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パレスチナ

ガザ事業ボランティアさんの息子さんが亡くなりました 11月9日からのガザ・イスラエル情勢について【4】

先日9日から続いているガザ地区への攻撃について、18日現在までにパレスチナ側に65人の死者(19日現地午前中の情報では80人)、イスラエル側に3人の死者が出ています。これを受けて、イスラエル軍がガザへの地上侵攻のために召集している兵士は、18日現在16,000人で、これまでのところそのうち数千人が既にガザ周辺に集結しており、ここ数日でガザへの本格的な軍事侵攻が始まることが懸念されています。

また、大変悲しいお知らせですが、現地パートナーNGOの人間の大地(AEI)スタッフ、アマルから、JVCが2012年度に支援しているガザ地区北部のガザ市シャジャイヤにおいて、子どもの栄養失調予防事業にボランティアとして参加している女性の息子さんが攻撃によって亡くなったという知らせが届きました。そのボランティアのお母さんは非常にショックを受けていて、アマルからの電話にも出てくれないそうです。そしてその説明をしているアマル自身もまた、ベイト・ハヌーンというガザ地区北部のイスラエルとの境界線から非常に近いところに住んでおり、「空爆の中買い物にも行けず、食料が底を尽きかけている」、「子どもたちだけでも無事に生き残ってほしい」と私に伝えています。

私は、JVCガザ事業担当として、このように友人や知人が悲しみ、ただ生きるための食料を確保するための簡単な買い物すら許されず、また空爆の音で恐怖に襲われている時、ガザに入って直接彼女たちと話すことすら許されない状況を本当に歯がゆく感じています。また、JVCが支援してきた地域で少しずつ栄養状態が改善されていた子どもたちが、この空爆や混乱によって、更に健康を害してしまうことに強い憤りを感じています。また加えていえば、抜本的な紛争解決を見ないまま、封鎖継続・不当逮捕・超法規的暗殺に対してイスラエルに十分に圧力をかけていない状況を黙認している国際社会に強い憤りを感じています。

18日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「ガザからのイスラエル境界線へ向けた攻撃がやめば、停戦合意をする意思がある」とバラク・オバマ米大統領へ伝えました。一方で、同日中に、それが不可能な場合は、「軍事攻撃を拡大する用意がある」と内閣で発言しています。国連事務総長バン・キムン氏は、これらの停戦交渉のため、来週中にイスラエルとパレスチナ自治区を訪問すると発表しています。一方オバマ米大統領は、「イスラエルは自衛する権利を持ち、ガザからの攻撃が止まなければイスラエル軍の地上侵攻は致し方ない」と公式見解を示しています。

これらから、イスラエルや関係各国・国際機関が停戦に向けて具体的に動き出す上で重要となってくるのは、ガザ武装勢力からの攻撃停止だということがわかりますが、事実軍事侵攻を起こさないための策があるとすれば、ガザからイスラエルへの攻撃がやむことにあるかもしれません。そしてもう一つ案があるとすれば、イスラエルがガザの封鎖を解くこと、そしてガザの人々が普段から安心して暮らせる場所を確保し、ガザの武装勢力が勝ち目のない戦に挑むような状況作り出さないように、誠実に、真摯に問題に取り組むことではないかとも思います。

実際、パレスチナの人々は、攻撃をやめたところで、イスラエルからの「封鎖」や「占領」という不条理な状況にまた戻るだけだ、ということを知っていて、暴力に訴えざるを得ない状況が背景にあると考えている人もいます。JVCとしては、暴力によらない紛争解決を強く求めますが、この問題を抜本的に解決するためには、ガザの人々ひいてはすべてのパレスチナ人を恐怖で管理するのではなく、同じ人間として、公平に、大切にすることが必要不可欠だとも考えています。

いずれにしても、この攻撃が長引けば長引くほど、ガザの経済状況は更に悪化し、人々は食料、医療物資の不足によって、生命の危機に直面する状況に置かれることになり、空爆によって命が脅かされることと同じように、人々の命が脅かされることに変わりはありません。JVCは18日、パレスチナで長年にわたり緊急支援を続けている地元のNGO、パレスチナ医療救援協会(PMRS)スタッフと、今回のガザの危機的状況に備えた緊急支援を開始するための協議を行いました。具体的な支援の内容については、近日中に当ウェブサイトでお知らせする予定です。引き続き皆様からのご支援よろしくお願いいたします。

執筆者

金子 由佳

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