ガザの現実(6) -子どもの栄養失調予防事業近況報告
昨年の夏の戦争停戦から9ヶ月が過ぎました。戦争中とその後、3ヶ月間の停止に追い込まれたガザ地区北部に位置するジャバリヤでの「子どもの栄養失調予防事業」は2014年10月以降から再開し、多くの寄付者の皆様に支えられながら、また現地のスタッフ・ボランティアさんの意志を尊重しながら続けられています。
事業は今年8月に3年目のスタートを迎えます。2年目の完了を前にして、戦争での遅れを取り戻すかのように、子どもへの栄養状態検査や母親へのカウンセリングを目的とした家庭訪問、栄養教育講習会が精力的に行われています。事実、予定していた対象者数を上回る勢いで2015年3月末までに、1,611人(家庭訪問1,175人+教育セッション436人)の5歳以下の子どもと、 4,373人(家庭訪問1,554人+教育セッション2,819人)の母親等、合計6,040人(実数)への支援を行いました。
「調理実習や教育セッションは、子どものために栄養の知識を身に着けられる大切な機会です。それに参加できるのは喜びです」(ファウダさん22歳:支援対象者)、
「自分も勉強しながら人々を支えられるのがうれしいです」(アスナさん22歳:ボランティア)、
「今日は昨日よりもいい仕事をしようと毎日思います。そうして毎日最高のサービスを提供できるように心がけています」(ハイファさん34歳:AEIスタッフ)。
(ボランティアのアスナさんと、料理実習参加中のファウダさん)
それぞれが特別な想いを持って活動に関わっている。私にもガザの女性たちの意気込みが伝わってきて、日々喜びをもらっているようです。
肝心の子どもの栄養状態も、3月までに栄養失調、貧血、くる病と診断された子どもたち858人の内(栄養失調210人、貧血613人、くる病35人)、73%が症状を改善、或いは完治させることが出来ています。またカウンセリングや講習会に参加した母親たちの知識も7割以上の向上が認められ、量と質、両方における成果が見え始めています。
ガザでは、戦争の前と後で人々のニーズとその優先順位も大きく変わってしまったように見えます。JVCではこのような中、子どもの栄養失調予防が優先事項なのか議論も起きましたが、1)2014年9月中に行われた当事業ボランティア30人及びパートナー団体であるAEI:人間の大地スタッフ8人との会合における議論において、現地スタッフ・ボランティアからの事業再開と継続への強い意欲がみられたこと、2)JVCが今までガザで1.5年かけて行ってきた本事業(3年計画)において培ったネットワーク及び知識を、事業を取りやめる事で無駄にしないこと、また、3)戦争後のガザのニーズがインフラ整備や民家の再建など、金額規模が大きい、且つ一過性の人道支援に偏りがちである中、JVCでは、持続的で地域密着型の事業を継続し、長期的に人々に寄り添いながら、メッセージを発信する方がより良いとの議論があった事から、この事業を続けていきたいと考えています。
(5月12日に行われた調理実習に参加した子どもたち)
引き続き現地の人々と歩む支援をモットーに、子どもの栄養を地域ぐるみで守れるように事業に取り組んでいきます。
金子 由佳
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