「ガザのパートナー団体女性へのインタビュー『今や誰もガザを気にしてはいない』」
こんにちは。エルサレム事務所の山村です。すっかり太陽の日差しが強くなって汗ばむ気候のパレスチナです。今回は、少し遅くなってしまいましたが先月ガザでインタビューしたものをお届けしたいと思います。ガザのパートナー団体の事務所に行くと、たくさんのお母さんたちが子どもを抱えて事務所の中にある診療所を訪れています。お母さんたちの顔を見ると、悲壮感・絶望感が感じられ、こちらも胸が締め付けられ、掛ける言葉もない状況です。政治的な理由で貧困がどんどん深刻さを増す中、憤りを抱えながら懸命に生きるパートナー団体のとあるガザの女性の声を紹介します。日本の人たちへのメッセージもいただきました。
A:ほとんどの人が働けていない。大卒の人でさえも。何かにお金を使うにしても、最低限のことしかできないの。食材、交通費、いくらかの服など。自分は職があるけれど、職がない人はどうなるっていうの。ガザは決定的に市場に問題を抱えている。そもそも、所得がないので市場が活性化されない。公務員に関しても、3、4月は本来の給料の30%しかもらってないの。 今までは公務員たちが市場を活性化させていたのに、こういった人たちも購買活動ができなくなっている。
(ラマダンを祝うガザ。中部ヌセイラットにて。(アマル・アブ・モアイレック提供))
また、食べ物を売っても売れないからすぐに腐ってしまう。翌日には半額になり、翌々日には売れなくなってしまう。だからといって家庭菜園をしようにも土地がなかなかない。うさぎも育てている家が多かったけれど、うさぎの飼料がイスラエル側から入ってこなくなり、うさぎを育てることも難しい。ニワトリも育てていたけど、このニワトリを育てるのに必要な飼料も入ってこなくなった。ガザは経済的、農業的に立ちゆかなくなっている。そして今、トマトが非常に安くなっているの。7-8キロが5NIS(約150円)で買えてしまう。でも人々はトマトだけでは食べていけない。農民だってそんな安く売っていては食べていけないでしょう。
―職がないというのが本当にガザでは深刻ですよね・・・
そもそも今ガザではUNRWA,NGO、公務員になるくらいしか職を得る方法がないの。(おまけにUNRWAの現地職員は、短期の契約が多く、資金不足になると契約更新もできないため、毎週デモが行われている。)貿易関係者も困っている。誰も服を買わない。全てのものが安くなっている。ただ、銀行だけが利益を出している。なぜなら、働いている人の85%はローンを組んでいるから。銀行はただローンを組んで、お金を集めているだけ。人々に投資をしようとしないのよ。
アブ・マーゼン(アッバス議長)は先週、公務員に給料を出すと言ったのに、それが全く実行に移されていない。財務大臣がそうしたくなかったからだと、皆思っている。どうして人々がいつも罰せられないといけないのか。ガザの人々は、今やガザの実質政府(ハマース政権)を信頼できず、嫌っている状態。政府に反対したくても、デモに参加すれば殺されてしまう。ガザ北部のジャバリアで電気不足に関するデモがあった際、ハマースは若者たちを攻撃した。若者たちは足を負傷し、皆病院へ行った。私たちの政府はあまりにも脆弱で、頼ることができない。リーダーを選ぼうにも、抵抗のシンボルである人が刑務所から出てきて、すぐにリーダーになったりする。彼らは国の治め方を知らないし、十分な教育を受けていなかったりするのに、脆弱なガザの人々はそういった人を選ぶしかない。それで、自分たちで間違ったリーダーを選んで苦しんでいるから自業自得だ、などと言われてしまう。
※現在は、完全に公務員の給料が支払われていません。
A:多くの人は極度にストレスのある環境下で、デモに自発的に参加しているの。人々にとってデモに参加することは自分を表現する唯一の手段で、そしてフェンスに近づくことで自分たちにも自由があることを証明したいから(ガザの人々は、イスラエルによって、境界のフェンス300メートル以内に立ち入ることを禁止されている)。
(デモでの救急対応の様子。(JVCパートナー団体、PMRS提供))
