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パレスチナ

停戦後のガザより 11月9日からのガザ・イスラエル情勢について【7】

昨日25日(日)、停戦後初めてガザ地区に入りました。JVCのプロジェクトを一緒に行っている現地パートナーNGOのAEI(人間の大地)スタッフと、この停戦をいち早く対面して祝いたかったし、また事業地への被害をいち早く調査して、何が必要か、JVCとして何ができるのかをいち早く見極めるのは大切だと思いました。また、人々に会って悲しみや喜びを共有することは、ガザで事業を担当する者として当然だ、と思いました。

この戦闘が続いていた間毎日電話していたアマルを含めたAEIスタッフと会って無事を祝い、またガザ市内で破壊された自治政府の建物、銀行、メディアのビルなどを見て回りました。全体として破壊されたビルの数は少ない印象ですが、一つ一つのビルに大切な物、思い出、また大切な人がいたことを思うと、その現実が重く肩にのりかかりました。

そして、26日の今日は、JVCのガザ事業:「子どもの栄養失調予防事業」の事業地の一つ、ゼイトゥーンを見てきました。この便りでは、私が見聞きしたものを一つ一つお伝えしようと思います。

(1)アル・ハッダート家(ガザ市ゼイトゥーン)

アル・ハッダート家の24人は、3階建のビルに住んでいました。1階は小さな食料品店で、家の前には、家族が作った小さな工場もありました。しかし、たった4発のミサイルによって、この家はことごとく破壊され、また前にあった工場も破壊されました。今はその家も、工場も、もとの形すらわかりません。現在その24人は親戚宅に身を寄せたり、近くの家に家賃を払って移り住んだりしていますが、仕事も、家も、その家に詰まっていた大切なものも失った人々に、今のところ、誰からも何の補償もありません。たった数秒のミサイル攻撃が、そこに住む人々の生活の基盤全てを奪いました。家族の数名は、私たちが訪れた時、壊されてしまったビルの前に椅子を並べて建物を眺めていました。

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(壊されたビルの前にたたずむアル・ハッダート家の人々)

(2)アブゾール家(ガザ市ゼイトゥーン)

アブゾール家には3歳になる男の子がいました。その子は、ミサイルによって、2階から吹き飛ばされ、家から5メートル離れた道端に落ちて亡くなりました。一瞬の出来事でした。また、同じ家に住んでいた女性2人も亡くなりました。写真は、その子どもがいた2階建のビル。その子はここから吹き飛ばされて、ちょうど私が立ってすぐ後ろあたりに落ちて死んだと言われました。そこにはわずかに血の跡が残っていました。

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(この二階部分に男の子が居ました)

(3)カターティ家(ガザ市ゼイトゥーン)

カターティ家のアヘッドは38歳で、一家の大黒柱でした。とても優しい性格で、隣のアブゾール家にミサイルが落ちたとわかった途端、人々を助けに外に出ました。しかし、救いに出たはずの彼が、次の瞬間ミサイルの標的となり、亡くなりました。彼には妊娠したばかりの奥さんと、幼い娘と、年老いた母親がいました。残された家族は、同じくミサイルの衝撃によって歪んでしまった天井からの雨水に凍えながらも、今は悲しみに打ちひしがれるほか、なすすべもありません。

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(外に出たアヘッドさんが殺された場所の近く。ポスターは彼の死を追悼するために作られたもの)

(4)アシューフ家(ガザ市ゼイトゥーン)

アシューフ家のムハンマド・イブラヒーム君8歳は、当時他の子どもたち6人と庭で遊んでいました。そこに突然ミサイルが撃ち込まれ、イブラヒーム君は吹き飛ばされて亡くなりました。近くにいた子ども6人すべてが怪我をして、そのうち一人は未だ病院にいます。その子は足と腕にミサイルの金属片がめり込み、全治6か月の重傷です。イブラヒーム君は3か月前にこの地に引っ越してきたばかりで、お母さんはたった一人の息子を亡くし、気丈にふるまっていましたが、やはり抑えきれない感情で、涙があふれ出てくるようでした。

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(亡くなったイブラヒーム君の当時着ていた服の破片(左)、その時のミサイルの破片(中央)、ミサイルが落ちた後の穴(右))

ここに出てくる人々は、戦っている人々とは何の関係もありませんでした。ここで亡くなった人たち、また、大切な物を失った人たちに何の落ち度があったというのでしょうか?

イブラヒーム君の父親は、「神がそう望んだからだ」と自分に言い聞かせるように、私に説明していました。私は、何も言葉にできませんでした。

果たしてそうなのでしょうか?彼は死ななければならなかったのでしょうか?私には、人間の愚かな行いのためとしか、思えませんでした。

執筆者

金子 由佳

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