パレスチナを支援するイスラエルのNGO:Rabbis for Human Rights Office, Jerusalem
お待たせいたしました、パレスチナで活動をするイスラエルNGO紹介第6弾です。
(同団体ホームページより)
Rabbis for Human Rights(RHR)は、ユダヤ教の価値観に基づき、人々の人権の拡大を目的とした団体です。スタッフはイスラエル人の正統派、宗教派、世俗派、パレスチナ人等多様な構成ですが、部長の多くはラビで構成されています。
同団体は1988年に設立されました。第一次インティファーダの際、主席ラビ庁に呼びかけて結集し、イスラエルと占領地パレスチナにおける人権に特化して活動する唯一のラビ組織となりました。ユダヤ教徒として他者に対するあらゆる不正義に対して抗議活動を行う義務を担っている、という考えのもと活動しています。
現在5部署で25件のプログラムを運営しています。
(同団体ホームページより)
・法務
弁護士を率い、西岸に関わる訴訟、特に南ヘブロン丘に重点をおいた活動を行っています。特に、パレスチナ人が抱える問題である、農地へのアクセスがないこと、土地の接収の予防と避難、イスラエルによる土地計画や家屋取り壊しなどの政策決定、また国際法に関わる問題について、コンサルティングと代理人による司法手続きを行っています。最高裁への訴えや民生議会への訴えを行ったり、司法、軍、警察の動向を追ったりしています。
・占領地における人権活動
西岸地区と東エルサレムに居住するパレスチナ人とベドウィンの人権擁護活動を行っています。特に尽力しているのは、農家が耕作時期にいつでも自分の土地へアクセスできるようにすること、Maaleh Adumim近くのジャハリーン・ベドウィンの権利向上、東エルサレム、特にSilwanとSheikh Jarrahでの家屋破壊や立ち退きの問題です。
具体的な活動としては、土地の収用危機にある、またはユダヤ人過激派の暴力の犠牲になっているパレスチナ人農家に対して、毎年3500本のオリーブの樹を送っています。収穫の際にも、脆弱な立場にあるパレスチナ人農家と連帯して、何百人ものイスラエル人と外国人ボランティアを約30の村に連れて支援をしています。
(Shilwan グーグルマップより) |
(Sheikh Jarrah グーグルマップより) |
・教育
ユダヤ教的な人権擁護の声を広めるために、教育者や学生に対してラビが教育を行っています。
実際のプロジェクトとして、高校卒業後、兵役までの準備期間として多くの場合兵役を延期して履修するプログラムであるメヒナーを運営するアカデミーに現場を知るための5つのツアープログラム(テルアビブ南部、不認可のベドウィン村、南ヘブロン丘、分離壁、イスラエルの縮図としてのエルサレム)を提供しています。それぞれのアカデミーが2〜3ツアーを履修します。毎年800名近くの参加があり、イスラエルに滞在している外国人ユダヤ教学徒に対しても、同様の内容のツアーや教育プログラムを実施しています。
また、ベドウィンの子どもたちに向けた放課後プログラムを実施しています。
RHRが2014年に吸収したICCIは、1991年に設立されたイスラエルで最も権威ある宗教観組織です。同団体は世界最高の宗教間組織Religion for Peaceのメンバーでもあります。
ICCIは、寛容と共生を推進するネットワークのTag Meir Coalition(2011年、ユダヤ人過激派が政府の入植地の撤退等に抗議して、パレスチナ村で行う"Tag Mekhir", Price Tagという一連の暴力と破壊活動に対抗する組織として発足)の活発なメンバーとして、イスラエルと海外での公開講演を開催したり、宗教的指導者との連携に働きかけたりしています。
・イスラエルにおける社会経済的平等
Hadera Rights Centerを運営し、国家保険制度の保証する失業手当て受給方法や、低賃金労働者の支援を行い、年間1000人弱のイスラエル人(ユダヤ人、アラブ人、ベドウィン、移民労働者などのあらゆる住民)の利用があります。また、クネセットでの社会的弱者のためのアドボカシー活動や、アラブ・ユダヤのシングルマザーのエンパワーメントを行っています。
パレスチナ市民社会、パレスチナ自治政府、イスラエルNGOなど多様な機関・団体との連携があります。南ヘブロン丘では、地元農家、地域議会はもちろん、Ta'ayush、Breaking the Silenceとも協同しています。また、海外機関とも連携を行い、活動の幅を広げています。
活動の成果は多数あります。例えば、パレスチナ人の中で、イスラエル人はみんな家屋を破壊しにくるという先入観を持っていますが、活動を通じて徐々にその先入観を緩和できています。
政府のパレスチナ人の人権に対する態度や、入植者による暴力、イスラエル人の抗議や怒り等で精神的に参ってしまい、諦めたくなる気持ちが募りつつも、活動を続けていくことがひとつの困難となっています。それでも、ユダヤの伝統に則って行動を続けています。
年間150-160万USD。支援はアメリカのユダヤ人コミュニティからが多いです。他にも、スウェーデン協会やスペイン政府、British Council等、様々な団体から支援を受けています。
(例)
・オリーブの木の植樹を増やす
・オリーブを収穫するボランティアの交通費
・イスラエル人とベドウィンの子どもたちとのサマーキャンプ
・イスラエル人の若者へのC地区フィールド・ツアー提供
C地区での全く新しいプロジェクトは困難ですが、現在進行中のプロジェクトを拡大することは有意義だと考えています。
人権団体として、政治的ポジションを取ることは禁止されています。占領は終わるべきだと主張はしますが、それは政治家次第であるとも述べています。また、具体的な結果、事実を設定していくことに重きを置いており、あらゆる人間が平等に扱われることを目指しています。
2015年から宗教観対話(ICCI)を加えました。数年間の現場経験をまとめる意味で、パレスチナ人のニーズを見直す必要性を感じています。今後は、水の管理に関する問題なども視野に入れ活動したいと考えています。
Rabbis for Human Rights Office, Jerusalem ウェブサイト
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※本記事は現地事務所の元インターン・小寺さんを中心とした聞き取り調査に基づいています。
取材
・小寺愛(元パレスチナ現地インターン)
・金子由佳(パレスチナ現地代表)
編集
・山本千博(パレスチナ事業専属ボランティア)
・山村順子(パレスチナ事業担当)
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