5年後のイスラエル
(※この記事はラマダン終了前に書かれた記事です。)
こんにちは、エルサレム駐在中の並木です。こちらはラマダーン終了まであと少し。日中は水も飲まない断食で辛そうなムスリムの人々も、夜は家族や友人で招待しあって、一緒に断食明けの食事を楽しむ「イフタール」でうきうきと過ごしています。
私も、10年来の友人のお家に招待をいただいて、仕事のあとに彼女が住む街へ向かいました。エルサレムから1時間半、100kmを超える長距離バスの旅です。
友人はイスラエル北部育ちのパレスチナ人女性。イスラエルの大学院に所属しながらパレスチナ自治区に入って女性の権利について研究し、卒業した今ではアラビア語・ヘブライ語の通訳として働いています。
彼女のように「イスラエルに住んでいるパレスチナ人」は、イスラエルの中では「イスラエリ・アラブ」と呼ばれ、イスラエル総人口の20%以上を占めています。彼らの街はイスラエル内部に点在し、そこではアラビア語とヘブライ語の看板が入り交じっています。彼女の場合は家族との会話もヘブライ語とアラビア語で交わし、教育も両方の言語で受けてきたそうです。
さて、イフタールの楽しみといえば、豪華なご飯と甘いお菓子、楽しいおしゃべりです。私もマクルーベ(中東の炊き込みごはん)とカターイフ(リンク)をいただいて、9年越しでやっと会えた彼女の家族とたくさんお話ししました。
そして、お庭にイスを出してきて涼みながらお茶を飲む、真夜中のひととき。仕事のことや、家族のこと、昔の思い出...。ひとしきり楽しく喋った後に、彼女がふと真顔になって、こう言いました。
「マイ。私はリベラルな家庭で育ったけれど、最近この国はおかしいと思うの。私、イスラエルは、あと5、6年したら独裁主義の国になると思ってる。民主主義の反対よ。どんどん右に傾いていっているもの...。」
『ディクタートリー(独裁主義)』。辞書で引いたことしかない、この穏やかでない単語を、近しい友人の口から聞くとは思いませんでした。
確かに近年のイスラエルは、史上もっとも右傾化しているとメディアでもいわれています。また、外国から資金を受け取るNGOに財源の公表を求める法律が審議される等、イスラエル国内の人権派NGOにとっても、緊張を強いられる事態が続いているのでした。
彼女は続けました。
「私はイスラエルで勉強して働いてきたから、ユダヤ人の友達もたくさんいるの。彼らは私たちアラブの街に遊びにきてくれたことだってあるのよ。彼らの誰もが、現政権は嫌いだって言うのに、おかしいわ。」
じゃあ、一体誰が、この政権を支持しているんだろう?
どうして右傾化を止めない、止められないんだろう?
「日本は最近ね...」と私からも話しながら、何だかイスラエルのこの状況が、他人事ではないような気がしました。
ここに暮し続ける友人の不安な気持ちに応えられるわけではないけれど、私なりに、もう少しこの国のことを知りたい。そう、思っています。
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