ラファの2つの幼稚園
ガザ南部、ラファのテル・アル・スルターン地区と、ブラジル・キャンプにある2つの幼稚園を訪れました。JVCは現在、ガザの北部(ウム・アル・ナセル村)、ガザ市、ガザ南部のラファでは3つの幼稚園、計5つの幼稚園で、子どもたちに毎日栄養強化牛乳とビスケットの配布を行っています。
(牛乳を飲む女の子)
この2つの幼稚園は、エジプトとの国境との近くにあります。ラファとエジプトの間には地下トンネルが存在するとのことで、イスラエル軍は1月下旬に停戦となった以降も断続的に攻撃を行っています。
幼稚園に向かう途中も、残骸となった多くの建物を目にしました。4階建ての建物の1つの階が、穴が開いたように完全に抜けている建物もあります。そのような中にも、人々は住み続けているのです。
(破壊された建物が目立つラファ)
ブラジル・キャンプにある幼稚園の園長先生、モナさんに話を聞きました。モナさんは攻撃が続く中、攻撃を逃れるために5回、5人の子どもたちを連れて親戚等の家に避難を繰り返したそうです。モナさんの横に、11歳の息子さんが座っていました。家にいるのが不安で、いつも学校が終わった後にはモナさんの勤める幼稚園に来て一緒にいるのだそうです。園児たちの面倒をみたり、私たちが牛乳を配るのを手伝ってくれたりもして、とても笑顔が優しいお兄さんなのですが、戦争の傷跡は心に残っているのでしょう。モナさんも心配そうです。
この幼稚園に通う子どもたちの中にもやはり、家族メンバーを亡くした子どもたちがいます。先生のひとりは怪我を負いました。また、ほとんどの子どもたちの家は窓ガラスが割れたり一部が破壊されたりしたそうです。全壊した家もあります。しかし家の再建に必要なセメント、窓ガラスなどの建設資材はガザへの輸入を厳しく制限されており、破壊された多くの家の再建の目処は全く立っていません。攻撃の後に子どもたちがどのような変化があったかを訪ねると、やはりストレスや精神の不安定などを、先生たちは不安げに言っていました。
JVCは子どもたちが健康を保つことができるよう、牛乳とビスケットの配布を続けながら、この幼稚園でも子どもたちの精神的ストレスや不安を少しでも和らげられるよう、ぬいぐるみの支援を行いました(上記の全ての幼稚園で、計520人の子どもたちに支援しました)。
子どもたちは、ぬいぐるみをぎゅうっと抱きしめ、「持って帰っていいの?!」と嬉しそうに聞いてきます。意外にも(?)、わんぱくな男の子の方がぬいぐるみを手にして狂喜しています。
(元気一杯の笑顔は、私たちも元気にしてくれる)
女の子たちは、そっとぬいぐるみを撫でながら、はにかむような笑顔を見せてくれました。ぬいぐるみを一緒に遊具に乗せて、遊ぶ子どもたち。小さなバックパックに詰め込もうとして先生に慌てて「入らないわよ」と言われ、腕に抱えて幼稚園を後にした子どもたち。帰る先は、一部が破壊されたままの家かもしれません。国連やNGOなどからの支援物資は、家族のお腹を満たすのに十分でしょうか。私たちからのプレゼントは小さなものかもしれませんが、「夜は不安で眠れない子どもたちもいるのよ。ぬいぐるみがあれば、安心して眠れるようになるかもしれないわ」という先生の言葉を信じたいと思います。そして、明日も栄養いっぱいの牛乳を飲んで、心も体も元気でいてほしいと願います。
(ぬいぐるみを抱えて家に帰っていく子どもたち)
(幼稚園の先生、栄養改善事業のスタッフと一緒に)
小林 和香子
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