ガザの活動を医学学会で発表してきました!-2014年、2015年の成果-ランセット学会発表
2016年3月7日、8日にヨルダンで行われたパレスチナのランセット(医学)学会にて、2014年4月~2015年7月までJVCがガザで行った母子栄養失調予防事業の成果をポスター発表する機会がありました。遅くなりましたが発表内容を邦訳しましたのでここに掲載したいと思います。
JVCはガザのパートナー団体Ard El Insan(人間の大地)とともに、2014年4月~2015年7月までの間、ガザ地区北部、ビルナージャと呼ばれる地域で当該事業を実施しました。手法は、1)対象地域から30人のボランティアを選抜し、栄養やコミュニケーションに関する研修を実施、2)育成されたボランティアが、人間の大地の地域保健師と共に地域の家庭を訪問、1,186人の5歳以下の子どもに栄養状態検査を実施、加えて3)これら子どもの母親や妊産婦を対象に同じく家庭訪問を通じてカウンセリングを実施し、4)その傍らで、地域の女性たちを招いた栄養教育講習会を実施する、という内容で、簡単に言えば、地域人材を活かした子どもの栄養改善のための教育事業になります。1)、3)、4)の活動によって、子どもの栄養状態を地域ぐるみで改善する意識を高められるだけでなく、特に1)で地域に根差した栄養士を育成でき、事業終了後にボランティアが活動を続けることが可能となり、効果の持続性も担保できます。
(事業のイメージ図)
ガザの5歳以下の子どもの貧血の割合は、2013年のユニセフ報告書によれば、32パーセント以上になりますが、ビルナージャではそれを越える40パーセント近い子どもたちが貧血です。それだけ貧しく、また子どもの世話をする大人たちの栄養への意識が低い事もわかっており、これを改善させることは容易ではありません。
しかし、13か月(2014年7-9月までは戦争中で活動停止)の事業期間を通じ、40パーセント(1,186人中469人)の貧血児の数を、わずか9パーセント(1,186人中113人)にまで減少させることに成功しました。この期間中、ガザ最悪の被害を生んだ50日間の戦争もあったことを考えれば、大変な成果だと考えています。
(発表直後の金子)
ランセット学会の当日は、300人以上の医療従事者、学者、国連関係者などが集まり、「占領と健康問題」、「喫煙率と難民の相関性」、或いは「Facebookなどのソーシャルメディアと精神依存」の問題など、ありとあらゆる健康問題についての発表があり、また参加者たちは白熱した議論を交わしました。これだけ多くの人がパレスチナ人の健康について考えているということに私自身も鼓舞されました。
(参加者たちの様子)
一方、私の発表仲間として、JVCのガザでのパートナー団体、Ard El Insan(人間の大地)のプロジェクトコーディネーター、アマルが参加する予定でしたが、今回はヨルダンからの入国ビザが下りず参加できなかったことに、落胆と憤りも感じました。イスラエル側の許可が下りたのに、アラブの国ヨルダンでビザが下りない政治的背景に、これからも続くであろうパレスチナ人の苦難が投影されているようで、とても残念です。次回は絶対一緒に参加したいと思います。
(アマルとガザで)
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