REPORT

パレスチナ

2012年11月の空爆から一年が過ぎました(2)

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雑談をするアマルと筆者(2013年11月21日、撮影現地代表今野)

その1からの続きです。)

ただ、ガザと言うだけで、全ての人が毎日悲嘆にくれているばかりでもありません。空爆に怯えながらもそれを乗り越えようと明るく前向きに過ごしている人も無数にいて、JVCの現地パートナーNGO「AEI:人間の大地」で働くスタッフたちも例外ではありません。例えばAEIの保健指導員のハイファは2009年の大規模空爆で大好きだった父親を失いました。深い悲しみに打ちひしがれたと以前話してくれましたが、それにもかかわらず「イスラエルの飛行機が飛んでくると、(爆弾を)当てられるものなら当ててみろって笑い飛ばすの」。「あいつら何もできやしないんだから」。と満面の笑みで私に言います。またもう一人のスタッフアマルは「この前家の近くであやうく戦車の砲撃の弾に当たるところだったわー。アッハッハ」と、決して笑い事ではないのに私に楽しそうに言っていました。まるで雨に降られずに済んだことを喜んでいるようです。去年の空爆2日後に現地入りしたとき、AEIスタッフも一様に恐怖を感じて疲れ切っているように見えましたが、今ではこの回復ぶりです。

こんな深刻な事をどうしてそうやって笑い飛ばせるのか?いつものことながら聞いている私がハラハラします。去年の空爆中、彼女たちのことが心配でたまらず、エルサレムにいてもあまり眠れませんでした。そんな思いは二度としたくないと、私自身心から思っています。しかし、私が神妙な顔をしていると、逆にみんなが私の事を心配してくれます。「大丈夫、由佳は私たちが守るから!」。「いや、そうじゃなくて...」と言いかけますが、彼女たちは至って大真面目に私にそれを言うものだから、それでまた私は微妙な顔をせざるを得ません。

彼女たちは決して命を軽んじているわけではありません。そしておそらく、怖くないわけでもないと思います。誰よりも命の重さを知っていて、誰よりも生きることに真面目だと思います。そして、誰よりも空爆の恐ろしさを知っています。ただ、だからこそ、苦難を笑い飛ばしながら恐怖を乗り越え今を一生懸命生きることの大切さも知っているように思います。自分も周りも誠心誠意大事にする。そうやって一日一日を大切に生きることが、「幸せ」につながると肌で感じ取っているのかもしれません。

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冠水したガザ市ナサールストリート(2013年12月5日、撮影ワシーム・エルバス)

先日ガザ地区を豪雨が襲い、一部の道路が冠水しました。ボートをだしている人もいたぐらいで、インフラもぜい弱ですからすぐに水も引きません。停電が続く真っ暗な家の中で、浸水して、おまけに空爆が始まったとしたら・・・「どんなに心細いだろう?」そう思わずにはいられないのですが、知り合いのパレスチナ人は「ガザがベニスになった!」と大はしゃぎです。私もその人のセリフに思わず吹き出しました。とにかくガザの人は強い。そして面白い。光と影を持つガザの人に寄り添いながら、これからも事業を続けていきたいと思いました。

執筆者

金子 由佳

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