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パレスチナ

活気を取り戻しつつあるガザより みんな元気に活動しています

2012年11月21日に停戦を迎えてから、ガザでは日常生活に戻ろうとする人々の意思が強く作用して急速に町に活気が戻っています。JVCが支援するガザ市の栄養失調予防プロジェクトも11月の遅れを取り戻すかのように活発な活動が再開され、JVCガザ事業現地調整員の私も、12月には3度、1月に2度ガザを訪れて、現地の活動の視察を続けています。パートナーNGOのAEI(Ard El Insan:人間の大地)スタッフも、紛争の時の疲れが嘘のように、日々元気に活動しています。今実施している活動のいくつかの活動を紹介します。

子どもを出産したばかりの女性を対象にした家庭訪問と母乳育児カウンセリング

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(生後2週間の子どもを紹介してくれたお母さん)

12月19日(水)、子どもを出産したばかりのお母さんたちへのカウンセリングのために家庭訪問を行いました。JVC-AEIの事業では、子どもを授かったばかりの母親を対象に、子どもが生まれてから1ヶ月以内に3回、2~6ヶ月以内に3回の合計6回の家庭訪問を行っています。

出産したばかりのお母さんたちは、子育てや自分の体の変化に戸惑うことが多く、ストレスをためこんでしまいがちです。そういったお母さんたちに会いに行って、小さな不安を一つずつ取り除いていき、子どもの健康を守るのが、AEI保健指導員とボランティアさんたちの役割です。

今回の2人のお母さんは、子どもの鼻の通りが悪いという問題を心配そうに相談していました。空気の悪いガザでは耳鼻や呼吸器に問題を抱える子どもが多くいます。指導員の話では、こういった症状は乳幼児にはありがちの症状だそうで、同行したボランティアのジハンは、薬草を用いた治療や、母乳を鼻に入れて呼吸の通りをよくする方法(免疫力が高い母乳にはそういった利用方法もある)を勧めていました。

また、授乳がどれ程子どもの免疫力を高めるのに重要なのか、正しい授乳の方法や授乳の重要性も熱心に説明していました。授乳中の母親は鉄分不足になりがちですが、それについても鉄分を含むタブレットを飲むように説得していました。昨年11月の紛争後、こういった家庭訪問を通じた活動がすぐに再開されましたが、お母さんたちの不安を様々な視点から取り除くことによって、子どもの健康を守るためには、こういった小さい積み重ねは非常に重要だと改めて感じました。

栄養価の高い料理作りを支援する地域の調理実習

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(栄養に関する質問に答えていくお母さんたち)

12月20日(水)、ガザ市ゼイトゥーンで栄養価の高い料理作りを広めるための調理実習にも同行しました。参加者は地域の小さい子どもを持つお母さん11名、指導するのはAEIの保健指導員のガータと地域のボランティアさんです。

実習では、まずボランティアさんと地域保健員から体に必要な栄養素とそれぞれの栄養素の役割についての説明がありました。例に挙げられた食材は、カリフラワー、ニンジン、さやえんどう、リンテン豆、パセリ、オリーブオイル、洋ナシ、ナツメヤシなどで、参加したお母さんたちも身近な食材にどんな栄養が含まれているのか、興味深そうに話を聞いていました。

次に、それらの食材を使った食事を参加者と指導員共同で実際に作りました。一緒に作ることで調理方法を体感的に学び、各家庭で実践しやすくなります。そして、出来上がった料理を一緒に食べます。食事をすることによって、実習そのものが楽しい記憶としても残ります。私も毎回ちゃっかりご馳走になり、料理の味について参加者と意見を交換しました。「味が薄い、これはおいしい、これはこうしたらどうか?」様々な意見と笑顔が交差するひと時です。

今回は最後に、参加者に復習のための栄養素を答えるゲームも実施しました。一人ずつ、毛糸玉を投げ合って、指導員からの質問に答えていきます。最後にそれぞれ答えて行った参加者たちの間に、毛糸のラインができて、まるで一つ一つの栄養素が相乗効果をもたらしているように、参加者たちがつながっていきます。

こういった調理実習を通じた教育セッションは、11月は紛争の影響で全く実施されていませんでしたが、12月に入ってからは遅れを取り戻すかのように、毎週各地で5回実施されています。ゼイトゥーンは被害が多い地域だったので、本当に今後こういった活動が実施できるのか、私も心配していましたが、「紛争後で厳しい時だからこそ人々の絆が求められている」と、ガーダは力強く言っていました。このような活動を視察するのは実に1ヶ月半ぶりで、私も改めて事業を再開している現地のスタッフ、人々と時間を共有できたことをうれしく感じました。

幼稚園での栄養・衛生教育を目的とした人形劇の実施

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(人形劇を熱心にみる幼稚園の子どもたち)

同じく12月20日(木)にはシャジャイヤの幼稚園も訪れ、園児たちへの栄養に関する教育セッションを視察しました。今年度事業で対象としている幼稚園はガザ市3つの地域でそれぞれ3つずつ、合計9つで、今回はそのうちの一つであるバラーイム・アルクッズ幼稚園に行きました。

園児たちに人形劇を通じて体に良いお菓子や、歯磨き・手洗いの重要性をわかりやすく説明して、子どもの体を丈夫にするのが目的です。子どもが多いガザでは、幼稚園で働くスタッフ不足が慢性的な問題で、保育士の資格を持っていない、栄養や衛生に関して知識を持っていないスタッフが多くいます。私たちの事業では、定期的にこういった人形劇のセッションを行い、この様な問題を少しでも減らせるように努めています。

今回ボランティアさんと保健指導員は、「適切なお菓子はどんなものか?」、「ポテトチップスは体に良くないけど、果物は体に良いよ」と言う様な内容の人形劇を見せて、園児たちは、楽しみながら、自然に栄養について学んでいました。紛争後「眠れない」、「食べられない」と精神的なダメージを訴えている子どももいますが、今回幼稚園に集まった園児たちは元気そうにしていて、久しぶりに明るい楽しい集まりとなりました。

12月に入ってから、こういった活動一つ一つを視察しながら、ガザの人々の強さと優しさを改めて感じました。また今年1月には、2012年度事業を終了するための事業評価や、会計報告に関する打合せも頻繁にAEIスタッフと行っています。もうすぐ年度末になり、2012年度事業は一年間の区切りを迎えますが、2013年度も、引き続きガザでの事業を見守りたいと思います。

※昨年12月と今年1月には、11月に開始した緊急支援物資の配布にも同行していました。これについては別途1月末から2月初旬に報告したいと思いますが、現在ガザの人々は力強く生活しています。

執筆者

金子 由佳

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