ガザに送られた4種類の特別ミルク)
まだ攻撃が続く中、AEIの担当医師と電話で話していた時です。「特別ミルクが手に入らなかったために亡くなった子がいる」。チロシン血症、ガラクトース血症などの先天性代謝性疾患を持った子どもたちは通常のミルクをとることができず、特別な治療用ミルクは命綱です。しかしそのミルクをガザで手に入れるのはもともと困難で、続く封鎖の影響で更に難しくなっていました。また、一缶400〜500NIS(=10,000〜12,500円)もするので、貧困に苦しむ家庭が買える金額ではないのです。攻撃の続く中も毎日のように、「子どもに与えるミルクがない。子どもが弱っている」と医師のもとに電話があったそうです。特別ミルクがないために亡くなってしまう子どもがいる。そのミルクを支援する人は誰もいない――エルサレムでの国際NGOや国連組織の会議でこれらのミルクを支援する団体があるか聞きましたが、誰も手をあげません。そこでJVCは、とにかくこの状態を子どもたちが乗り切って生きていくことができるように、特別ミルクの支援を決定しました。
(ヌールちゃんの問診を行う医師(左))
私たちの手持ちのミルクが入ったと聞いて、早速2人の子どものお父さんがミルクを取りに来ました。チロシン血症という疾患をかかえるヌールちゃんは来月で2歳になります。お父さんは、「攻撃が続く中もミルクを探して回った。このミルクがないと黄疸症状を起こし、口などから血を流すこともある。顔や体も膨らんでしまうんだ。辛そうな様子を見ているのが苦しかった」と話します。何度も何度も「ミルクを持ってきてくれてありがとう」と伝えてくれました。お父さんの月収は1,700NIS(約42,500円)。一缶400NIS(約10,000円、約3日分)のミルクはとても買える値段ではありません。しかも「ラファのトンネルが破壊されたことでいよいよミルクが入ってこなくなったと思い、怖かった」と言います。ヌールちゃんには、3ヶ月になる弟がいるのですが、ヌールちゃんは8ヶ月の時にこの病気であることがわかったので、お父さんはこの弟も同じ病気になるのではないかと心配しています。とても特殊な病気なので、何歳になるまでこのミルクが必要かも特定できず、医師が丁寧に観察を続けながら、治療を続けていくことになります。
(特別ミルクを抱えるヌールちゃんと家族と一緒に)
(タリークさん(右))
もう一人、ガラクトース血症という疾患をかかえるモヤイエド君とモハンマド君の父、タリークさんも、ガザ南部のハンユニスからミルクを受け取りにはるばるやってきました。モヤイエド君は1歳、モハンマド君は0歳です。お父さんは「多くのものを失くした今、子どもたちが元気で生きてくれることが、僕の唯一の願いなんだ。支援をくださった日本の方々には、本当に感謝している」と、強く手を握って感謝の意を伝えてくれました。
国連が調整する輸送車両で運ばれた特別ミルクは、26日にエルサレムの国連倉庫を出発。29日に、AEIの代表と医師からそのミルクがガザ内に無事到着したとの連絡が入り、あらためて電話でお礼を伝えられました。全ての人々が厳しい生活を強いられているガザで、その中でもこのミルクがないと生きていくことができない子どもたちがいます。そのような子供たちの命が守られ続けていくよう、側面的に支えていければと思います。
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