もちろん、デモを計画し、準備し、人々を集めたり人々を先導したりしている組織もあるけれど、多くの人は自分の意志でデモに参加しているわ。一方で、危険が伴うために、デモに行くことを恐れている人もいる。特に若者は必要以上に興奮してしまい、石を投げたり、叫んだり、国旗をフェンスにかぶせようとしたりすることがある。ただし、国旗をフェンスにかぶせただけで、代償に命を失う可能性だってあるの。とにかく、人々はこの状況にうんざりして、ストレスの極限にいて、何か行動を起こしたい。発散するために、何でもいいから、何かしたいの。
A:ガザの人々は、他の世界の人々と変わらない。ただ、平和のうちに、人権を保障されて生きたいだけ。働いて、お金を稼いで、子どもたちのために食べ物を買いたいだけ。子どもたちが健やかに育つようにね。それがガザの人々の求めていることのすべて。私たちは11年に渡って、封鎖された環境の中で生きてきた。状況は厳しさを増し、ますます複雑化している。人々は飲料水を買うお金もなく、子どものためにご飯を買うのもやっとの状況で、少額の収入を得ることすら難しい。ガザはほとんど崩壊しており、悪循環をたどる一方。人々にお金がないため、物が買えない。商店は客が来ないために潰れてしまう。だからガザの店は、開店から1〜2年後に潰れることがほとんどよ。この悪循環で、どんどん状況は悪化し、人々は貧しくなっていく。大学を卒業した若者は、7年以上経っても仕事がない。例えば、昨年教育省から教員の仕事が約200人の規模で募集されたのだけど、24,000人以上がこの仕事に申請した。想像できる? たった200人の仕事によ? 現在に至るまで、結局誰も問題を解決できない。だから平和のうちに自分の土地に住む権利を得るために、デモを決行したの。そして、トランプがエルサレムをイスラエルの首都と認めたことに対して抗議の意を示すため、更に難民の帰還権を主張するためにね。
(デモでの救急対応の様子。(JVCパートナー団体、PMRS提供))
彼らは自分の土地に戻る権利を失いつつある。私たちは、何としてもこれを止めなければならないし、立ち向かわなければならない。私たちは、境界沿いのフェンスでデモを行うという平和的な方法で、これらのことを要求しているだけよ。ただ、平和的な方法でデモをしているにも関わらず、多くの人たちがこれまで撃たれて殺されている。これは大罪よ、人々はうんざりしきって、これ以上我慢なんてできない。だからこそ、皆がこの大規模なデモに参加しているの。きっとこれが最後の希望になると思う。私たちもできることはなんでも試してきたし、たくさんの大国や国連がこの問題を解決しようとしたけど、残念ながら、ガザには大国の支援がなかった。今や誰もガザを気にしてはいない。だから今日まで、私たちは苦しみ続けている。この声が世界中の良心ある人々に、この子のように未来を奪われた子どもたちを気にかけてくれるすべての人々に届くことを祈っているわ。この子たちが、長年の苦しみのあとに、自分たちの土地で、自分たちで自分の指導者を決められ、自分のことを自分で決められ、自由のうちに生きられるようにね。
A:私たちの政府(ハマース)ですら、封鎖の影響下にあって、トランプやイスラエルの言うことを聞かなければ懲罰の対象となる。もはや人々は誰も彼らの言うことをきかないの。ハマースは、ガザの人々の声を代表すべきはずなのに、残念ながら外部からの圧力に屈してアメリカなど大国の言いなりになっている。彼らは、私たちが(抵抗のために戦って)死んだって、権利を与えてはくれない。私たちは、もう恐れない。尊厳のために死んだってかまわない。尊厳を持てずに生きるのならば、死んでいるも同然よ。
(デモでの救急対応の様子。(JVCパートナー団体、PMRS提供))
私が草の根レベルでNGOや市民社会の活動を見ている限り、正直に言って、ガザの人々にとって最も大きな助けとなっているのは日本人よ。彼らは心の底から私たちを助けたいと願ってくれているし、ガザの人々の状況を気にかけてくれている。以前の戦争中の時は、ガザのために何度もデモをしてくれたことを知っているわ。心の底から感謝している。願わくば、私たちの平和的なデモを支援し、私たちの声を届けるために、もう一度だけ私たちのためにデモをしてくれたら、きっとガザの状況を改善する助けになると思う。日本は遠いけれど、私たちのことを考えてくれている。日本の人々が、封鎖下のガザの人々の状況や健康を考えてくれて、私たちの子どもたちの未来を気にしてくれていること、心から感謝しているわ。
<インタビュー:山村>
<文字起こし&翻訳:インターン 板倉>
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