REPORT

パレスチナ

人間の大地 ガザ栄養センター

この日、AEI(Ard El Insan=人間の大地)ガザ栄養センターを訪れて、居たのは37人の子どもたち。前回訪問したときよりは増えています。しかし、まだ避難生活を送っている等の理由で、センターに戻ってくることのできない子どもたちも多いようです。一方、停戦になって以降センターに通い始めた子どもたちも多いようです。現在センターでは、お母さんたちにも食事が提供されています。

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(検査でベッドに寝かされるイスラアちゃん)

生後7ヶ月のイスラアちゃんは、センターに2月中旬から通い始めました。センターに来た当初、5.6kgで“中度”の栄養失調と判断されましたが、その後体重が5.3kgに減り、“重度”の栄養失調状態になってしまいました。お母さんが、イスラアちゃんに家でパンを食べさせていると聞いた栄養士の女性は「7ヶ月の子どもにパンは早すぎるわ。お米を調理してスープ状にして食べさせなきゃ」と指導しました。お母さんは、「栄養価の高い野菜や果物などを食べさせなければってわかっているのだけれども、生鮮食料品を買うお金がないのよ。夫も仕事がないわ」と言います。センターで、お母さんたちは栄養食の調理方法を学んでいますが、家に食材を買うお金がなければ、せっかく学んだ調理方法も生かすことができません。

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(身長と体重を測ります。大きくなっているかな?)

イスラアちゃんの今日の体重は、5.8kgに増えていました。お母さんも一安心のようです。

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(栄養食を採って満足のアナス君)

アナス君は1歳になりますが、7kgしかありません。家ではジャガイモをスープにして味付けをして食べさせているそうです。「果物は高くて買えないわ」とお母さんは言います。「夫には仕事がないの。戦争が始まるずっと前から、どこにも仕事なんてないのよ」。そう言うお母さんは、辛い状況にも関わらず元気一杯です。「この子は普段、家ではご飯を食べたがらないから困っているの。でもセンターに来ると、他の、しかももっと小さな子どもたちが一生懸命食べているのを見て、この子も食べるのよ!」と笑って言うのです。一人っ子のアナス君。お母さんの元気な笑顔も栄養にして、元気になっていってほしいと願います。
 
ガザ市内を車で走っていると、野菜や果物がお店などにたくさん溢れているように見えます。しかしよく見ると、それらが入っている箱にはイスラエル産であることが示されているのです。ガザの人々は、「ガザ産のもので手に入るのは、野菜ならトマトやじゃがいも、果物はオレンジくらい」と言います。12月下旬から3週間にわたったイスラエルによる攻撃で、家屋だけでなく多くの農地もダメージを受けたそうです。また、イスラエルとの境界線に近い農地では今も、イスラエル軍からの攻撃があるためパレスチナ人農家が農地に出ることができない状態が続いているそうです。
 これまでも農地だけでなく、長く続いた封鎖により、ガザの産業は大きなダメージを受けていました。産業のための原材料はガザに入ってこず、そして生産したとしてもガザの外に出すことはできないためです。そして今、新鮮な野菜等までもが生産できない状態になっているのです。ガザは更に、外からの支援や、イスラエルからの商業物資に頼らざるを得ない状態になっているのです。ガザへの人道支援物資の輸送すらも制限される中、イスラエルの商業物資は相変わらず入ってきていることを示す町の商店の光景には、やはり違和感を抱かざるを得ません。

JVCでは緊急支援として、これまでも栄養失調児へのドライフード・パッケージの支援を行ってきたハンユニス(ガザ南部)の栄養センターで、フレッシュ・フード(生鮮食料品)の支援を始めます。ガザでは変わらず、厳しい状況で生活している人々が多くいます。その中でもより弱い立場にある子どもたち、子どもたちを支えるお母さんたちを、応援していきたいと思います。

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