2012年11月の空爆から一年が過ぎました(1)
ガザ地区では昨年11月21日の停戦から一年が過ぎて、子どもも学校に通えるようになり、当時の恐怖から解放された雰囲気が町中に漂うようになりました。八百屋や市場には物が並び、壊されたビルも再利用のコンクリートで修復・再建されて、ガザの中心地は活気あふれるアラブの町並みに見えます。しかし中心地を離れて社会の様子を少しのぞいてみると、それほど物事が単純でない・・とすぐに分かります。
例えば、今年6月に起きたエジプトのムルシ政権の崩壊によって、ガザへのエジプト側からの物資供給が著しく減っています。以前ガザ‐エジプト(シナイ半島)間国境に1000以上あると言われていたトンネルの稼働率は6月前の2割に落ち込み、エジプトとの国境に設置されたラファ検問所を通じた人の出入りも、6月前の1割以下になっています(Gaza NGO Safety Office-GANSO: 9月、10月レポート)。特に燃料の不足が深刻で、家庭調理用のガスや車両用、ジェネレーター用の燃料が不足しています。停電は一日12時間に及び、薪で料理をする人が増えています。ろうそくによる火災で子どもが亡くなり、汚水処理用ポンプや地下水をくみ上げるポンプも動かせず、汚水が海に垂れ流され、発電機が無い家庭では、水も汲むことができません。
「車両燃料を求めてガソリンスタンド前に並ぶ車の列、ベイトハヌーン近郊」(2013年10月筆者撮影)
ガザの国連事務所ではたらく友人によると、こういったライフラインの極端な不足は、去年11月の大規模空爆の前のガザの状況に酷似しているとのこと。ガザではこういった人々の生活状況の悪化が、ガザの住民間の小さい衝突や、武装グループによるイスラエル軍への抵抗活動につながる事が多く、実際に、前回ガザを訪れた11月17日から22日まで、武装勢力からの手作りロケットの発射数が増加し、イスラエル空軍からの報復攻撃の回数も、昨年停戦以来、1日あたりの最大数を記録しました。幸い、まだ停戦状態が反故になるには至っていませんが、停戦中も相変わらずイスラエル軍による単発的な空爆や、国境付近での銃撃戦は後を絶たず、ガザの人々は、「いつ空爆が再開されるのかと思うと不安だ...」、と恐れおののく声を挙げています。
「単発的に繰り返されるイスラエルからの攻撃」(出典:GANSO (Gaza NGO Safety Office)2013年10月レポート)
シリア情勢が混迷を極める中、中東における国際援助がシリアに向いていますが、かといってガザの状況が著しく改善されるわけでもなく、ガザの人々は、日に日に政治的にも、物理的にも、心理的にも孤立を強めています。
「燃料不足で汚水ポンプを稼働できず、汚水が氾濫した地域」(出典:アルジャジーラ2013年11月20日記事 )
つづく・・・
金子 由佳
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