人間の大地 ハンユニス栄養センター
AEI(Ard El Insan=人間の大地)ハンユニス栄養センターを訪れました。JVCはこのセンターを通して、栄養失調児に対する栄養食の支援を行っています。この日は27人の子どもが栄養食を食べに来ていましたが、担当の栄養士の女性は、前回訪問したガザセンター同様、いつもの半分しかまだ通院できていないといいます。イスラエルによる攻撃が始まる前、このセンターにはやはり50人以上の栄養失調の子どもたちが訪れていましたが、ガザ南部はラファを中心に建物の損壊が激しく、まだ避難生活を送っているためにセンターに来ることができていない子どもたちが多いようです。ハンユニス・センターでも子どもたちは、通常の2回の栄養食に加えてUNICEFからの支援物資である栄養強化牛乳を飲んでいましたが、「子どもたちにとってはあまりおいしいものではないから、ハニー・デーツ(ナツメヤシ)などを混ぜて飲ませているのよ」と担当の女性は言います。
ガザでは野菜などが手に入るようになりましたが、果物はイスラエル産のものが入ってきているため、とても高価です。卵は1カートン(30個)で22NIS(約550円)、鶏肉は1kgでやはり22NISと、収入がなく貧困に苦しむ家庭には買える値段ではありません。この日センターに来ていたお母さんたちも、食料品の高騰について、そして家庭に収入がないことに不安の声を漏らしていました。
(モハンマド君)
モハンマド君(7ヶ月)は、停戦状態になった3週間前からセンターに通いはじめました。この3週間で体重が4.9kgから今日は5.2kgに増えました。お母さんは、モハンマド君が目に病気を持っていることを心配しています。モハンマド君の他に男の子が1人、女の子が2人いますが、この子どもたちの他に、男の子、女の子それぞれ1人をまだ生まれたばかりの時に亡くしているそうです。ご主人は仕事をしていないとのこと。「ここ何年も、仕事を探しているわ。食べ物は親戚から分けてもらうものや、食料配布の物資に頼っているの。でも、子どもが食べられるものなんてほとんどないわ」と言います。
(ヘバちゃんとお母さん)
ヘバちゃん(7ヶ月)もやはり、センターに通い始めて3週間です。体重が3.5kgから4.9kgへと増えました。お母さんは「センターで出される野菜の食事は好きなの、でも果物の方は食べたがらない」と心配しながらも、栄養士の女性に「順調ね」と体重の増加を褒められ嬉しそうです。ショウカ地区に住むヘバちゃんのお父さんは、病気で働くことができない上に、持っていた小さな農地はイスラエルによる攻撃によりダメージを受けてしまいました。それでも「この子は野菜が好きだから、少しずつ野菜を育てて食べさせたい」というお母さんの前向きな言葉に、私も嬉しくなりました。
AEIでは子どもたちが食事をとった後に、センターに通うお母さんたちの心理ケアのためのセッションを行っています。グループ分けして、お母さん同士で話し悩みや問題などを共有するそうです。イスラエルによる攻撃により家族メンバーを亡くしたお母さんたちもいるとのこと。これからも生活が厳しい状態が続きますが、子どもたちの命を支えていくのはお母さんたちなのです。お母さんたち同士で悩みなどを共有できることは、とても心強いのではないでしょうか。
(栄養性のカウンセリングを受ける母親)
センターを出るとき、ちょうどセンターに入ってきた女性が「あなたはここで働いているの?」と聞いてきました。「一緒に仕事をしているの」と答えると、「このセンターは素晴らしいわ!私の子どもは生まれた時には2kgちょっとしかなくて、元気がなかったの。でもここに通い続けて栄養食を食べて、半年で7kgにもなったのよ」と嬉しそうに話してくれました。6ヶ月で7kgとは、まさに健康な赤ちゃんの体重です。この女性は、「頑張って通って、私も勉強したのよ」と繰り返しました。センターに現在通ってきているお母さんたちには、辛い状況の中もできることから少しずつ頑張ってほしいと願います。そしてその頑張りをJVCも引き続き支えてきたいと思います。お母さんたちが前向きでいることが子どもたちの健康にもつながり、そして子どもたちが元気になれば、お母さんにも家族にも笑顔を与えることになるのですから。
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